◆シナリオ
バンダナコミック 原作大賞用 応募シナリオ
https://www.bandanacomic.com/event/contest/vol01/
指定フォーマット
https://docs.google.com/document/d/1nu5A-f4B1gA6nZ2Cr9wPVp4obpf6r_MvTUOpPbAVh0I/edit
フォーマットに沿ったシナリオ部分 [ プロット ] となります
・転校
スポーツ特区で生まれ育った成尾福馬は、小学校低学年から野球の才を見いだされ努力を続けていた。しかし怪我を理由にレギュラーを外されるのをおそれ、痛みを我慢し隠して続けた結果、悪化して取り返しのつかないことになった。普通の運動に支障はないもののプロを目指すことは断念、ふさぎ込んでいることが多くなりついには不登校となる。
不登校は心理的圧迫が高まった結果と診断されたことで家族は引っ越すことに決め、父親の仕事の都合も有り浪内市へとやってきた。浪内市はホビー特区でスポーツとは無縁そうに思えたのも移住先に選定した大きな理由だった。
そして福馬はここで一人の少年に出会う
・邂逅
転校初日、その覇気の無い雰囲気とは裏腹にスポーツマン的な体つきだなと声をかけて来たクラスメートがおり、それが鋏紙拳だった。ケンはホビー特区を拠点とするホビーメーカー各社によるコンソーシアムが開発したゲーム『Battle Arm Arms』略して『BAA』のプレイヤーだ。
BAAはただのゲームではなくバーチャルなことを売りにするだけのゲームでもなかった。自分の肉体を動かしてプレイするため身体能力は高い方が良く、瞬時の判断力も必要なので頭の回転や反射神経も必要になる。ただし動くと言っても歩くことは無いので、今の福馬でも十分プレイ可能であるし必要な素養は備わっていると言われる。
今までスポーツ特区にいてスポーツ以外のことに興味がなかった福馬は、聞いたこともないBAAに割く時間も金もない、色々と必要なものも有りルール等を覚えるのも面倒だと断る。しかしケンは毎日しつこく誘い、一週間ほどは同じようなやり取りをしながら逃げるように帰宅していた。
・体験
転校してしばらく経ったある休みの日、ケン行きつけのホビーショップでBAA体験教室が行われると言われまたもや誘われる福馬。だがケンが見本プレイをするからどうしても見てほしいと押し切られ、結局見に行くことになってしまう。たかがゲームだと気が乗らなかった福馬だったがケンのプレイに衝撃を受けた。
BAAは撃って走って殴って受けるという要素を組み合わせるスポーツのようなゲームであることにまず魅かれた。さらにケンの動きや判断の早さがずば抜けていたというのも大きい。観客席で見たホログラム投影されたゲーム画面は、まるで本当にその場でロボット同士が戦っているように見え、自分もやってみたいと言ってしまう。
テスト用の機材をレンタルし初プレイをした福馬は、同じクラスの女子、文珠棟子にボロ負けする。体力には自信があった福馬だが、自分より体が大きいとは言え女子に力負けした結果にショックを受ける。ケンからは追い打ちをかけるように「小学生なら女子の方が体力で勝っている」と慰められ余計に落ち込むのだった。
・雪辱
棟子に負けたままではいられないと考えた福馬だったが、BAAを購入してもらって続ける気までは起きていない。そのため体育で勝負を挑むのだがことごとく敗北して悔しさを積み上げるのみだった。それもそのはずで、棟子は近隣小学生を集めた体育大会でもトップクラスの体育会系女子だったのだ。
結局純粋な体力勝負では敵わないと諦めてしまった福馬だが、それでもケンは誘うことをやめなかった。それなら棟子を誘えばいいのに自分も勝てないからやらないのだろうと悪態をつく。
ケンはそれを笑い飛ばし、自分なら棟子に完勝できるとうそぶいた。疑いの眼差しを向ける福馬に、ケンは次の日曜にまた体験会があるからそこで証明すると約束する。その際必ずメモを取るものを用意するよう言われた。
そして日曜日、ケンの言った通り棟子は一撃も与えることなく完敗した。体力的には福馬よりも劣るケンは先日同様に素早い動きと機転で相手の動きを先読みしているように感じた。福馬はケンに言われた通り、メモしておいた勝負のポイントをしっかりと頭に叩き込んでから棟子へ再戦を申し込む。
その甲斐あって数度の挑戦で棟子に勝利した福馬は、しばらく感じていなかった達成感と爽快感を思い出す。野球ができなくなってふさぎ込んでいた自分にも新たな可能性があるかもしれない、そう考え始めるきっかけだった。
福馬はこの時初めてケンがBAAジュニアランキング1位であることを知る。
