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ゲーム本編で、主人公が姉枠だったけど今は私がその枠を奪ってしまっている訳で。
ルイは本編と違い、家族と以前より関係は良好になってるし、尊敬している師マーサは生きているし明らかにルイにとってはいい環境になってるから成長時にあそこまで荒まないよね?
それに、私が姉枠で居続ければスリジエのことを好きになる確率が減ってフィリアのライバルが減るんじゃ無い?それって凄くいいわ!私も弟が増えて嬉しいし。
でも、気がかりな事がある。最近、やたらルイが“ラナミアお姉様は僕とずっと一緒にいて下さいね。”と、目を潤ませた上目遣いで言ってくる事だ。このシチュエーションゲームでルイが主人公への恋心を自覚してヤンデレ化する前によく言ってかなったっけ?
まって、このまま行くともしかしてルイに薬漬けにされて監禁されちゃう?!それはマズイわ!フィリアルート最後まで見れないどころかアシストすらできないじゃ無い。
かと言って、ルイを突き放すとあの可愛い上目遣いで悲しそうな顔をしてくるに違いない。その顔に勝てる気全くしない…
ルイを傷つけず何とか恋愛に持って行かない様にするには…
そうだ!あくまでルイは“弟”ってことを強調しよう。
あくまで私たちは姉弟の様な存在って事を摺り込んで行って、姉って印象を強くつける事によりルイも私が恋愛対象から外れるという作戦。誰も傷つかないし、平和的だわ!私って天才!
「フィリア様、本日はお誕生日おめでとうございます。この様な素敵なパーティーにお招きいただきましてありがとうございます。」
今日のためにお母様が選んだ水色のドレスを摘みフィリアに挨拶をする。
今日はフィリアの8歳の誕生日パーティーだ。
フィリアは少し微笑み“ラナミアが来てくれて嬉しいです。”と、言った。
フィリアは元からだが、表情が変わらないので感情が読みにくいが最近は表情が柔らかくなっている様に感じる。
その僅かな変化だが、フィリアが孤独感を感じずに過ごせて居るのかなと嬉しくなる。フィリアがスリジエと結ばれるその日まで側で支えられたらいいな。
フィリアと少し談笑した後、お父様に連れられ色々な方々に挨拶して回った。
王家のパーティーには今回で2回目だけど華やかで気後れしてしまう。社交界デビューして1年経つが礼儀作法が未だにままならずそれだけでどっと疲れる。
「ラナミア大丈夫ですか?」
ぐったりしている私にフィリアが心配そうに話しかける。
「大丈夫ですわ。ちょっと疲れただけですので少し休めば回復しますわ。」
とは言ったものの、慣れないドレスと慣れない靴、仮にも公爵令嬢と第二王子の婚約者という立場は重すぎてそれだけでため息が出る。
それに、まだパーティーは序盤という事が体を重くする。
この後ダンスもあるのか…やり切れるのかな。
以前のパーティーは懇親会で身内ばかりのカジュアルなパーティーだったこともあり、来客もそんなに多くなかった。
今回は、メインが婚約者様だ。私にもそれなりに注目が集まるし、他国からの来客もあり気が抜けない。
帰ってベッドで寝っ転がりながら本でも読みたい。
そんな事をぼーっと考えていると声をかけられる。
「ラナミア嬢、失礼致します。」
その声に振り向けば、見覚えのある少年がいた。
琥珀色の髪を後ろで一つに束ね、優しい顔つきで青い瞳を細め私に微笑む。間違いない、この人はフィリアの兄でこの国の第一王子であるリラ・ヴィオレットで、このゲームの攻略対象だった。
「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。初めまして、私フィリア王子の婚約者で御座いますグルーヴ公爵家長女ラナミア・グルーヴと申します。」
そう、授業で習ったままの挨拶をすれば先ほどと変わらぬ笑顔で“私は第一王子のリラ・ヴィオレットです。これから僕も弟もよろしくね。”と、微笑んで挨拶する。
なぜだろう、普通に微笑んでいる筈なのに目の奥は笑ってはいない。
それは、私が彼の裏の顔を知っているからそう見えるのかも知れない。なんだか変な汗かいてきた。まるで蛇に睨まれたカエルだ。
逃げ出したい衝動に駆られて居ると、優雅なワルツが流れてくる。
「兄様、お話中失礼致します。ダンスの時間になりましたのでラナミアと一曲踊ってきても宜しいでしょうか?」
そう言って、フィリアが自然に私の手を取る。
今日、主役であるフィリアと婚約者である私は一曲目のワルツをホールの中心で踊る事になっている。
「あぁ、そんな時間か。楽しんでおいで。」
そう、リラは微笑んで私たちに手を振る。
タイミングよく逃げられてホッとする。心臓がまだ少しドキドキしてる。
ホールの中心に着いても上の空の私に、フィリアは少し不機嫌そうな顔をしていた。
「フィリア様、私何か気に触る様な事致しましたか?」
「…ラナミアが兄様に会ってから上の空なのが何だか気になってしまいまして。今日は僕の誕生日なので僕のことを見てほしいなんて我儘ですよね。」
少し沈黙の後に、長いまつ毛を伏せながら恥ずかしそうにフィリアは言った。フィリアは普段こう言った甘えることを言い慣れていないからか、耳まで真っ赤にしている。
そんなフィリアが堪らなく可愛いと思った。
そうだよね、今まで皆が兄ばかり見ていたから私もそうなってしまうのではか不安になっちゃったのよね。
「フィリア様、誕生日とか関係なく私はずっとフィリア様のことを見ていますわよ。」
スリジエとくっついた後もその後2人の人生も見ていたいしね。
そう、笑顔で答えるとフィリアも笑顔で返してくれる。
フィリアの笑顔は眩しくて正直心臓に悪い。
今、フィリアに愛慕の視線向けていた令嬢が倒れたわよ。
恐ろしい…さすが、この国1番美貌を持つと言われて居るわ。
3曲何とか踊り終えた私はでクタクタ過ぎて、フィリアに断り休むことにした。私がフィリアの隣から退いた途端に同じ年頃の令嬢から歳が10歳近く離れたお嬢様がフィリアを一気に囲いダンスの争奪戦が繰り広げられていた。
パーティー会場を出たが、会場出てすぐは騒がしい。
疲れ過ぎて誰もいない静かな場所で少しぼーっとしていたいわ。
そう思い、人気のいない方へ進んでいくと小さな庭園に来ていた。
そこには多くはないが色々な花が咲き乱れていて長年大切に手入れをされていた事が伺える。
私は庭園にあった椅子に腰掛け一息ついた。
ため息を着き“疲れたー”と、小さく漏らすと足音が聞こえ、ふとその方を見た。
「ラナミア令嬢。お話があるのですがよろしいでしょうか?」
琥珀色の髪が月明かりで透けてキラキラとしている。
そんな彼を神秘的で綺麗だと感じながら、その感情のない瞳の奥をどこか不気味にも感じていた。
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