表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

嫌な隠し部屋

 アントリオン島は、本当にワイングラスのように、真ん中に大きな穴がぽっかりと開いている。その大きな穴の中には、水などは溜まっておらず、底は闇に包まれていて見えない。今、私が立っているグラスの飲み口に当たる部分に大きな屋敷があり、この屋敷が目的の宝石があるらしい。


 まずは帰りのことを考えて、飛行物体を自動で撃ち落とす大砲を壊しておこう。私は屋敷の横に堂々と備え付けられている大砲に向かった。普段はもう少し慎重に行動するのだが、準備に時間がかかってしまい、予告時間まで時間がないのだ。


 しかし、レモンの調べによると、この屋敷にはオンリー家当主のポール一人しかいないらしい。オンリー家は世界有数の金持ちで有名だが、その裏では怪しいこともしていることも有名だ。薬や臓器、人を含むあらゆる動物等悪い奴らがしていそうな商売はあらかたしているという噂だ。


 なので、この屋敷に警察などを入れることができるはずもない。だから、この島の防犯性に賭けて、たった一人で屋敷の中に籠っているらしい。確かにこの島は空路を塞いでしまったら、ナイフ一本で二百メートルある絶壁を登る超人の存在を無視すれば、難攻不落の島だっただろう。


 私はレモンの計画書に従って、大砲の下にある操作盤を操作して、大砲の撃ち落し機能を無効化しておいた。これで帰りの空路は確保された。さて、ブルーピリオドをいただきましょうか。


 ブルーピリオドはポールが身に着けている可能性が高いらしい。確かに一人で宝石を守るなら、自分で身に着けることが最善策と言えるだろう。レモンの調べは、基本間違っていることは少ないので、ポールが身に着けているのだろう。


 つまり、ポールを見つけて、宝石を盗ってしまえば今日の仕事はおしまいと言うことだ。屋敷の中は島の防犯性の高さからか、防犯性に欠けている。いつものような盗人を容赦なく殺すからくり屋敷ではないことは確からしい。


 どうやら、今回はジャンヌがほとんどの仕事を終わらせてしまったようだ。私は屋敷の窓から中を見て、誰もいないことを確認した。その窓を解錠すると、屋敷の中に入った。部屋はたくさんあるので、全て探せば、三十分はかかるだろうか。そうなると、予告時間ギリギリまでかかりそうだ。まあ、ジャンヌが頑張ってくれた分、私も頑張ることにしよう。




 いない。


 屋敷全ての部屋の中をくまなく探したが、人がいない。こういう時はベタではあるが、本棚の裏に隠し部屋があるなんてことを信じてみるしかない。そう思って、建物の構造上一番怪しい部屋の本棚を見つめる。


 本棚の段をよく見てみると、ある段にだけ埃がきれいに掃除されている。私はその段の本をすべて取り出すと、T字の取っ手のようなものが出てきた。私はその取っ手を押したり、ひねったりして見ると、本棚が勝手に横に動き出した。


 本棚が移動すると、本棚の奥に石造りの階段が現れた。階段は闇へと続いていて、先は見えない。そのくらい会談に足を踏み入れる前に、周りを見渡してみると、その為と言わんばかりの懐中電灯がいくつか置かれていた。私はその懐中電灯を一つ拝借して、階段を下ってみることにした。


 懐中電灯で会談の闇の先を照らしてみるが、階段は途中で折り返しになっているようで、踊り場のような場所しか見えなかった。


 私は石造りの階段に足を踏み出すと、石を靴に当たった音が階段の闇の中に反響する。すると、それに反応するように、怯えるような叫び声が闇の中から聞こえてきた。隠れていた家主の声かと思ったが、声は明らかに女性な上に、一人ではなく複数人の声だった。


 私はそのことを不思議に思いながらも、階段を下っていった。階段を下るたびに、叫び声が大きくなるとともに、少しずつ嫌な空気が漂ってくる。腐っているようなつんとするような人間の生物的な匂いのある湿っぽい空気だ。私は嫌な予測をしながら、階段を下っていった。


 階段の踊り場まで降りて、見えなかった階段の先に懐中電灯の光を当てる。


 私は光が当たった先の光景をあまり理解したくなかったが、ただ一つ言えるのは、人がいるべき空間ではなかった。そこには、男は一人もおらず、数十人の女性がいた。皆、目は虚ろで、怯えていた。


 私の存在に気づいた一部の女性がこちらに這いずり寄ってくる。


「……タスケテ……タスケテ……」

 そう言う彼女の口には違和感があった。私は懐中電灯で震える彼女の口を照らしてみて、彼女の唇を指で押し上げ、口の中を覗いてみる。


 ……


「そうしておくと、色々都合が良くてね。」

 私は後ろからの男の声に急いで、振り返って懐中電灯を照らしてみると、レモンの調査書にあった当主のポールの顔とジャンヌの顔があった。私は落ち着いてよく見てみると、ジャンヌのこめかみにポールが持つ銃が突き付けられていていた。ジャンヌが人質に取られていたのだ。


「すまんな。またしくじっちまった。」

「まったくしょうがないですわね。」

 私はスカートの中の銃に手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