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7

あれから、フィリアは2週間に1回のペースで遊びにくる様になって半年が過ぎた。

すっかり私とアルムとも打ち解けて、フィリアが楽しそうにしていることが増えた気がする。

ゲームで言っていた事、叶えてあげられてるかな。

フィリアが、私達の事友達だと思ってくれてたいいな。

コンコンとドアをノックする音が聞こえ、ラヴィが“旦那様がお呼びです。”と、声をかける。

“分かったわ、ありがとう。”と、返事をしてドアを開ければスラリとした長身に燕尾服に身を包んだラヴィが敬礼する。

「ねぇ、ラヴィ。前から言っているけど、誰もいない時はその畏まった態度やめてって言ってるじゃない。」

「そう申されましても、規則ですので。申し訳ございません。」

申し訳ございませんなんて少しも思っていない涼しい顔でラヴィはそう言った。

「昔はもっと砕けた感じだったのに、どうしてそんなんになっちゃったのよ!」

「私も当時は若かったものですので。お恥ずかしいです。」

ラヴィの昔の砕けた感じが、年上のヤンチャなお兄ちゃんって感じで凄く好きだったんだけどな。

この家に来たばかりの頃は手のつけられないヤンチャな感じだったのに、今では屋敷の副執事長を任せられてるみたい。

“こちらで旦那様がお待ちです。”と、ラヴィが扉の前で立ち止まる。

重厚な扉をノックすれば、“ラナミアか、入っていいぞ。”と、お父様の声が聞こえた。

ラヴィが静かに扉を開ける。

「ごきげんようお父様。お待たせいたしました。」

貴族の挨拶をする。顔を上げれば、お父様とアルムが居た。

座る様促され、お父様の対面にあるロココ調のソファーに腰掛けた。

「急に呼び出して悪かったね。」

そう、言って優しく笑うお父様に心臓が大きく波打つ。

笑ったお父様本当に素敵。笑った時にできる目尻の皺が愛おしい。生まれてから何回も見てるけど、毎回ときめいてしまう。

そう言えば、前世では漫画やアニメキャラでイケオジキャラばかり推してたっけ。

「実は、私の弟の息子…つまりは君たちの従兄弟を暫くこの屋敷で預かることになった。」

そう言った父は難しい顔を顔をしていた。

基本的にいつも笑顔を浮かべている父がそんな顔をするという事はただならぬ事では無いと私とアルムは生唾を飲み込んだ。


預かることになったのは、叔父の末の息子だという。

叔父の家は馬車で一週間かかるところにあり、私が物心つく前に一度会ったきりだそうだ。もちろん、その息子とは初対面だ。

男5人兄弟の末っ子ということで、周囲から甘やかされて育った為手のつけられないわがままな暴君息子に育ったらしい。

父が言うに、叔父は自分にも他人にも厳しい堅物らしく、それに育てられた上の兄弟4人も同じ様な感じらしく、その末っ子とは馬が合わず常に冷戦状態らしい。

そして数日前、2番目の兄が末っ子と殺し合い一歩手前の大喧嘩をしたらしく手に負えないから熱りが冷めるまで我が家に置いて欲しいとの事だ。


その話を聞いて私は青ざめた。そんなヤバいやつとこれから暫く過ごすの?

隣のアルムを見たらアルムも同じ様に青ざめていた。

ここは姉としてアルムのためにも断らないと。

「あ、あの…」

私がお父様を呼びかけた時、遠くから子供の騒ぐ声がする。

「どうして僕がこんな遠くのクソ田舎に連れてこられなきゃいけない訳?!ありえないんだけど!!大体、あのクソ兄貴が!!」

え、もしかしてこの声…

声が段々と近づいて来て、扉の前で止まった。

扉のノックの音がして、父が返事をすれば長身のガタイのいい従者の格好をした中年の男性が5歳くらいの少年を左腕に抱えて現れた。

「アドニス様、この様な無礼な格好お許しください。」

ガタイのいい中年の従者は、少年を抱えたまま礼をした。

父はの様子を見て小さくため息をついた。

「久しぶりだなアレック。気にしないでくれ、その様子だと相当暴れたんだろう。ご苦労だった。」

どうやらその男はアレックと言うらしく、父と顔見知りの所を見ると叔父の家の従者の様だ。

父に苦労を労られた従者のは、少し嬉しそうにしながら頬を撫でた。

よく見ると頬が赤く腫れていて、きっと少年が暴れて殴られたのだろう。

「ルイ様、ご挨拶を。」

アレックは腕に抱えていた少年を床に下ろして、優しい声色で語りかけた。


先程まで、従者顔を埋めていて後頭部しか解らなかったが、猫っ毛のふわふわとしたブロンドの髪にきめ細かい白い柔らかそうな肌、そしてほんのりとサーモンピンクの頬。

なにより、チワワのように大きくクリクリのピンク色の瞳はまるで等身大の人形の様だった。 

こんな可愛らしい子が凶暴な訳ない。何かの間違いだろう。さっき、廊下から聞こえていた声も私の聞き間違いだったのかもしれない。

きっと、可愛すぎて兄に妬まれて濡れ衣を被らられたのだろう。可哀想に、短い間だが私が可愛がってあげよう。きっと楽しい毎日になるはずだ。

そんな、人形の様な少年は不満そうな顔をしながら私とアルムを指差してこう言い放った。


「ジロジロ見てんじゃねーよ、ブスとチビ。」


前言撤回、最悪な毎日になりそう。









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