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 私には好きな人がいる。明るくて、優しくて、可愛い幼馴染の未来。笑った顔は太陽のように眩しく、手を差し伸べて優しさを見せる姿は海のようで、フワフワのヌイグルミのように愛らしい。

 

 だから当然、学校では人気者の1人だ。誰とでも分け隔てなく接する彼女は男女共に引っ張りだこで、いつも視界のどこかにいる。

 

 そんな彼女が可愛くて、でも不用意に他人に笑った顔を見せる警戒心の無さに、私は怒りを覚えた。今はまだ実害は無いけれど、いつか必ず彼女は襲われる。未来の優しさを好意と勘違いした男か女が、本能のままに襲うだろう。

 私は危機感を抱いた。大切な幼馴染が、何処の馬の骨とも分からない奴に汚されてしまう事を恐れた。

 

 でも、平和主義で楽観的な彼女は私が言った事を真に受けないだろうし、予め危険人物を排除しようにも、候補者が多過ぎる内はリスクが高過ぎる。私には人の心が読めないから、潜在している危険人物を判別出来ない。

 

 だから、私が危険人物になった。幼馴染である私に襲われる事で、未来に危機感を抱かせようと考えた。未来に手作りクッキーを振る舞うと家に誘い込み、睡眠薬を混ぜ込んだクッキーを食べさせて眠らせる。


 そうして今、私のベッドの上には未来が横になっている。手足を縛られ、怯えた表情で私を見る未来。学校の連中が知らない未来を私は独占している。


「さ、佐月、ちゃん・・・・・・これ、何・・・・・・!?」


 嬉しい。こんな事をした私の名前をまだ呼んでくれるなんて。やっぱり未来は優しい子。こんなに愛らしい彼女が他の奴に汚されるのは、やっぱり見過ごせない。


 私は未来のお腹の上に跨った。お尻から感じる彼女の柔らかなお腹の感触に心地良さを覚えてしまい、少しクスッと笑ってしまう。そんな私とは裏腹に、彼女は尚も私を怯えた表情で見てくる。


 未来の鳩尾に中指を当て、ゆっくりと上へ動かしていく。中指が喉元を通ると、唾を飲んだ喉の動きが、私の中指を少し上げた。喉から顎に登らせた中指を唇に動かしていき、下唇から時計回りに中指を動かす。指先に当たる彼女の吐息が私の背筋に刺激を走らせ、許容しきれない量の快感を抜かす為に、私はゆっくりと息を吐いた。


「佐月、ちゃん・・・・・・お願いだから、元に戻って・・・・・・私が知ってる佐月ちゃんに・・・・・・大好きな、佐月ちゃんに・・・・・・!」


「私も大好きだよ、未来。でもこれは必要な事なの。未来に警戒心を持ってもらう為に、必要な事なの。あなたはあなた自身が思ってる以上に素敵で魅力的な女の子。赤ずきんのお話を憶えてる? 赤ずきんは自身の可愛いらしさの所為で、狼に食べられちゃった。もっと警戒心を持っていれば、食べられる事はなかっただろうに」


「え・・・・・・え・・・・・・?」


「私は未来が好き。あなたを食べたいし、あなたに食べられたいくらいに。あなたが他の誰かに汚される前に、私が汚したい。私が誰かの物になる前に、あなたに汚されたい・・・・・・私は、未来が好き」


「・・・・・・私も、佐月ちゃんが好き。いつも私を見守ってくれて、私を守ってくれた・・・・・・私の、私だけの、王子様」


「・・・・・・フフ。こんな形で両想いになるなんてね」


「でも、こんな形じゃなかったら、打ち明けられなかった。いつまでも伝える勇気が無くて、佐月ちゃんが私の元に来てくれるのを願ってばかりだった」


「じょあ、願いは叶ったね」


 私は未来の手首を掴み、顔を近付けた。鼻と鼻がぶつかるのを避け、彼女の深みに沈み込むにつれて、手首を掴んでいた手に力が入る。舌から感じる彼女の唾液は、とても甘かった。 


 長い静寂の後、私が未来から顔を離すと、彼女の頬は赤くなっており、吐息が少し荒れていた。言わずとも、彼女の想いに私は気付いた。


 私はもう一度未来の顔に近付き、彼女へ沈んでいく。果ての見えない彼女の渇望を満たす為に。 

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