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リディア―世界の中で―  作者: 知佳
第八章:風
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****


「――シエラ!?」

「ラミーナ!!」

 ラミーナは驚きのあまり勢い余って立ち上がり、座っていた椅子を倒してしまう。しかしそんな事にも構わず、酒場の入り口に立っているシエラに駆け出していた。シエラもラミーナの元に駆け寄り、二人は場所も顧みず抱き合っていた。

「良かった! 良かったわぁシエラ!」

「うん、うん……!」

 熱い抱擁を終えると、シエラは視線を奥に移す。そこには驚き半分、喜び半分と言った表情のウエーバー、バイソン、ユファ、サルバナがいた。

「シエラ、クラウドさん! ……無事で、良かったです」

「ははっ、これでやっと集合したな!」

「……二人とも、大事無いか?」

「ここはやっぱり部屋までエスコートするのが紳士たる俺の役目かな。……シエラ、ほら、おいでよ」

「いやいいよ」

「つーか、なんで会って早々てめぇはそうなんだ……」

 クラウドの重たい溜め息は酒場の陽気な音楽に掻き消される。ふと場の空気を感じてみれば、皆唖然とこちらを見ていた。そのうち酔っ払いの一人が「なんだなんだ久々の再会かぁ!? そりゃめでてーな!」と言ったのを皮切りに、酒場はどんちゃん騒ぎになっていた。

「……とにかく、ほんと無事で良かったわよ。それにしても、よくここが分かったわね」

「うん、別の酒場で聞いてみたの。そしたら、ここを教えてくれて」

 シエラは後ろにいるクラウドと顔を見合わせる。シエラとクラウドは昨日の午後ゼインの関所を越え、夜にこの街に辿り着いた。そのまま宿屋を取り、昨日は疲労からか二人ともすぐに眠ってしまった。その分今日は街を回り、宿屋や酒場を訪ねて回っていたのだ。

「なるほどね。あんた達にしては気転が利いてるじゃない」

「こいつはともかく、俺もか?」

 クラウドがぼやくと、ラミーナがけらけらと笑い、二人をテーブルに連れて行く。そこでは久々に会う仲間たちが、優しい表情を浮かべて迎えてくれた。シエラとクラウドは席につくと、安堵からか全身の力を抜ききる。

「お疲れ様でした。森の中はどうでしたか?」

 まるでどこぞの記者のような質問に、思わずシエラは噴出した。

「いやぁ、とにかく凄かったよ。動物たちに追いかけられてさー」

 シエラは笑いながら水に口をつける。ぷはぁ、と一気に飲み干して口元を手の甲で拭ってから、再び口を開く。

「それにさ、魔力があるだけで敵だって認識されちゃうみたいで。ね、クラウド」

「あぁ、そうだな。あれは、中々体験できるもんじゃないな……」

 二人はレイルの事は何も言わずに、森の中で起きた出来事を話した。崖から落ちた後のこと、動物たちのこと、それからあの神殿のこと。ラミーナ達からは、崖を歩ききった後に巨大な門を発見した話しを聞いた。これだけでは繋がらないが、それでも何か“禁断の森”にはまだ秘密がある。そう確信するには十分な材料が揃ったのだ。

