アントリオン島
まず、ナイフで岩肌を切り裂き、指が入る傷をつける。次に、ナイフを腰の鞘に入れ、ナイフを持っていた手を岩の傷に入れる。そして、今入れた手と違う手で、腰のナイフを抜き、岩肌を切り裂く。
このような作業をかれこれ二時間は繰り返している。力に自信のあるわしと言えども、流石に疲れた。それでも、もう島の縁はもう見えている。
わしは手を大きく伸ばして、島の縁に手をかけ、自身の体を引き上げた。
「やっと、着いた。」
地面に大の字に寝そべり、声を出して、そう言った。手のひらを見てみると、乾いた黒い血がずる剥けた指の皮を塗り潰していた。
わしは腰に巻いたロープをほどいて、そのロープを峰が上になるように刀の先に縛った。そして、柄を両手で握り、刀を力の限り上に引き上げた。すると、ロープはとても速いスピードで引き上げられていく。
しばらく、ロープが引き上げられた後、人影が見えた。その人影は空高く打ち上げられた後、地面に着地した。着地した人は、ダイビングスーツを着て、酸素ボンべを背負っていた。
その人は酸素ボンベを下ろし、ダイビングスーツを脱いだ。すると、長いツインテールがぴょこりと出くると、いつものゴスロリ衣装が見えた。
「全くあなたの異次元な体力にはいつも驚かされますわね。」
「これで、わしの仕事は終わりなんだよな。」
「ええ、そこでゆっくり眠っていただいて構いませんわ。」
わしは煙草の箱を取り出して、煙草をくわえた。いつものようにライターで火をつけようとすると、するりとライターが手から滑り落ちた。
「よく頑張りましたわ。」
デヴィは落としたライターを拾って、わしのくわえた煙草の先に火をつけた。そして、デヴィはスカートの白いフリルを細く破き、ポケットから茶色い瓶を取り出した。
「ちゃんと手当しておいてくださいね。瓶の中は傷薬ですの。」
「馬鹿野郎、こんなの大した事ねえよ。煙草ふかして、酒飲めば、治るんだよ。」
「そういうと思いましたわ。では、これも置いておきますわね。わたくしはブルーピリオドを盗んできますわ。それでは、ごきげんよう。」
そう言うとデヴィは、封を開けた缶ビールを置き、オンリー家の屋敷のある方へ走っていった。わしは口元をほころばせ、置かれた缶ビールに手を伸ばした。今度は落とさないように、しっかりと缶を握った。煙草を口から離し、酒を喉に流し込んだ。
わしは缶ビールを地面に置くと、デヴィの用意したフリルと瓶が目に入った。わしはデヴィがもう遠くに行ったことを確認して、瓶にそっと手を伸ばした。そして、中身を手に取り、フリルに塗り付け、怪我をした指に巻きつけた。
「別にもったいないからつけてるだけだからな。」