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サマースクールは主にレクリエーションを行い、その他魔法に関する実験やダンスレッスン、アート作成など幅広く行う。

毎年、開催地が違い内容もその土地に合わせたものを行うらしく、今年は海をメインにしたレクリエーションを行うらしくとても楽しみである。新しく水着も買ってもらえたし早く泳ぎたいな。

初日の今日は宿泊しているホテルの大広間でサマースクールの概要説明と自己紹介と参加者と仲良くなるためにゲーム形式のグループワークが行われる。

概要説明は1時間ぐらいあって、眠気に耐えるのが必死だった。

たまに、意識が飛んで隣に座るフィリアの肩にもたれかかってしまい、リラから暗殺されそうな視線を向けられた。

やっと、概要説明が終わり30分の休憩が入る。

眠すぎてマジでしんどかった。昔からこう言う座学みたいのは眠気が襲って来てまともに聴いてられた試しがない。

「昨日は眠れなかったのですか?」

隣に触るフィリアが心配そうに聞く。

「いえ、そう言うわけでは無くずっと座っていると眠くなってしまって。」

船を漕いでたの流石に見られてたか、恥ずかしい!

恥ずかしくて咄嗟に右手で左側の髪を触る。

「失礼いたします。」

そう、高く大きな声が私とフィリアの間に割り込んだ。

声の方を見れば、同い年くらいの頭に大きなピンク色のリボンに少し昔の少女漫画の様な見事な縦ロールをした気の強そうな少女とその取り巻きが数人フィリアとその隣のリラの前に立っていた。

「お初にお目にかかります、リラ様、フィリア様。私、レイミール家次女のエミリアと申します。この度はお二人と同じ時を過ごせることを楽しみにしております。」

そう言って、王子達を前にキラキラと目を輝かせた令嬢たちは挨拶をする。

このサマースクールには表向きは“貴族の子供達に自然と触れ合う非日常の冒険を”がテーマだがその、裏の目的は“王族・貴族同士のコネクション作り“だ。

私みたいに表向きのテーマに惹かれて純粋に参加してる子供もいるがそれは一握りである。

このスクールは“王族”が主催しており、王族の関係者が毎年参加する。大体は一部プログラムを一緒に行う程度だが、対象年齢に合う子供がいる場合、その子供は間違いなく参加する。

その為、王族と繋がりを作りたい貴族の親達がこぞって子供達をコネ作りのために参加させるのだ。

リラに関しては、先日婚約者と婚約破棄をしたばかりで婚約者の座が空いており令嬢たちも必死にアピールをしている。

気が強そうな令嬢達とリラとフィリアが軽く雑談した後、“それでは”と、令嬢達が挨拶し立ち去る時、私は縦ロールの令嬢と目が合えば見下す様な目をした後に鼻で笑われ、縦ロールを手で払い靡かせる。

“こんなちんちくりんが婚約者なんて、いつでもその座を奪えるわね。牽制しに来て損したわ。”と、目で語っていた。

ななななな、何よアイツ!!!!!!?

その後、また令嬢達が現れリラとフィリアに挨拶をする。

そんなことを気にせず、私はさっきの縦ロールに呪いをかける。

どうか、海に行った時あの縦ロールが蟹に挟まれます様に。

南無南無南無南無南無南無




令嬢達があれからひっきりなしに来て、もうすぐ休憩時間も終わりに差し掛かった頃。今までの自信満々の令嬢達とは違い大人しそうな令嬢がやってきた。

赤色の髪に黄緑色の瞳の少女は眉を吊り下げ視線は下を向いていて少し震えていた。

「あ、あの」

「はい、では次のプログラムを始めますのでご自身の席についてください。」

彼女が何か言いかけた時に、このスクールの代表者である男が休憩の終わりを告げる。

彼女は顔をみるみる真っ赤にして“失礼いたします。”と、立ち去ってしまった。

なんだかりんごみたいで可愛いな。心の名前彼女をりんごちゃんと名付けた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日になり、今日は海でのレクリエーション。

砂浜をスキップする。踏み込めば沈む砂の感覚や寄せては返す波の音。エメラルドグリーンの水面がキラキラと光を反射する。

午前は砂浜でビーチバレーとビーチフラッグをした。

ビーチバレーは男女ペアになり行い、私はくじ引きの結果リラとペアになった。はじめこそ、リラの圧に怯えていたがお互い感覚派のところが噛み合い優勝することができた。“なかなかやるじゃん。”と、最後ハイタッチをしてくれたのは嬉しかった。

ビーチフラッグは男女別に分かれて行われた。

令嬢たちはやる気のないと言うか“令嬢なのに走ったりするのははしたない。”と、品を気にする人が多くほぼ独壇場で私が優勝した。何をするにも全力が私のモットーだからね。

