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子猫転生  作者: ニャンコ先生
第一部 上巻
13/57

ご褒美編 そのニャー

 眼が覚めると、僕らは屋敷のベッドに寝かされていた。

 寝ている間に運ばれたらしい。


 屋敷の中にパパ上殿の気配は感じられない。

 魔力探知で詰め所のあたりを探ってみる。

 みんなで片付けやら何やらを頑張っているようだ。

 後は大人たちに任せて大丈夫だろう。




 腹時計の感覚はお昼ぐらいだろうか。お腹が空いた。


 サイドテーブルの上に、僕用の食事が用意されている。

 作った人の趣味だろうか、お魚の形を模して綺麗に盛り付けられていた。

 とてもよくできていたので崩すのはもったいないような気もしたが、食べないのは逆に失礼かと思いいただくことにした。


 うむ、見た目だけでなく味もなかなかのものである。




 食事を終え、ベッドへと戻る。

 ニャルミは幸せそうな顔でぐっすりと眠り続けている。


 その寝顔を見ながら昨日のことを思い出す。

 ニャルミはこんな小さな体であんな大きなドラゴンをしとめてしまったのだ。


 これで確定したと言っていいだろう。


 ニャルミも僕と同じく、能力を授けられた『転生者』なのだ。



 それはさておきニャルミは口元が緩みすぎだ。

 いったいどんな夢をみているのやら。

 そんなに楽しい夢路なら僕も一緒に辿りたいものだ。






 ところで、部屋には今ニャルミの他に誰もいない。

 これは良い機会だ。

 ニャルミの魔力を詳しく測ってみたかったのだ。


 なんとなく僕の魔力はニャルミの倍くらいある気がするのだ。

 いろいろおかしい気がする。これは是非調べねばなるまい。



 僕はニャルミの額にペタンと手を置いた。

 こうやって直接触れることで、測定精度が増すはずだ。

 それにこの状態で時間をかけることで、魔力の器の大きさも分かるらしい。


 おっと、もしも誰かに見られたらこのポーズは不自然だな。

 いつ何時誰が部屋を訪れるのか知れたものではないからね。


 できるだけ自然な体勢で目的を達成するには……。

 ええい面倒だ、ニャルミに覆いかぶさってやれ。

 本当はこんなことしたくなかったのだが、しょうがないニャー。


「だ、れかきた。らたんちでわ、かるは、ずだにゃー」


 ニャルミがごにょごにょと寝言を漏らすがよく聞き取れなかった。

 起こしてしまったかと心配になったが、大丈夫だった。ふう、気をつけねば。



 さて、魔力探知だったな。どれどれ……。



 僕はニャルミの体温でいい感じに温められ、だんだん眠くなってくる。

 どうにかそれを堪えて計測を続ける。



 ふむふむ、やっぱりニャルミの最大魔力は僕の半分というところか。

 そして現在その最大の六割ほどまで順調に回復してきている。


 それにしても、僕の魔力はあれだけ凄いニャルミのさらに倍あるのか。

 なんとなくそうじゃないかなと思っていたけど、いったい何がどうなっているのやら。


 とはいえ、まだ一人であんなドラゴンなんか倒せる気がしないけどね。

 何せ魔法自体が使えないからどうしようもない。

 力がありすぎて持て余しちゃうな。



 まあいいや、それじゃあこれでようやく計測完了だ!

 不本意であったこの体勢ともようやくおさらばだ!



 おっと、ここで下手に動いたらニャルミを起こしちゃうかもしれない。

 楽しそうな夢を見ているのにそれは可哀想だな。

 うーん、しょうがない。あまり乗り気ではないが、僕もこのまま寝ちゃおうか。

 それにしてもニャルミはすべすべして温かいな。


「そも、そもま、りょくけいそ、くのひつよ。うなかっ、たんじゃな、いのかにゃー」


 再びニャルミが寝言らしきものを口にした。

 何を言ってるのかさっぱりわからない。




 そんな折、部屋の扉が静かに開いてメイドさんが入ってきた。

 ほら見ろ、僕の予想が当たったじゃないか。備えあれば憂いなしだ。


「しって、たく、せになに。をいう、かにゃー」


 またまたニャルミが寝言を言う。

 いったいぜんたい本当にどんな夢をみているのだろう。



 メイドさんはサイドテーブルの上の飲み水やら何やらを取り替えてくれた。

 そして一仕事終えると、僕がニャルミに覆いかぶさっているのを見てクスッと笑って出て行った。



 うんうんやっぱり世間から見ても、この光景はほほえましいものとして映るんだね。


「ねぞ、うのわ、るさをわ、らわれて。るだけだにゃー」


 なんだとニャルミ! さっきから黙って聞いていれば好き勝手なことを言いおって!

 昨日あんな熱烈なプロポーズをしてきたくせに!


「それとこ、れとは、はなしがべ、つだにゃー」


 あ、はい。そうですね。

 ちょっと調子にのってました。すいませんでしたぁ。






 さ、さてこうなってくると、どうにかしてニャルミと意思の疎通を図りたい。


 いろいろ聞きたいことがあるのだ。


 魔法の使い方やその属性の詳細、小鬼級やら大鬼級やらの魔物の話、それからこの世界のさまざまなこと。

 それらは『使命』を果たすのに役に立つはずだ。


 それに今後のニャルミとのおしゃべりも楽しいものになるだろうからね。




 ただそれには問題が一つある。

 僕が言葉を解する理由をどうやってごまかすのかということだ。


 もちろん本当のことを言うわけにはいかない。

 適当に話をでっち上げるしかないようだ。



 一番自然なのは『神様の使いでニャルミのもとに送られてきた』とかだろう。

 だがその線でいくとしても、神様の名前とか教義とかいろいろ下調べが必要だな。

 単純な『じゃあ何故送られてきたの?』という質問にさえ、答えるのは難しい。



 うーん、正直な話その辺りの細かいことを考えるの面倒くさいニャー。



 はあ、ニャルミも前世記憶を受け継いでいれば良かったのにな。

 もしそうだったなら、こうして悩む必要はなくなるのだ。


 あ、しかもその上魔力の高いちょっと変わった猫だと思われていることも解決するじゃないか。

 完璧だ! パーフェクトプランだ! 懸念事項が一挙に全部解決しちゃったぞ!


 よっしゃ神様、作戦実行はまかせた。よろしく頼むよ!

 あれ、返事がないな。神様もおねむなのかな。

 しょうがないニャー、僕が変わりにやっておくよ。




 などと妄想をたくましくしていたら、段々とさっき食べたご飯がこなれてきたらしい。

 適度な疲労と程よい満腹感と心地よい温かさという三種の神器を使って睡魔が僕を襲ってきた。


 さすがにその攻撃には耐えられない。僕はいつの間にか眠りについてしまっていた。




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