表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

明日の一面どうなるのかしら?

作者: 島城笑美
掲載日:2026/03/06

のんびり娘と強い娘が好みです。

「アンナリーサ・ユルハイネン!現時点をもって貴様と婚約破棄をする」


隣国の第二王子の生誕祭の夜会に招待され婚約者に伴われ入場した瞬間、黄金に輝くブロンドの髪をかき揚げ、青い目を見開きこの国の21歳になる美麗な第一王子が、高らかに声を上げた。


「左様でございますか。いったい何故でございましょう?」


私は他国まで来て変な事にあまり巻き込まれたくないのですが、自国とこの国に新聞社を持っている婚約者は気になるようで見やすいように段々、私の手を腕にひっつけてエスコートをしたまま渦中の方へ近づいて行きます。


第一王子殿下の正面には、大輪のバラの様に艶やかな紅の髪を複雑に編み込みハーフアップにセットし、凛とした翡翠の様な目で第一王子を見据えるご令嬢が相対しています。彼女がアンナリーサ・ユルハイネン嬢なのでしょう。


ご親切な方が、公爵家のご令嬢だと教えて下さりました。私の婚約者はとうとう、いつも持ち歩いていらっしゃる小さな紙束を取り出して一生懸命に情報を書き始めました。困ったものです。


王子の話を聞くと、第一王子のお気に入りの女生徒にユルハイネン公爵令嬢が嫌がらせをしたとの事。公爵令嬢がそのような嫌がらせを行うでしょうか?


「左様でございますか。それは、いったい何故でしょう?」


公爵令嬢は堂々と理由を聞く。それはそうだ、何かを起こすには相応の理由というものがあるはずだから。本当に何故でしょう?


縋るとか問い詰めると言うには淡々としていて、聴取のようなのだが第一王子は気が付かないのだろうか?しかし、第一王子は理由を婚約者の自分が懇意にしている女性を妬んで、嫌がらせの攻撃をしたとの事。まぁ、浮気の発露ですか?愚かしくないですか?この王子。


昨今は、王族の能力の低下も問題視されていますわよねぇ~。はぁうちの国の王子王女たちがまとも良かったと胸をなでおろす中、話は続いている。


「左様でございますか・・・何故?」


「先ほどから、何故とはなんだ!」


「はい。何故、私が第一王子殿下の懇意にしている女性に嫉妬をして嫌がらせをしなくてはいけないのでございますか?」


「は?貴様は頭が悪いのか?」


あらあら、どちらが頭の悪い会話をしているのでしょうか?私と婚約者は頭をコテリと傾けます。


「貴様は王太子の婚約者の立場が彼女にすげ替えられるかと、恐れ彼女の排除を企んだのだろう!」


「王太子の婚約者の立場でございますか?すげ替えられる事はございません。こちらは王命にございます」


「ふっははは!王命だから問題ないと!私はこのオイリとの婚約を王に認められているぞ!」


「はい。アルホ嬢とのご婚約おめでとうございます」


公爵令嬢はニコリと微笑んで祝辞を述べた。


あぁあ。そういう事ですね。まだお気づきにならないのかしら?他国の人間である私たちも気がついたといいますのに・・・。あぁだから、男爵家との縁談が整ったのでしょうね。王族が男爵家とですか。最高峰の教育を受けて男爵家へですが、そうですか。教育費がもったいないですね。


男爵家に領地はあるのでしょうかと考えていると、第一王子は一瞬礼を述べます。意外と律儀な方です。ですが、更に大声を張り上げます。


「あっありがとう。ん?違う!だから貴様とは婚約破棄なのだ!」


すると、公爵令嬢はコロコロと笑います。すごく洗練された美しいご令嬢です。笑うと可愛らしいところに好感を持てます。次期王妃様なのですね。と交流を深めたいと考えていると、隣で婚約者がどんでん返しあるかな?と問うてきます。今がまさに、王子に対するどんでん返しの始まりではないでしょうか?というと。ちょっとつまんないねとほざきました。


