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子猫転生  作者: ニャンコ先生
第一部 上巻
3/57

神様編 その三

 ふぅ、それにしてもよく喋る女の子じゃったわい。


 じゃが、今の娘もまだマシな方なんじゃ。

 何せここのところ、ひどいのが増えておるんじゃよ。


 よし、ついでじゃ、愚痴だと思って聞いてくれんか。

 最近のダメだった子たちの話をしたいのじゃ。






「えっ、チート能力スか!?

 じゃっ、無限再生と不老不死と時間停止と能力無効化と絶対催眠と宇宙創造を。

 シャス!」



 シャスじゃないんじゃよ。

 どんだけ欲張りなんじゃよ。

 何が宇宙創造じゃよ。

 どれ一つとってもポイント足りんよ。

 明らかにオーバースペックじゃよ。

 いったい何と戦うつもりなんじゃよ。



「アーッ! 時空転移と睡眠不要も追加っ! ついでに神器もふたつみっつシャス!

 シャ! これで無敵ッス!」



 だからポイント足りねえっつってんじゃろ!!


 ちなみにこの子は時間内にポイントを割り振ることができなかったんじゃよ。

 いくら甘いワシでも時間という限度はどうしようもないんじゃ。

 おぬしにばかりかまっているわけにはいかんのじゃよ。許せ。





 次じゃ。





「えー。橋の建設とか地味すぎじゃないですかぁ。

 なんでそんなことのために俺が転生しなくちゃいけないんですかぁ」



 確かに地味かもしれないのう。

 だけどな、橋の建設なめてもらっては困るんじゃよ。

 重要な橋なんじゃよ。


 建設で仕事が増える。

 食料流通の改善。

 産業の活性化。

 戦争なくなる。

 宝くじ当たる。

 猫にモテモテになる。


 すごい効果じゃないかのう。特に最後。


 縁の下の力持ち的な仕事の重要性を説明したのじゃが、結局わかってもらえんかった。

 どうやらこの子は魔王討伐的なことをやりたかったらしいのじゃ。

 じゃがのう、いくら強情を張られてもおぬしにはポイントが足りないんじゃ。



「俺が少しばかり弱いとしても、可能性はゼロじゃないですよ。

 知恵と勇気と根性でカバーしますよ」



 そう言って話をきいてくれんかったがのう。

 少し弱いんじゃないんじゃよ。全然弱いんじゃよ。

 さすがに三十ポイントでは、魔王討伐には送れないのう。






 え? 厳しい?

 女の子にはやさしいくせに男には容赦が無いって?

 な、な、な、何を行っておるんじゃ? ワシはいつでも公平じゃよ!?


 つ、次じゃ。





「ぼ、ぼくはスキル強奪能力だけでいいんだな。

 それも今すぐなんだな。そしたら他には何にもいらないんだな」



 ああ、分かっておる。仮にそれを与えたら、まずワシの能力を奪うんじゃろう?

 ためしに能力をあたえたフリをしてみたら、本当にワシに向けて使いおった。

 残念じゃが、さすがにコレは不合格じゃ。






 ん? やっぱり男に厳しいとな。たまたまじゃよ、たまたま。

 あれ、次も男の子か……。あ、あー、もうこのへんでもういいじゃろう。


 まとめると、だいたいポイントがらみで満足してくれない子が多いのう。






 そうそう、ポイントが足りないと言えば、たまに勘の鋭い子が来るときがある。

 少し脱線するが、ついでに聞いてやってくれんかのう。






「どうにかして転生ポイント増やせませんか。

 そうですね、たとえば前借り的なことはできませんか」


「すまないのう。いつもニコニコ現金払いなんじゃよ」


「現金て……、まあいいや。

 では神様のスペシャルパワーでサービスしてくれたりとかは?」


「できない相談じゃのう」


「いや、どうにかしてポイントを増やしてくれないと困ります。

 だって僕の見立てですと、目標を達成するのにこのポイントでは足らないんですよ」


「それは安心してよいぞ。

 ワシの経験から言えば、おぬしのポイントなら十分に成し遂げられるはずじゃ。

 転生先の神様の見立てでもそうなっておる」


「ふーん。

 でもこのカタログ見ると、明らかに誰も払えなさそうな能力あるじゃないですか。

 本当にこんなポイントを払える人が来るんですか?