・始動
初勝利を切っ掛けにBAAへはまって行く福馬、実際に購入しプレイするためにはいくつかの障壁がある。まずはキットの購入だが子供のおもちゃにしてはなかなか高価なものなので簡単には頼めない。
この特区の子供なら親が最新ホビーに手を出しているケースが多く、最初はお下がりから始めることが定番だ。それはケンも棟子も同じだった。今まで野球に金をかけてもらい、それがダメになると引っ越しまでしてくれた親にはとてもそんなことを言えないと考え込む。
福馬の両親は建築関係の仕事をしており、今まで電子機器やゲーム等とは無縁に生きてきた体育会系の人間である。それも言い出せない理由の一つだった。何かきっかけがあればと考える福馬やケンだった。
ケンが父の勝一へ相談するとあることを思いつく。もうすぐ夏休みなので体力強化のために合宿をしようと言いだしたのだ。もちろん福馬も一緒に泊まりがけである。今まで運動から離れていた福馬が元気になって来ており、体力づくりの合宿にまで参加するとなれば親はきっと喜んで、なぜそうなったか聞いてくるだろうと言うのが勝一の作戦である。
そうは言ってもケンはそれほど運動が好きではなく、BAAで必要になる最低限動ければいいと考えているため被害者面だ。それでも皆は合宿を楽しみにしている。しかもなぜかついてくることを勝手に決めていた棟子はやる気満々だった。
・合宿
怪我の後遺症で全力で走るのが難しい福馬だが、それでもケンとはそこそこいい勝負で砂浜ランニングをしていた。それをあっという間に追い抜かしていく棟子と、寝不足に加えて普段の運動不足が露呈し完全に置いてきぼりの勝一、そんな朝から始まる
昼間は海で遊び夕方は昼寝、夜には花火をやってはしゃいでいたが一つ重要なことを思い出す。少しずつ宿題をやらないといけないのだった。合宿へ出かける前の約束できちんと宿題もやるからと許してもらったからだ。幸いここでは勝一が珍しく役に立ち勉強を見てくれる。ついでにBAAのカスタマイズ談義なんかもはさみつつ楽しく過ごす。
数日たって帰る前日になり近所にホビーショップがあることを知り行ってみることにする。そこはBAAキットを製造しているメーカーで一番不人気なダイバンの直営店だった。
・購入
大特価の旧型内部モジュールは最新型と比べ反応速度で劣るうえに少し重いのが難点。しかし市価の半額を切る特価のため福馬の貯金でも買える価格だ。それにもし会員登録時にスポンサー設定をすればさらに割り引くと言われてしまった。
スポンサー設定と言うのは、公式非公式関わらずバトルを行う際、フィールドに表示される建物等に看板を出す機能である。今後このBAAを使用している間は常に看板が表示されるというわけだ。それでも破格には変えられない。
結局福馬は誘惑に負け旧型を購入してしまった。最終的には勝一に旧型でもプレイに問題ないと後押ししてくれ安心したからと言うのもある。スポンサーも別にプレイには直接関係ないことで、あえて言うならきっと特売で買ったんだろうと観客に悟られることくらいだ。
・検討
合宿から帰宅した一行。BAAの一部を買ってしまい興奮気味の福馬だが、これからどうすべきか悩むことになった。なぜなら貯金をほぼ全部はきだしてしまったのだから。しかも親に内緒である。
内部モジュールの他にも必要なものはたくさんある。先ずは外装キットに移動用のコントローラーが無くては話にならない。さらに自宅で調整するならBAAとパソコンを接続するためのインターフェイスユニットにパソコンかスマホもいる。それに最大の難関であるプレイ費用だ。
ケンのような上位ランカーはスポンサーがついて出してもらえるのでプレイ費用は払わないで済む。しかしそれはほんの一握りで、棟子もプレイ費用を親に出してもらっているそうだ。
プレイはどの店でも同じで1プレイ500円、月間パスは5000円らしいが、週末に3試合する程度で元が取れてしまう。年間パスになると5万円でさらにお得だし、棟子のように家族会員なら二人目は半額らしい。
・準備
あれこれ考えていても仕方ないので有り金をはたいて必要なものを揃えていく福馬。幸いコントローラーは勝一が持っている余りを借りることにし、パソコンとインターフェイスは急がなくてもいいと後回しである。
残りの外装キットを用意すればプレイまでこぎつけられるが、地元のショップには最新のものばかりでどれも高額である。勝一が持っているガラクタから寄せ集めて組み上げると言う手もあるが、やはりプレイする際の感情移入にも繋がるのだから見た目は大切だ。