「……それにしても、私のその神殿については興味がある」

「多分ユファでも驚くと思うよ」

「そんなにすげぇなら俺も見てみてぇな」

「バイソンは見たって価値なんて分かんないわよ」

「ははっ、まぁその通りだけどな!」

 暫くいつも通り賑やかに喋っていたが、夜が更けるにつれて、段々酒場の賑やかさも減っていく。すると、ラミーナが声のトーンを落としながら地図を広げた。

「さて、ここから本題に入りましょうか」

 今までなごやかだった空気が、いきなりぴりっとしたものに変わる。シエラ達は背筋をただし、テーブルに広げられているゼインの地図を凝視した。

「ここが現在地よ。それで、ここから北に三百キロほど行けば、首都のガローズに到着するわ」

 地図を見れば、首都のすぐ上は砂漠となっている。つまり、首都からルダロッタに向かうということだ。

「……ガローズといえば、カジノや闘技場で有名な都市でもあるな」

「え、そうなの?」

「あぁ。ガローズは元々巨大なオアシスだった。娯楽の限られている場所では、人々がより癒しを求める。……だから、賭け事が盛んでもある」

「おお、出ましたユファの豆知識!」

 シエラが感心していると、ユファは恥ずかしそうにマフラーで口元を隠した。すると、ラミーナが咳払いをして視線を集める。

「それで、提案なんだけど……ガローズには馬車とラクダで移動するってのはどう?」

 その瞬間、一瞬だが全員が口を閉ざした。一応この旅の基本として、適合者同士でいるときは極力徒歩で移動する、というきまりがある。共に歩き苦労することで絆を作りやすくする、という国からの指示だ。

「……まぁ確かに、時間が無いのも事実だからね」

 重い雰囲気を崩すように呟いたのはサルバナだ。彼は不敵な笑みを浮かべたまま「俺は賛成だよ」とラミーナにウィンクする。それはラミーナは顔をひきつらせて受け止めると、一同の顔を見回した。

「私も、いいと思うぞ」

「僕もです」

「俺も、別に構わない」

「ま、たまには楽したってバチ当たんねぇだろ」

「あ、確かにー。いいじゃん、ラクダ!」

 シエラ達が大きく頷くと、ラミーナも胸を撫で下ろした。それから明日の午後にでもここを発つなど、詳しい日程を決めてから、今日はお開きとなった。シエラとクラウドの分の宿泊料金を追加し、こうして久々にシエラはラミーナとユファと寝ることとなった。ふかふかのベッドの重みを、シエラはいつにも増して強く感じている。風呂に入りさっぱりした後にベッドに飛ぶ込むのは、どうにも気持ちよすぎて癖になりそうだ。

「……何だか久しぶりだな」

 隣に座っているユファも、シエラのことを見つめながら柔らかく笑う。何だかそれがむず痒くて、シエラは枕に顔を埋めた。

「ほら、あんた達早く寝なさいよ。明日からまた出発するんだから」

 すると、丁度風呂から上がってきたラミーナに窘められてしまい、シエラとユファは顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。やっぱりラミーナはお姉さんだ。シエラはふふ、と笑いを漏らしながら、ゆっくりと目を閉じる。ふかふかのベッドが、とても気持ちよかった。

 翌日、シエラ達は首都であるガローズに向けて馬車に乗っていた。今までの徒歩よりも格段に早く進むし、何より楽だ。シエラはアレンダからタッテューに向かったとき以来の馬車に、少々気分が高揚している。最大時速百五十キロ。実際は馬が魔法の速さに耐え切れなくなってしまうので、滅多に出るスピードではない。普段はおよそ四十キロから六十キロの間ほどだ。ただそれでも徒歩よりは断然早いし、何より空中を走るので景色も楽しめる。窓から顔を出していると、後ろから強い力で引っ張られた。

「ったく、大人しく座ってなさいよねー」

「し、死ぬ!! ラミーナ、首、首……!!」

 シエラは首根っこを掴んでいるラミーナの右手をとんとんと叩く。彼女は「あぁ」と気がつくと、ぱっと手を離した。シエラは入ってきた酸素に咽ながら、ゆっくりと屈めていた上体を起こす。

「に、してもいい眺めだよな」

 バイソンが眼下の流れていく風景を眺めながら、どこかのんびりとした口調で呟いた。森に湖に、それから前方にうっすらと見え始めた砂漠に、人々に、街並み。こんなにも素敵なものだったなんて気づかなかったのは、シエラも同じだ。馬車に揺られること約五時間。ようやく、ガローズの一つ前の町に到着した。

 ユファの言った通り、夕暮れだというのにやたらと空気が暑い。

 シエラ達を乗せていた馬はよほど疲れたのか、はたまた暑さにやられたのか、到着するやいなやへばってしまっていた。騎手の中年男性も「休憩挟んでも、この暑さは流石にきついかぁ」と苦笑いを浮かべている。 シエラ達も、特に何もしていないというのに汗がだらだらと出てきている。こまめに水分補給が必要だな、などとユファと話しながら、結局今日はこの町で休むことになった。

