幕間
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それはただ眼下に広がる景色の一部として、対象を捉えていた。
赤褐色の鱗の肌に吹き付ける風さえも、己がそこにいることさえも、景色の一部として。
崖の上からの眺めは見晴らしもよく、天気がよければずっと遠くまで一望できる。
しかし、それはそのようなことは少しも気にも留めていない。
森を歩く四人組をただじっと見つめ、腕にある充血した瞳をぎょろぎょろと不気味に動かしている。
そして突然怒りをぶつけるように尾をはためかせ、地面を揺らす。低い唸り声と共に牙を剥き息を荒くした。
「……おや、こんなところにいたのかい」
後ろから女性にしては低めの声が無遠慮にそれにかけられた。
褐色の肌に蠱惑的な姿態をし、頭部からは凶悪な二本の角を生やしている。その姿は一部を除き人間そのものだ。
「今回の狩りは随分と、楽しめそうさね」
「……敵ヲ討ツ、トハ言ワンノダナ」
それが口を開いた瞬間、女性は左足を素早く横になぎ払い、それの胴体に重たい一撃を食らわせた。
しかしそれは空中で半回転すると、獣のような低い姿勢で土煙を引きずりながら地面に着地する。
「何言ってんのさ。これはね、あたしのための狩りなんだよ。いいかい、迫害を受けて苦しんでんのはあんたらだ。言っただろ? 共闘するだけで、協力はしないって」
凍て付いた視線を向け、薙いだ足を更に地面に向けて叩きつける。
それには怒りや喜びがない交ぜになった気持ちが込められており、それは僅かに怯んだ。
「人間を殺るなんて、滅多にできないからね」
恍惚とした笑みを浮かべた彼女は、妖艶であり醜悪だ。
崖から望む景色はどこまでも青々しくが、西の空に見える曇天の気配と、僅かに湿った風を感じる。
「……昇るのは、太陽だけじゃないってことを教えてあげなくちゃねぇ」
ゆっくりと、嵐の気配が近づいてきた。