あぁ。新聞の一面を飾りたい人の頭が過激でいけないわと苦言を呈します。普通の事を読んでいる方が楽しめるように書くのが腕の見せ所よ!と叱咤しました。


「ふふっ第一王子殿下は面白い方ですね。第一王子殿下のご結婚と王太子の婚約者の婚約破棄は特に関係がございません。それに、私と殿下の間に婚約関係はそもそもございません」


「はぁ?貴様は私の婚約者だろう!」


「いいえ。私は王太子殿下の婚約者です。まぁ正確には王太子になる方の婚約者でございます」


「「!?」」


今頃気が付いたのだろうか。第一王子と彼にぶら下がっている方がバッと貴賓席にいる陛下を見上げました。こちらに、到着したばかりの日にお会いした陛下は感情を顕わにすることが無い方だったのだけど、これは、また笑顔が深まっており少々・・・いえっかなり赤いお顔をされていらっしゃるわ。


普段のお色じゃないわよね。あの顔色は。


「ちっ父上!どういうことですか?」


「公の場での呼称を間違えるな・・・何度言えばわかるのだ。さて、どういう事とは、どういう事だ?むしろ、この状況についてどういう事なのか聞きたいのは余の方だが?」


流石陛下である。ゆったりとした深みのある声の威圧で第一王子に尋ねる。しかし、彼は本当に話を聞かない人のようだ。


「父上は!私とこの愛しいオイリとの婚約を認めて下さったではありませんか!」


「陛下と呼べ。あぁ。婚約は認めた・・・が、それをこの夜会で発表すると申したか?」


「いえっですが!」


「あぁ。しかし、ここまで衆目を集めたのじゃ。発表しよう。皆も困るだろう」


「あっありがとうございます!!」


第一王子は喜色満面ではあるが、陛下のあの冷たい目が見えないのでしょうか?鈍感とは幸せな事ですね。まぁ、陛下が発表されるまでの事でしょうけど・・・。


あら?つまらなかったのかしら、ネタにはならないと思ったら紙束は片づけるのね。とふと婚約者を見上げる。それとも、面白おかしく書けるように考え始めた?


「今宵、成人を迎える第二王子の生誕祭にお越しいただいた皆に感謝を。

後ほど第二王子からの挨拶とさせて頂くが、愚息が先走り余興を興じてしまった。ここで、先に愚息の処遇を発表しよう」


処遇と言いましたわ。慶事ではないんですね陛下。


憐憫の目なっている周囲の貴族たちの目が気にならないのであろう第一王子はキラキラとした瞳で陛下を見つめている。隣の彼女も。似たもの夫婦になるのでしょうねと眺める。


陛下も感情をあらわさないような顔になり、顔を真っ青にしたアルホ男爵を呼び出す。男爵を支える嫡男が憎々し気に第一王子にぴったりとくっついている妹をにらみつけるが、オイリ・アルホ男爵令嬢は満面の笑みで陛下を見つめている。


似てるわね。と小声でボソッと言うと婚約者が隣で、そうだねと答える。婚約者同士は似るのかな?とか言い始めたのでどういうことなのか?と問うといいところだよとシーとされた。解せない。


「此度は、第一王子クレメッティたっての希望に因り、オイリ・アルホ男爵令嬢と婚約を結んだ。なお、この婚約は王家に全く利をなさない為破棄は出来ないと王命にて言い含めておる」


えぇ!そんなことも約束されたのに公爵令嬢に婚約破棄を宣言したの?大丈夫?この国!いえ、国は陛下は対応してるわね。ただ、陛下の予想を超えたあの王子が凄いのね!