男子の部の決勝らリラとフィリアで、僅差でリラが勝ち大盛り上がりで幕を閉じた。

ビーチ近くにあるレストランでランチを食べた後、お待ちかねの海でのレクリエーション。

やっと海に入れるのね!早く泳ぎたいわ。

ボートで少し沖の洞窟まで行き、そこで自由時間になるらしい。

ボートに乗り込み、ボートをジェットスキーに似た乗り物で引っ張り動き出す。

「風が気持ちいですわね!」

フィリアとリラに話しかければ、2人とも楽しそうに頷く。

いつもしっかりしていて大人っぽい2人が何だか年相応の笑顔を見せていて可愛らしく思えた。

あっという間に洞窟に到着する。洞窟の中は、所々太陽光が差し込んでいてその光が海を反射してエメラルドグリーンに発光している様に見える。

その光景に、先ほどまでリラとフィリアの隣を奪い合い騒いでいた令嬢たちも息を呑む。

こんなに綺麗な光景、前世でも今世でも初めてだわ。

アルムとルイにもこの光景見せてあげたかったわ。

しばらく洞窟をガイドさんと探索した後、自由時間になった。

私は一目散に海に飛び込んだ。

冷たい温度に波に揺られる感覚。最高!

令嬢はおろか男子たちも誰も海に飛び込んでおらず、いきなり飛び込んだ私に皆目を見開いた。

でも、そんな事気にならない。だって、この土地についてから3日我慢したんだもん。

私は今までの欲望を解放する様に思いっきり泳いだ。



しばらく経って、泳ぎ疲れて波に揺られるがまま浮いていた私にリラが声をかける。

どうしたのかと思えば、令嬢たちから逃げてきたらしい。

「フィリア様は置いてきてしまってもいいのですか?」

陸で令嬢たちに囲まれ、少し困った様に対応するフィリアを見る。

「とりあえず、時間経ったら助けに行くけど少し休ませて欲しい。」

“あー、疲れた…”と、ぐったりするのを見るに相当お疲れな様だ。

あ、そうだ!

私は海に潜るとお目当てのものを見つけ、それを手に取り浮上する。

「リラ様!お疲れの時はこれですわ!」

そう言って、リラにそれを突き出す。

それを見たリラはギョッとし私から少し距離をとった。

「お、お前それ…なんで!」

「なんでって、疲れた時にいいって聞いたことありましたので!」

「そんなの聞いた事ないわ!なんでナマコなんだよ!」

私の手に持ったナマコを頑なに受け取ろうとしないリラ。

なんでよ、リラを気遣って取ってきたのに!

前世で、ぷにぷにとした感触のスクイーズが疲れやストレス解消にいいって聞いたことがあるから、それに似た感触のナマコを渡そうとしたのに。

“受け取ってください!”“嫌だ!”の押し問答をしてるとリラの顔色が変わる。不思議に思っていると、握っていたナマコの感触が変わっていることに気がつきその手を見れば、ぐったりとしながら内臓を吐き出しているナマコが握られてた。

やばい、力入れすぎた…

慣れてる私でも少し引くんだもん、王子様なんてドン引きするよな。

私はそっと、何事もなかったかの様にナマコを海にリリースする。

吐き出す様な声が聞こえ、その声の方を見れば、リラが堪えきれずに笑い出す。

「あんなもん、普通令嬢が平気で持つかよ!しかもあれで疲れを癒すって意味わからねーし!」

突然の爆笑に思わず口を開けて固まる。

1.2分笑い続けたリラはお腹を押さえながら息をあげていた。

「こんなに笑ったの久しぶりだわ。」

「楽しんでいただけた様でよかったですわ。」

リラは目に浮かべた涙を拭い、青い瞳で私を見る。

「ラナミア嬢、疑って無礼な態度をとって申し訳なかった。」

そう、リラは頭を下げた。

「そんな、頭を上げてください!気にしてませんから。でも、急にどうされたのですか?」

「2.3日君を見ていて、君にフィリアを陥れるの無理だって分かった。計画性とか皆無な行動ばっかしてるし。それに、そもそも君には王族の権力に対する執着が感じられなかったから敵ではないのかなって感じたからさ。」

「なんか、貶されている様に感じましたが…。私が演技してるって可能性は考えなかったのですか?」

「はは、それはないね。俺を欺ける演技だとしたら君は今すぐ劇団に入った方がいいよ。」

「なんか、私馬鹿にされてませんか?」

「はは、どうかな。」

リラは楽しそうに笑う。絶対に馬鹿にされてる。

頬を膨らませていれば、リラにその頬を両手で潰された。

「ラナミア嬢、もしよければ俺と友人になってくれないか?」

そう、微笑みかけながら私に手を差し出した。

「勿論ですわ!リラ様。」

そう言って、リラの手を取り微笑み返す。

「あ、ナマコ触った手で触ってしまったのですが大丈夫ですか?」

ぬちゃりとした感触にリラから一瞬で手を振り払われる。

「いや、無理だからふざけるな!」

そう、言いながら逃げるリラをさっきのバカにされたお返しとばかりに追いかけ回した。


読んでいただきありがとうございます。

続きが遅くなってすみません。読んでいただけたら嬉しいです。

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