 裏があるんじゃないですか?」


「ふむ、裏とな?」


「そうですね、例えばちょこっとずつポイントをもらうとか。

 みんな、オラにパワーを分けてくれ! みたいな」


「そういうのはやってないんじゃ」


「あ、他の転生先と交換してもらうって言うのはどうでしょう。

 先ほどの話しぶりだと、まだ決まっていないところがあるみたいですね。

 条件の厳しいところに行くと、ポイントにボーナスが出たりしませんか」


「いや、どこの転生先でも同じじゃ。

 じゃが、おぬしの言うとおり、転生先を変えることはある程度なら可能じゃ」


「わかりました。ポイントは増えないんですね。

 では百人ハーレムとラッキースケベと女難回避。

 それから美男子、高身長、高学歴、スポーツ万能。

 本当は家柄も指定したかったんだけど、この線で妥協します。

 これでお願いします!」


「その組み合わせだと使命が達成できんじゃろう!」


「ですから、使命の無いただの村人Aでお願いします」


「じゃから、むこうの神様たちからそんな要望出てないんじゃってば!」


「神様さっき『好きな能力を選べる』って言ったじゃないスか!」


「ものには限度というものがあるんじゃ!」



 結局こいつはかなりの好条件で転生していったんじゃよ。

 百人ハーレムを五人ハーレムに変更し、さらにいくつか条件を削ってもらったがのう。

 その上使命もかなり楽なところを選びよったわい……。


 失敗じゃったのう……。

 ちょっと反省しよう。


 ん? もうマネしても無駄じゃからな!




 ……とは言え、これでワシが女の子にばかりやさしいわけではないというのが分かってもらえたと思う。

 ん? なんじゃその目は! まだ疑っておるのか。




 まあとにかく話をまとめると、最近は本当にこんなのばっかりなんじゃよ。

 神様を続けるのも楽ではないのじゃ。分かってくれたかのう。




 *




 だんだんどうでもいい話になってきた。


 だがそのおかげで、こうして夢から覚めるように意識を取り戻すことができたのだ。

 感謝しよう。



 さてこうして我に返ってみると、何か大切なことを忘れている気がしてくる。

 それは何だろう。


 そうだ。

 重要なこと、それは自分自身の話だ。


 神様を名乗るこのジジイの話を信じるなら、おそらく自分も彼ら『候補者』たちの一人として……。



 それに気が付き、すぐさま流れ行く記憶の渦の中に意識を集中させる。

 するとそれらしきものが浮かび上がってきた。


 しかしおぼろげに浮かび上がってくるそれは、だんだんと薄れつつあるようだった。


 もしも見れるのなら、知りたい。

 そして、できれば猫に生まれ変わりたい。




 *




「………………これからおぬしに見合った転生ポイントを授ける。

 そのポイントと引き換えに、好きな能力を選んでよいぞ」


「あのー、話をぶった切ってすいませんが、猫に転生できたりしませんか?

 わたし、猫が大好きなんです」


「ワシも猫好きだからその気持ちはわかるが、それは難しいのう。

 ポイントの割り振りが厳しくなる上、使命を達成するのが困難になる。

 さらに目的意識を持たせるために、何らかの手段を講じねばらん。

 そうしなければただの猫として過ごしてしまう可能性が高いからのう。

 まあそれがおぬしの望みかもしれんが、それでは困るのじゃ。

 さらに言うと、猫として生きるのも決して楽なことではないのじゃぞ。

 詳しくはカタログを読んでもらえるかのう」


「そうですか。わかりました。あきらめます」




 *




 おい待て、そこでひくんじゃない。あきらめるな。



 カタログには『種族選択』のページが開かれ、それを二人で見ながら何かを話している様子が見える。


 そこにはドラゴンや聖獣に転生した者たちの逸話が記されていた。

 だが、猫になったものの記録は一切ない。


 しかしそれがどうしたというのだ。

 だったらそこに記される最初の一人になればよいだけの話だ。



 その呼びかけが通じたのだろうか。

 再び猫が針の穴を通るような難しい模索が始まった。




 *




「では転生先を別の世界に変えてもらうようなことはお願いできますか?」


「うむ、可能じゃ。

 できればおぬしにはこの世界に行ってもらいたいのじゃが、まあ他のところでもよかろう。

 少しくらいなら条件のゆるいところにすることも可能じゃ」


「なるほど、やっぱり変更は可能ですか。

 ではもしかしてこういうこともできますか?」



 その提案は、今まで誰もワシにしたことがないものじゃった。

 いや、ひょっとしたら誰かは思いついていたかもしれん。

 時間がないというワシの言葉に急かされて、言えなかっただけなのかもしれん。



「……じゃが、いいのか?

 これはおぬしが思っているよりもつらく厳しい道かもしれんぞ。

 それに、そもそも次はいつになるか分からんのじゃ」


「大丈夫です。こういうことには慣れていますから。

 それにわたしの予想では、案外すぐにチャンスがくるのではないかと思います」


「ふむ。確かにそうかもしれんのう」



 唯一残された正解ともいえる抜け道。この子はそこにたどり着いた。

 そればかりでなく、タイミングも良かった。ちょうど良い頃合だったのじゃ。


 きっとこの子なら託しても大丈夫だろう。

 

 ワシは将来を期待してこの子を見つめるのじゃった。




次話からようやく子猫編スタートです


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