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リディア―世界の中で―  作者: 知佳
第二章:対
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16/159

幕間

****


 それはただ眼下に広がる景色の一部として、対象を捉えていた。

 赤褐色の鱗の肌に吹き付ける風さえも、己がそこにいることさえも、景色の一部として。

 崖の上からの眺めは見晴らしもよく、天気がよければずっと遠くまで一望できる。

 しかし、それはそのようなことは少しも気にも留めていない。

 森を歩く四人組をただじっと見つめ、腕にある充血した瞳をぎょろぎょろと不気味に動かしている。

 そして突然怒りをぶつけるように尾をはためかせ、地面を揺らす。低い唸り声と共に牙を剥き息を荒くした。

「……おや、こんなところにいたのかい」

 後ろから女性にしては低めの声が無遠慮にそれにかけられた。

 褐色の肌に蠱惑的な姿態をし、頭部からは凶悪な二本の角を生やしている。その姿は一部を除き人間そのものだ。

「今回の狩りは随分と、楽しめそうさね」

「……敵ヲ討ツ、トハ言ワンノダナ」

 それが口を開いた瞬間、女性は左足を素早く横になぎ払い、それの胴体に重たい一撃を食らわせた。

 しかしそれは空中で半回転すると、獣のような低い姿勢で土煙を引きずりながら地面に着地する。

「何言ってんのさ。これはね、あたしのための狩りなんだよ。いいかい、迫害を受けて苦しんでんのはあんたらだ。言っただろ? 共闘するだけで、協力はしないって」

 凍て付いた視線を向け、薙いだ足を更に地面に向けて叩きつける。

 それには怒りや喜びがない交ぜになった気持ちが込められており、それは僅かに怯んだ。

「人間を殺るなんて、滅多にできないからね」

 恍惚とした笑みを浮かべた彼女は、妖艶であり醜悪だ。

 崖から望む景色はどこまでも青々しくが、西の空に見える曇天の気配と、僅かに湿った風を感じる。

「……昇るのは、太陽だけじゃないってことを教えてあげなくちゃねぇ」

 ゆっくりと、嵐の気配が近づいてきた。



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