幕間
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クラウドとウエーバーが魔物と対峙している頃、ラミーナは張り付いた笑みを浮かべていた。
――ちょっと、何やらかしてんのよあの子たち。
年齢はそれほど違わないが、ラミーナは我が子を案ずる母親のような気持ちになっていた。
隣にいるシエラを下手に怯えさせないように笑顔をつくっているが、内心はかなり困惑している。
――貴族種に上級の魔物なんて。……いくらなんでも危険すぎる。
魔物というのは人間と違い魔法そのものの本質が違う。まだ研究段階のことで、はっきりと断定はできない。
けれど、それはラミーナ自身常に想っていた。
幼い頃から魔法を使うものとして、そしてドロウッド家の一員としても。
何故人間では、魔力を有するもの有さないものに二分されるのに、魔物にはそれがないのか。
何年もの長い間研究されているが、答えは出ていない。最近になってやっと、“魔法”そのものが違うのではないかという真相に迫る憶測に辿り着いた。
「……ふぅ」
――それなのに全く。これで何かあったらどうするつもりなのかしら。
ラミーナはちらと隣にいるシエラを盗み見た。
あふれ出ている魔力こそ強大だが、その技術はあまりにも拙い。
そんな少女が適合者だと、ラミーナ自身最初は信じられなかった。
何かの間違いであってほしいと、切にそう願った。何より僅かではあるが行動を共にしたから分かる。
この少女は――あまりにも裏側を知らなさ過ぎている。
――まぁ、あたしらが知り過ぎなだけかもしれないけどね。
自嘲的な笑みを浮かべるが、それもすぐに乾いてしまう。
今揃った四人の内三人が、境遇こそ違えど同類であった。だからラミーナは、宝玉はそのような人物ばかりあえて選んでいるのだと想っている。
ただ一人の例外を除き。
――にしても、困ったわねぇ。
一体この後どう説明するか。
ラミーナはウエーバーの困惑した表情を想像しながら肩を竦める。
一般人に説明するとなると一から十必要だ。
――あと、これって言ってもいいのかしらねぇ?
暗黙の了解というものがこの世にはある。しかし、それは同じ業界にいるもの同士でのみ適用される。
しかし、それ以外の人間には詳細を説明するための基本がなかったりする場合がある。
そしてそれは時に外部に漏らしてはいけない極秘事項であったり、話したくない自身の身分なども含まれる。
――う~ん、あたし一人で悩んでも仕方ないわね。
と、そこまで考えてラミーナは思考を止めた。
とにかく今は、あの二人が無事に戻ってくることだけを考えよう。この旅を無事に終わらせるためにも。
――に、しても派手にやらかしてるわねぇ。結構振動伝わってきてるわよ。
後でそこらへんのことについては先輩として言っておこう。自分のことを老けているなどと言ったクラウドには、特に。
そんな風に想っていたとき、一際大きな爆発音が森全体に響き渡った。それは激しく大地を揺らし、空気を震わせる。
「な、何よこれ!?」
こんな魔法が使えるのは魔物か、或いはウエーバーだ。今の魔法でどちらかは負けが確定した。
これほど高密度な魔力で作られた魔法を喰らえば、ただでは済まされない。
――お願いだから、無事でいてよ……!!
ラミーナは加勢したい気持ちをぐっと抑え、爆発の起きた方向をじっと見つめる。
そして――。