「よって、クレメッティは本日婚約の発表と共に王族から除籍の上、アルホ男爵家への婿入りと成す。よろしく頼んだぞアルホ男爵」


きっと事前に話を済んではいたはずだが、このような公の場で発表される予定では無かったのだろうアルホ男爵は真っ青になりながらやっとのことで御意と返すが膝をついた姿勢から立ち上がることが叶わなかった。


「この案件による瑕疵は、其方の娘と余の愚息によるものとし。支度金としてアルホ男爵家に土地を、嫡男であったユハニ・アルホ男爵子息には慰謝料として第一王子の個人資産の4分の3を譲渡。ユハニが望む事を1つ叶えることを約束しよう。爵位は難しいが官僚なら取り立てることも可能だ。其方は学園での成績も優秀で教師より素行もいいと聞いている」


先ほどまで、悔しさを押し殺している顔をしていた次期男爵であったはずのユハニ・アルホはばっと顔を上げ陛下を見上げる。その顔には困惑と歓喜が入り混じっていた。


あら。いち男爵令息の為に調査なさったのね。迷惑をかけた令嬢の兄にも手厚いわ!陛下、素敵ですという顔で陛下を見つめていると急に真っ黒になった。婚約者の手が私の顔を覆っていた。


「どういうことですか!」


ユハニの感動を打ち消す声が、元第一王子から発せられた。どういうこともない。そういうことだろう?そして、メイクが落ちるから顔は触らないでと婚約者を叱る。


「わっ私は男爵?は?第一王っ王子ですよ?個人資産の4分の3を譲渡??」


「あぁ。左様だ。残りはこの茶番に巻き込んでしまったアンナリーサ嬢への迷惑料だ」


あらあら資産0、後ろ盾0の王子を男爵は面倒見るのですか・・・それに、陛下に除籍された王子と関係を結びたい人っていないわよね。あぁ。人間ってあんなに顔を青くできるものなのね・・・男爵。お可哀想に。


「わた・・わた・・・私が王太子でなくなるのであれば!誰が王太子に」


そもそも、第一王子は立太子されていないはずなのに面白い事を言う王子ですわねぇ〜暖かい気候の国の人はのんびりさんだわと思っていると今しがた開いた扉から出て来た人物が言葉を発します。決して張り上げているわけではないのに良く通る声に視線がそちらへ向かう。


「私ですが?」


その男の前に、アンナリーサ公爵令嬢がしずしずと近づく。そして、彼女の手をとりきちんとエスコートをして壇上に上がった。ぶら下がっているわけではない。うん。綺麗な所作のお二人だわ。


「今日は、私の生誕祭へお越しいただき有難く思っております。何やら、弟思いの兄上が余興をして下さったようで楽しんで頂けたでしょうか?

兄上はこれより退場致します。この後は、通常の夜会の催しになっておりますので、落ち着いて楽しんで頂きたいと思います」


第二王子の声かけに拠り、優雅に訪れた近衛兵たちにエスコートされるように促され赤い顔をした第一王子と青い顔がお揃いの男爵父娘が連行された。


色々あるわねぇと他国の事ですしのんびりと婚約者に話しかけると、婚約者はもさっとメモ帳に色々書きなぐったあと、それをポケットにしまった。


明日の新聞は、第二王子の誕生祭で一面を飾るはずだけど・・・第一王子の婚約寄りの話になるのかしら?立太子かしら?と考えつつも早めに帰る支度をしなくてはと侍女に言伝しようと給仕を探す。


メモ帳を片づけた婚約者は私の手をとり、僕ら来賓だから王子達の後に踊れるよとダンスに誘う。


「新聞はいいの?」


「それは、君との時間を楽しんだ後で徹夜するから大丈夫。どうせ、印刷所は朝しか開かないしね!」


私は思わず目を見開きくすっと笑う。最後の一言は余計ですわよ。と彼に囁き、明日の夕方の紙面に思いをはせつつ婚約者と夜会とダンスを楽しんだ。

拝読ありがとうございます。


ちなみに婚約者さんは伯爵令息で、主人公ちゃんは伯爵夫人教育で伯爵家の外交に同行してます。パパンもママンもいるので二人旅行じゃないですよぉ~。連載中のハーシェルヒルムたちの国の子たちが変な王族の珍事に巻き込まれるお話でした。自国と他国くらべちゃうよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
第一王子の個人資産の4分の3って、普通に男爵家継ぐよりよほど幸せになった可能性が高そう。 大人がアホ過ぎない話の方が読んでいてストレスがなくて良いですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