 明日はいよいよラクダで砂丘を越え、ガローズに入る。世界を救う為の、適合者の旅。試練を受ける為の、ルダロッタへの入国。もうすぐで旅は折り返し地点につくのだと思うと、少し感慨深い。

 ――旅がはじまって、もうすぐ二ヶ月になるんだ。

 あっという間過ぎて、まるで時間の感覚が無い。たった二ヶ月でシエラの世界は大きく変わり、またロディーラという世界も変わっている。大きなうねりの渦中だというのに、不思議と心は穏やかで。シエラはゆっくりと目を閉じた。


 そして翌日、今度は馬ではなくラクダに乗っているシエラ達。こぶとこぶの間に座り、一人一頭ずつ手綱を握り締めている。案内人の現地の人も一人おり、シエラ達は照りつける日差しに目を細めていた。

「あっつ……」

「日焼けしちゃうわね」

「褐色美人も悪くないと思うけどね」

「……サルバナ、少々口を閉じた方が身のためだぞ」

「お、あっちのあれってオアシスってやつか!?」

「みたいですね。それにしても、見るだけで癒されます……」

「……はぁ」

 最後はクラウドの重たい溜め息で締められる。シエラは苦笑いを漏らしながら、前方に目を凝らす。かれこれ二時間弱砂丘を進んでいるが、未だにガローズには到着していない。ラクダの歩みは馬に比べれば幾分かゆっくりで、しかも魔法の施してある馬車と比べれば相当遅い。ガイドの話ではあと一時間も進めば見えてくるという。

「……に、しても暑い」

「もうすぐ南中ですから」

「シエラ、暑いなら俺が水でも飲ませてあげようか?」

「うっわ今ので体感温度十度は上がった……」

「はは、つれないねぇ」

 あまりにも涼しく笑っているサルバナに、シエラは無性に腹が立った。こちらは物凄い暑いというのに、なんでサルバナはそんな涼しげなのか。その服に何か仕込んであるのか、と思わず言ってしまいたくなる。水分補給は割とまめにしてはいるが、配分を間違えるとあと一時間何も飲めなくなってしまう。どこかで休憩するべきかもしれないが、今は何より時間が惜しい。

 ――あと一時間、あと一時間だ!!

 シエラは自分に気合を入れなおすと、それからは一切口を開かずにガローズまで乗り切った。街は随分と賑わっており、道や建物の殆どが石で出来ており、どれも窓がやたらと小さい。ラクダとガイドに別れを告げ、シエラ達は町の中心部へと足を進めて行った。

 人々の格好は白のものが多く、大半が肌を隠している。暑くないのかと聞いてみたいが、恐らく日焼け対策なのだろう。中心部に行くにつれて賑やかさは増していき、踊り子たちが煌びやかな衣装で踊っている。

 シエラがちらりとサルバナの表情を窺うと、彼はいつも通りの微笑だった。

 少々意外に思いながら、シエラはサルバナの方をちらちらと眺めていた。いつ表情が崩れるのか、観察してみたくなったのだ。しかし何時まで経っても表情に変化はなく、ついにはシエラとばっちり目が合ってしまう。

「さっきから俺のこと、そんなに熱っぽい目で見て……。惚れちゃった?」

「……いや、ごめん一発殴らせて」

 見直しかけた心が一気に音を立てて崩れていく。するとサルバナはけらけらと笑って、踊り子たちの方を指差した。

「シエラもあんな格好してみたらどうだい? きっと可愛いと思うけど」

「結構です」

 すっぱり切り捨てるとサルバナは「つれないなぁ」とまた笑う。あんなお腹も腕も足も露出した格好など願い下げだ。シエラがむくれていると、先頭を歩いていたラミーナとウエーバーがこちらを振り返った。