ケンのBAAはド派手な金色メッキが施された限定品で、買うとなるとかなり高額らしいが、開発者につてのある勝一が定価で入手してきたという怪しげな一品だった。ただプレイ中のダメージに合わせ外装パーツが吹き飛ぶことがあり、メッキ品の扱いは神経を使うため実使用品としては避けられる傾向がある。
初心者は軽く丈夫なポリカーボネートが無難だが、見た目がゼリーのパックのようで格好が良くない。最低でもABS製の色分け済みモデルがいいだろうとアレコレ物色する。
・出会い
店長とも相談してみたが値引きをしてくれる気配はない。ここではスポンサー設定の話も通じない。早くプレイしたい福馬は、仕方なく一番安いキットを購入しようと棚に手を伸ばした。
するとその棚の奥に箱が痛んでいる古そうなキットが落下していた。ぼろいから安いかもしれないと店長のところへ持っていくと、これはいわくつきの初期キットだと言う。今使われている内部モジュールには適合しないと言われてしまった。
だが勝一からは福馬の購入した前世代のモジュールは1.5世代と言われていて初代と互換性があると言う。そもそもただの外装にそんな細かな仕様が必要なのか疑問に思う福馬だが、段々と軽くなったこともあり固定するためのネジ穴やピン位置が違うらしい。
この外装キットの何がいわくつきなのかと言うと、装着し腕を動かすと色々な個所が稼働しいかにもメカと言った風で格好がいいのだが、そんな機構はプレイに関係がなく、壊れやすいし邪魔で不利になるためすぐに廃盤となったのだ。
だが初期コンセプトからすれば、本物のロボットを操縦しているような感覚になるギミックは大切な要素で、それほど悪いものではないと勝一は考えていると言う。しかし勝敗がある以上わざわざ不利になるものを選ぶプレイヤーはいない。
確かにその通りだと思いつつも、大幅値引きしてくれるとの言葉にまたしても乗ってしまう福馬であった。貧乏は敵である。
・組立
全ての必要パーツが揃ったところでいよいよ組立である。自宅では色々と不都合があるのでケンの家にやって来た福馬。するとなぜか棟子が窓から入ってきた。棟子の家は鋏紙家の隣にあり、2階にある風呂場の向かいがケンの部屋らしい。覗いてもいいのに一度も覗いてくれないという棟子を無視して早速始める。
コントローラーは福馬の手に合わせたグリップ部を粘土で型取りした後スキャナーでデータ可、3Dプリンターで出力する。操作部は勝一のジャンク箱に転がっていた中から適当に選んだもので、広く使われている十文字キー型がいいだろうと選択した。
・組み込み自体はそれほど難しくなくあっさりと完成した。試しに右手に装着し動かしてみると、必要もないのシリンダーやらベントホールなどがガチャコンと音を立てて稼働する。それを見たケンは羨ましがっている……
福馬が気に入ったギミックは、ショットを撃つために腕を真っ直ぐにして構えトリガーに指を掛けると、上部が展開され発射口が飛び出すところだ。これなら本当に弾を発射する感じが出ているしギミックとして納得できる。
だがこれはショット時の不安定を招くので最高に不要な機能だと言われガッカリする。しかしケンが「ロボットバトルはロマンだから」と大声で宣言するのを見て気を取り直すのだった。
ソフトウェアカスタマイズはせずにまずは標準でバトルし、経験の中で必要なものを見つけ出すのがおススメらしい。勝一曰く「先人は言った、先ずは百回負けろ」らしい。
・知識
野球で言えばバトル一回は一打席程度の価値、3割勝てるようになればランクも上がるだろうとのことだ。公式戦で上下するランキングはSSSからEまでの8段階になっている。基本的には同ランクシングルバトルのみがランク戦となる。
Aまでは3~4割勝てれば昇級するが、Sランクは上位100名、SSは25名、SSSは上位10名の限られた枠を争っている。プレイ人口は1万人前後と言われておりそれほど多くはないが、これはまだVRN網が日本国内に限られるせいで国外在住者はプレイ不可能なことが理由だろう。
ケンはランキング1位なのでSSS、棟子はCランクだからそれほど遠くもない目標として最適だろう。クラスメイトのほとんどはCランク程度で良くてBを行ったり来たりしているくらいだと言う。それでも特区外のプレイヤーよりは水準が高く、非公式練習の相手に困らない恵まれた環境ではある。
・実戦
ホームグラウンドと言う仕組みはないが、なじみの店なら緊急時に修理スペースや工具を借りやすいので行きつけの店で月間パスを購入。外装キットも買っているしケンの行きつけでもあるので店長からの受けは悪くない。
