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あれから、数日経って今私は海の街、ラメールに滞在している。

その理由は、以前から申し込んでいた王国主催の8歳〜10歳までの上位貴族の子供が参加できるサマースクールに参加するためだ。

2週間の滞在だけど、親元を離れて(使用人は数人ついて来てるけど)1人で過ごすのは転生して初めてだからワクワクとドキドキだ。

滞在中は王族御用達の高級ホテルにお泊まりだし、ご飯は美味しいし最高だわ!

出窓を開ければ、一気に潮風が入り込む。潮の香りが懐かしい。前世は海と山に囲まれた所で育ったから、潮の香りは毎日嗅いでいた。軽く伸びをして、“よし!”と、気合を入れる。

サマースクールは明日からで、サマースクールに同じく参加するフィリアとリラが私の部屋に遊びに来るそうだ。

リラが一緒に行きたいと言っていると聞いた時は、パーティーの日に監視すると言っていた言葉を思い出した。フィリアとは変な事何もしてないんだけどね。

とりあえず、リラも来るなら今日はおもてなしにお菓子でも作っちゃおうかな!

家だと、厨房に入るとお母様とラヴィから怒られちゃうからね。

お菓子作れる令嬢とかお淑やかな令嬢をアピールするチャンスだわ。

お淑やかな令嬢ならフィリアに害を加えなさそうって思ってもらえそうだし、話の種にもなって仲良くなれるかもしれない!

“このお菓子どのお店のものですか?”

“そちら、私が作ったものですの。”

“素晴らしいです。どの様に作ったのですか?”

こんな感じで話題を作って話を広げてけば…よし!

幸い、宿泊している部屋にはキッチンとオーブンついてるしね!

厨房で道具と材料を貰ってこよう。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「お嬢様…」

ラヴィが眉間に皺を寄せ、鋭い目つきで私を見下ろす。

「な、何かしらラヴィ?」

「お嬢様は厨房に絶対に入らないでくださいと前々から言ってありましたよね?」

「えぇ、入ってないわよ!ここ、キッチンだもの!」

「そう言う問題では無いのです。この惨状を見てください。」

そう、ラヴィが指を刺した方を見れば、水浸しと粉まみれのキッチンの床に、黒い煙が出るオーブン、あちこちに散乱した材料たち。

お世辞にも綺麗なキッチンとは言えない惨状だった。

“あー、クソ…目を離したらすぐこれだ。”と、ラヴィは聞こえないくらいの小さな声で前髪を掻き上げながらそう呟いた。

「だって…」

体が小さくて思う様に動けなかったんだもん。

「だってではありません。これから王子たちがいらっしゃるのにどうするのですか!」

そう、ラヴィが言えば部屋のドアがノックされ“ラナミア、居ますか?”と、フィリアがドア越しに話しかけてくる。

突然のことにパニックになり固まる私とラヴィ。

やばい、これを見られたら終わる!

「ラナミア、居ないのですか?あれ、開いてる。入りますよ。」

ドアのノブが下がり、呆気なくドアが開かれる。

部屋に入ってきたフィリアとリラはその様子を見て目を丸くした。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「失礼いたしました、お見苦しい所をお見せしてしまって。」

そう、頭を小さく下げる。

「ちょっとびっくりしましたが、大丈夫ですので気にしないで下さい。それより、お怪我とかありませんか?」

そう、眉を下げながら心配してくれるフィリア。なんて優しい子、天使かよ!

「えぇ、怪我はどこもしていないので大丈夫です。心配していただきありがとうございます。」

そう、笑顔で答えればフィリアの頬が少し赤く染まる。部屋が暑かったかしら。

しかし、気になるのはその隣で笑いを堪えるリラだ。

ちょいちょい吹き出してて、堪えきれていないのだが…

「どうしてあんなことになっていたのですか?」

リラが笑いを堪えながらそう私に聞く。

「いつもとキッチンの勝手が違くて上手くいかなかっただけですの。」

オーブンの具合とか調理器具の位置が違うと上手く効率よくできないものね。キッチンがいつも通りだったら上手くいっていたはずよ。

「いつものキッチンでも変わら無い出来栄えですが…」

「ラヴィ!小声でも聞こえてるから!!」

リラが本格的にツボに入ってむせる。

確かに、屋敷で作った時もプレーンクッキーがブラックココアクッキーになってたけど!

ラヴィは、余計な仕事を増やしたからか意地悪してくるし、あー、もう!!

「ラナミアの作ったお菓子が食べれなくて残念です。また今度、作ってくれたら嬉しいです。」

そう、ティーカップをテーブルの上のソーサに置きながら笑顔で言うフィリアは紛れもなく天使だった。

「任せてください!たくさんご馳走しますわ!さっそく週末にでもリベンジですわ!」

「ちょ、お嬢様、フィリア王子の命にかかわりますのでせめて屋敷で料理長と一緒に作ったものを…」

ラヴィが真っ青な顔をして止めてくるのをいざ知らず、私がフィリアの可愛さにあてられてやる気に満ち溢れていれば、“ちょっと、席を外します。”と、リラが席を立ち私の横を通り過ぎる。

「フィリアに変なもん食わせたら承知しねーからな。」

通り過ぎざまに、リラがドスの効いた小声でそう私の耳元で呟いた。

その瞬間、身体中が凍りつき我にかえる。

お菓子作戦、失敗である。





2日間急にお休みしてすみません。

今日からまた毎日投稿再開します、よろしくお願いします。

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