アントリオン島の戦い
「そういえば、アントリオン島の戦いっておかしくないか?
わしがいたからあの島に登れたようなものなのに、どうやって昔の人は登ったんだ?」
「さて、どうやって登ったんでしょうね。」
「はあ、知らねえのかよ。」
「知らないんじゃなくて分からないんですわ。アントリオン島の戦いは、史料に詳しく書かれているけれど、なぜか戦った二十人がどうやってその島を登ったのかは一切書かれていないの。」
「じゃあ、どう下ったかも分からないのか。」
「その生き残った二十人は、その島を下らなかったの。」
「?」
「全員、島の中心の穴に身投げしたのよ。戦いに勝った後、その二十人はその島を出ることはなかった。そして、飛行機やらヘリやらができて、その島の調査に入った時、島の穴の底に二十人の人骨が見つかったそうよ。」
「それに怖い話を一つ付け足そうか?」
レモンは私たちの会話に嬉しそうに割り込んできた。
「それから何十年後、そこには豪邸が建てられた。しかし、その豪邸には怪盗が入ってしまった。そして、その数日後、その豪邸に住む人間と連絡が取れなくなったため、警察が調査に入ったそうだ。その調査の結果、その家主とその屋敷に住んでいたとされる女性数十名が島の穴に身を投げていることが分かった。
しかし、ここで不思議なのが、なぜ、島の穴と外の海の二つの身投げする場所があるのにも関わらず、島の穴に身投げする人しかいなかったのでしょう?
さらに、もう一つ付け加えると、アントリオン島の戦いで、島の二十人が守っていた宝石があって、その名前がブルーピリオドっていうらしいよ。」
私は背筋が少し寒くなった。
「結局、あの野郎もあのアマどもも死んじまったのか。なら、いっそ殺しておくべきだったかな。」
「ジャンヌ、殺すなんてはしたないですわよ。」
「お前の流儀には従うけれども、殺せないって言うのはもどかしいなあ。」
「フフフ、ジャンヌ、殺さない楽しみもありますわよ。今回のように、勝手に死んでくれることもあるんですもの。」
「はあ、目の前で死んでくれないと、楽しみなんて分からねえや。
でもよ、デヴィ。わしが言うのもなんだか、野郎が死んだのはどうでもいいとして、あのアマが死んでも何も思わないのか?」
「……何も思いませんわ。しいて言うなら、彼女たちが死んだという喜びだけ。
わたくしは、あなたを盗んできた日から怪盗ですの。つまり、悪党の端くれなんですのよ。」
私は眼帯を右手でなぞって、ジャンヌとの話を終えた。