本当は全部買って欲しかったと言っていたが、内部モジュールの購入価格を口にしたら黙ってしまった。放課後はさすがに無理なので夏休みのうちに少しでも上達できるようせっせと通い練習とランク戦を繰り返していく。たまにケンに相手をしてもらうが一度も攻撃が当たらない。まるで予知能力でもあるように避け、動きを知っているのかと思うくらい先回りしてくる。
そのプレイスタイルが元で二つ名で呼ばれることになり、ケンは『{未来予知』と呼ばれているらしい。ちなみにケンがつけた棟子の二つ名は『マッハ』であり、勝一が言うには棟子の父の姉も同じあだ名だし、母親も同じだったと言うことで、代々女性が受け継いでいる? らしい。
夏休みの間にランクCまで駆け上がった福馬は、今や棟子をもしのぐBAAプレイヤーと言える。初期装備でカスタマイズもしていないのだから大したものだし伸びしろがまだまだある。それでも段々勝てなくなってきているのは確かでそろそろ次のステップへを検討する段階に来ていた。それはお下がりのままでプレイしている棟子も同じである。
・調整
新学期になり2日ほどした日にケンの家でカスタマイズの検討相談をすることになった。福馬は飛んでくる弾丸への反応がいいのでシューター型がいいのではないかと言うことになり、シミュレーターで試してみる。
BAAには装備の性能を上げると代償として負担ウエイトと言う重りが課せられるルールがある。そのためジュニアクラスで使われるのはせいぜいレベル2装備がいいところである。
負担ウエイトは全てBAAのユニットへ取り付けるため、装着する腕が上がらないなんてことにもなりかねないし、安全のため事前に行われる体力測定結果により上限が決まっている。
しかし福馬は小学生とは思えない腕力なのでショットレベル4でも普通に動くことができた。レベル1は秒間1発、レベル4は秒間4発まで撃つことができるため、高レベルは大幅なアドバンテージである。
しかしこれをそのまま使用するのではなく、ダブルショットと言うカスタマイズを施すことにした。これは弾丸が2発動じ発射されやや広がりながら飛んで行くもので左右に大きくかわす必要となることが多い。うっかり当たってくれる場合やシールドを使わせることにも繋がる。
なぜ4ショットにしないのかは、ダブルを連射できると方が有用だからである。一般的にはレベル2で使用するダブルショットの欠点は、連射が効かないことだ。通常のショットよりも広範囲をカバーできる代わりに発射感覚は同じ1秒だが、これを半分の時間で撃てればがぜん有利が取れる。
レベル4の遣い手は大人でも少数なので広く知られないうちはかなりの効果があるだろう。その間にランク戦で駆けあがろうと言う作戦でる。だが常にダブルショット連射するのではなく、ここぞと言う時までは温存するよう勝一は福馬に指示を出した。
ばれて警戒されるよりここ一番で確実に仕留めるよう、余裕のある試合では絶対に悟らせないことが必要だ。そのために1秒より前に次弾を発射しないよう体に染み込ませ、いざと言う時も出来るだけ最短発射は避ける。それによって相手に警戒されることが減るはずだからだ。
それでもやはり重量級での長期戦は辛いため、シールドを外して1レベル分軽減させる策に出た。シールド無しで撃たれるとかわすしかないが近距離戦はやらない想定なので福馬なら十分対処できるだろう。そして精密な動きができるようにするにはひたすら練習である。
同時に棟子の装備にもカスタマイズを施す。こちらは当然のように殴り特化の格闘型である。パンチレベルを3にし常識破りの秒間3発パンチで一気にカタをつけるよう攻めるスタイルだ。射撃に対抗できるようシールドのカスタマイズとしてリフレクターというカスタマイズを選択。
これは相手のショットをシールドで受けると最短時間で跳ね返す効果があり、相手は回避かシールド使用の二択を押し付けられ次の攻撃に移る際に余計な時間を要することになる。その間に距離を詰めて殴るのが基本戦略だ。
・昇格
カスタマイズを施した効果は歴然で、自分になじんだと感じることも大切なモチベーションファクターなのだ。福馬も棟子も勝利を積み重ねていき、9月末にはBランクに昇格できた。
これでケンの計画を実行に移す準備が整った
・仲間
SSSランクのケンだがチーム戦の経験は非公式の練習試合しかない。そのためどこまでやれるのか興味があった。しかしチームメイトになれそうな面子がいなかったので手を出せずじまいで今までやって来た。
しかしケンは福馬がやって来たことで現状を変えられると期待している。もう一人のメンバーは棟子で決まりとなりそうだが、ケンにとってこれは不本意だった。なぜ幼馴染で気の知れた棟子をそれほど毛嫌いしているのかというと、幼馴染だからに他ならない。