「ほら、役所についたわよ」

 見上げてみれば、六階建てほどの大きな建物だった。淡いクリーム色の外壁はやっぱり石で出来ており、ただし扉だけは木である。

「……って、あれ?」

 中に入ってすぐ、シエラは違和感に気づく。先ほどまで一緒にいたはずのイヴがいないのだ。

「どうした?」

 前に居たクラウドがシエラを振り返ると、彼も気がついたらしく眉間に皺を寄せた。しかし時々消えてしまうイヴは、また気がつけば帰ってきている事の方が多い。今回もそうだろうと、シエラとクラウドは互いに顔を見合わせ頷いた。

「……えぇ、五日後なわけ!?」

 するとカウンターで役人と話しているラミーナが、珍しく素っ頓狂な声を上げた。何だろうか、と二人もカウンターに近づく。

「何が五日後なの?」

 ウエーバーにそう尋ねれば、彼は困ったように「ルダロッタ行きの船の、次の出港予定日ですよ」と肩を竦めて見せた。

「……でも、五日経てば行けるんでしょ?」

 シエラが役人に視線を向ければ、役人の男性は小さく頷いてみせる。怯えているのがはっきりと分かり、恐らくラミーナの剣幕に負けたのだな、とシエラは察した。

「じゃぁ、とにかく五日後の船を申し込むわ。……いいわね?」

 ラミーナがシエラ達の顔を見回し、それからユファが「構わない」と気持ちを代弁してくれる。手続きが終わりシエラ達が役所を後にしようとすると、男性がビラを渡してきた。

「良かったら、是非参加して下さいね」

 そのビラには、「ゼイン最大級! 最強王者決定戦!」と書かれていた。

 それからシエラ達は宿を取り、各々身体を休めていた。シエラは貰ったビラをバイソンと、宿の一階にある共同フロアで眺めながら談笑している。

「これ格闘大会なんだねー。賞金銀貨三百枚だって」

「ははっ、そりゃすげぇな。銀貨三百枚なんてどこの大金持ちだか」

「バイソンこれ出ないのー?」

 シエラが茶化して聞いてみると、バイソンは眉根を下げて頬を掻く仕草を見せる。

「俺一応プロだからなー。国外の大会は許可なしに出られねぇんだよ」

「あ、そっか。契約云々とかってあるのか」

 シエラがはっとしたように言えば、バイソンは感心したように「よく知ってるじゃねぇか」と笑う。二人が和やかに話していると、突然宿屋の店主がこちらにやってきた。

「お嬢ちゃんたち、それに出るのかい? 止めときな、そんなの国王の娯楽にすぎないよ」

 年配の男性は諭すような口調でそう言うと、懐のポケットからまた違うビラを出す。

「それに今年は変な賞品もあるようだ。……ほら」

 見せられたビラを見た瞬間、シエラとバイソンは同時に声を上げていた。店主が不思議そうに視線を送り、二人はもう一度まじまじとビラを眺める。しかし、間違いない。

「イヴだ!!」

 そう、なんとビラに書かれた新たな優勝賞品がイヴだったのだ。話しをいけば、どうやらついさっき追加されたばかりだという。

「ど、どどどうしようバイソン!?」

「お、おおお落ち着けシエラ! 要するに、大会に出て優勝すりゃいいって事だろ!」

「あ、そっか! ……って、えぇぇぇええ!!!?」

 二人が騒いでいると、上からクラウドとラミーナが降りてきた。表情は完全に怒っている。きっとうるさいと一喝されてしまうのだ。しかし今はそれどころではない。シエラはビラを手に掴んで、階段を下りてきているクラウドとラミーナに向かって走った。

「ふ、二人とも大変!! イヴが!!」

 すると二人は案の定眉間に皺を寄せ、シエラの持っているビラを受け取った。ビラの内容を全て見終わったあと、二人は暫し沈黙してから「はぁ!?」と声を上げた。

「ちょっと何よこれ! イヴが賞品って……」

「取り返すには、参加するほか道が無さそうだが……」

 二人は顔を引きつらせ、シエラにビラを突っ返してくる。シエラは混乱した頭を回転させてみるが、全てこんがらがって悪循環にしかならない。その時、丁度ウエーバー、ユファ、サルバナも階段を降りてきた。三人はシエラ達の異様な空気を察してくれたのか、首を傾げている。「

と、とにかく話そうよ!」

 シエラは共同フロアに全員押し込めると、椅子を準備してクラウド達を座らせた。それからウエーバー達に状況を話すと、彼らも案の定困惑気味だ。

「……どちらにせよ、私たちが優勝しなければイヴは誰かのものになってしまうわけだ」

「そこから取り返すのは無理だろうね」

「それに日程ですよ。僕達の出港は今日を含めて五日後。大会は明日から四日間です。エントリーは今日の午後三時締め切り……。あと二時間しかありません」

 つまり大会が終わってすぐ出港という形になる。四日目の日程は決勝戦だけで、朝十時からと書いてある。出港は正午ぴったり。つまり仮に決勝進出を果たしたとしても、相手をすぐに倒さなければいけない。しかも店主の話によればこの大会には毎年、国内の強者どもが参加してくるらしい。強さでいえばこちらとて引けを取らないが。シエラが考えあぐねていると、今まで黙っていたクラウドが口を開いた。

「あいつも、ここまで旅をしてきたんだ。見捨てるわけにはいかないだろ」

 その一言に、シエラははっとした。そうだ、イヴも大事な旅の仲間だ。迷っている暇はない。

「と、なれば早速参加するしかないわね。けど……」

「メンバーが問題だね」

 この大会は四人一組のチーム戦だ。先に三勝したチームの勝ちとなり次のコマに進める。

「あ、でもバイソンが……」

 シエラがちらりと彼を見やれば、バイソンは苦笑いを浮かべて手を挙げた。

「俺、一応プロだから参加できねぇんだわ」

「ならば仕方ないな。バイソンは抜きにして……」

「はい、はーい。あたしとウエーバーも辞退するわ」

「え!!!?」

 思いもよらないラミーナの言葉に、シエラは勢い良く顔をどちらに向ける。ラミーナは手をひらひらとさせ、「だってあたしとウエーバー、顔が割れたら仕事できないもの」と珍しく冷たい物言いをした。

「待て、それを言うなら俺も……」

「あんたはいいの! 剣士なんだから顔と名前ぐらい売っときなさい!」

 ラミーナはすぐさまクラウドを黙らせると、シエラに向き直った。

「というわけで、あんたがリーダーやんなさい」

「はぁああ!?」

 その言葉に、シエラは勢い良く立ち上がり、椅子を後ろにひっくり返してしまう。ラミーナは余裕の笑みを浮かべているが、彼女以外は全員が驚いている。

「ラミーナ、それは少し重荷ではないか?」

 ユファが助け舟を出すも、ラミーナは「だってイヴの保護者、一応シエラじゃない」とその船を粉々に破壊した。シエラはがっくりと肩を落とす。確かに今回のことも元を正せばシエラに非がある。イヴをしっかり見ておけば、このようなことにはならなかったはずだ。それは監督不行き届きと言われても仕方ない。

「ま、メンバーは決まったわけだしいいじゃないか。それに、三勝すればいいんだろう?」

「そうですね。シエラを最後にして、クラウドさん達で回してしまうのもありかと……」

 ウエーバーとサルバナの提案により、形はどうあれ作戦も成立した。

 シエラ達は早速参加申し込みのため、街の中心にある、会場にもなっている闘技場に向かった。参加申し込みをしている人たちは中々に多く、シエラ達の前にも後にも沢山人が並んでいる。詳細は書類で全て説明され、シエラ達がやっと宿に帰れるという頃には、全体で五十組にまで膨れ上がっていた。対戦相手は全て開催者の方で割り振られるらしく、明日発表なのだそうだ。噂によれば大体毎年、昨年の優勝、準優勝チームはシード枠で参加らしい。シエラ達が宿屋に戻る頃には、太陽は西に傾き、沈みかけている。

 ――イヴ、待っててね!

 シエラは心に固く誓いながら、明日に備えてすぐに眠りについた。



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