幼いころから一緒に行動することが多く何もかも知られているような感覚、それに加えて小学校へ上がるころには周囲から冷やかされるようにもなった。簡単に言えば恥ずかしいのだ。だがこの際贅沢は言ってられないとチームメイトになることを許可した。チーム戦は3人ひと組のため人数不足ではどうにもできないから仕方がない。
・好敵手
福馬たちがチームを作り集団戦の練習をしていたある日、ケンのライバルを名乗る晴灘雷から対戦メッセージが送られてきた。BAAランキングは2位と言うことで、ケンに何度も勝ったことがあるほどの実力者である。
だがランキングは月ごとに評価されるためトータルでは負け越し、今まで一度も入れ替わったことがない。今回はトレーニングを積みカスタマイズを工夫してきたので今月のランキングでは覆すつもりでいると宣言。
そしてランキング戦が始まった。SSSランクは10名しかいないため総当たりで対戦相手1人に付き2戦が行われる。9.10位になるとSSランクとの入れ替え戦を受ける必要あり。
ケンとライはお互い下位の取りこぼしは無く順調にこなしていった。ここでライの元にランキング3位の三田日東司が共闘を持ちかけてきた。
東司はライと比べると数段落ちる実力ではあるが、ねちねちとしつこいプレイが心情である。まともにやりあうと手の内を温存する余裕はなくなってしまう。そこで東司はわざと負ける代わりにライが以前使用していた限定スキンを寄こせと言うのだ。
だがライは正々堂々とバトルしてケンに勝つつもりだと言い、東司の誘いをきっぱりと断る。決して限定スキンを渡すのがが惜しいからではない。決してスキンをあげたくないからではない。
その結果、東司と全力で戦ったライは手の内をさらけ出し奥の手を使わされてしまった。それはケンが得意としているシールドで受けた後最短でパンチを繰り出すシールドバッシュと言うカスタマイズ技への対抗策、シールドバッシュ返しシールドバッシュだった。
東司戦でその手が誘い出されてしまった事も有り、ライは今月もケンに敗れてランキング2位となってしまうのだった。それでも非ランク戦でいいから勝負しろと食い下がるライだったが、ケンはチーム戦が忙しいからとあっさり断り、今後非公式バトルはチーム戦しかしないと宣言する。
そしてライバルを含めた戦いの場はチーム戦へ
・スキン
BAAはプレイヤーが自分の両腕を主とした体で動かす対戦ゲームである。しかし実際に対面しているわけではなくネットワークを通じてお互いの仮想機体を戦わせることになる。その時、相手側と観戦者に表示されるのがスキンである。
標準スキンはいくつかの中から選べるが、どれも無難で装飾のあまりないロボットである。各メーカーは外装キットにスキンをセットにして販売している。過去にはブラインドボックスとしてキットに封入されているスキンにレアリティを設けたり、関連グッズのオマケや抽選で限定スキンを入手することも出来た。
現在は過剰な販促行為が禁止されているため、ブラインドボックスや外れのあるルートボックス方式は禁止されている。ただし10種類あるシリーズなら全てセットで購入することで高レアリティを確実に入手できると言った方法は認められているため、金に糸目を付けないプレイヤーなら簡単に手に入れている。
そうではない限定品は当然価値が高く、ケンが使っている限定外装キット付属スキンもその一つである。ただしこれはキットを使用しなければスキンも適用されないし、逆に外装キットだけ使用することもできない完全セット物で今はあまり見られない販売方式である。
東司が欲しがったライ所有の限定スキンは、コミック購入特典の抽選券で応募して当選すると貰えると言う入手難易度の高いものだ。このスキンは雑誌連載中マンガに登場する主人公機そのままなため小学生プレイヤーには垂涎物である。
ちなみに福馬が現在使用しているのは標準スキンなのではっきり言ってカッコ悪い。ケンが自分のをいくつかあげると言ったが、ルーキーリーグと言う初心者向けの大会で勝って勝利商品スキンを手に入れるから不要だと断った。しかしルーキーリーグ参加条件の、BAA会員登録からひと月以内かつランキングC以下を満たさなくなり参加できなくなったことを後から知りうなだれていた。
そして棟子の使用しているスキンは当然女子らしいかわいらしい物、ではなく、無骨な格闘型として公式が販売している追加スキンであり、辛うじてカラーリングは水色を基調でまあまあ可愛げがあるが、一般的にはモブと呼ばれる類のスキンである。
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