カーチェイス
「まきびしをお願いしますわ。」
「言われんでもするよ。」
ハンドルの裏側ににあるまきびしのボタンを押した。すると、後ろから追ってきていたパトカーが右に左にハンドルを取られ、他のパトカーにぶつかったり、ガードレールに突っ込んだりしていた。
「何回見ても、この景色は最高だぜ。猿みてえに学ばずに、まんまと引っ掛かりやがってよ。」
「今回はそう簡単じゃないそうですわよ。」
「どういうことだ?」
デヴィは横の窓を指さした。指さした窓の奥には、まきびしを生き残ったパトカーが二、三台走っていた。
「触れたら即パンクのまきびしだぜ。なんで生き残ってんだよ!」
「まだ、マグナムはありまして?」
「ほらよ。」
車の横ポケットに入っているマグナム弾をデヴィに渡した。デヴィはそのマグナム弾を受け取ると、ハンドガンの中に入れた。そして、デヴィは窓を開けると、パトカーのタイヤに照準を合わせ、発砲した。銃弾はタイヤに当たったが、パトカーは速度を落とさずに、真っすぐ走ってきた。
「どうやら、この車と同じくパンクしないタイヤのようですわね。」
「相手の猿じゃねえってことか。どうするよ。デヴィ。運転手を撃っちまえよ。」
「フフッ、それはわたくしの主義に反することは、良く知っているはずですわよ。」
「冗談だよ。じゃあ、わしが出ようか。」
「頼みますわよ。」
デヴィは助手席からアクセルを踏んだ。そして、デヴィと運転を変わった。わしは後ろの席に置いてある日本刀を持ち、後ろのドアを開けた。
「決して、目出し帽を獲ってはいけませんわよ。」
「分かってるよ。じゃあ、行ってくる。」
そう言うと、追ってくるパトカーのボンネットに飛び乗った。わしはボンネットには先を突き立てて、フロントガラスをノックした。
「マッポさんよお。三秒やるから、この車止めちゃくれねえか。」
わしは指を三つ立てて、ゆっくりと一本ずつ指を折っていった。二つ指を折った所で、助手席に座っていた刑事が窓から拳銃を出して、わしを打とうとしてきた。
「交渉決裂だな。」
わしは思い切り刀をボンネットに突き刺した。防弾仕様なのか少し硬かったが、エンジンを突き刺した。刀を引き抜くと、刀身はエンジンオイルで黒みがかった黄色になっていた。車の中では、警察がパニック状態になっていた。わしはついでにフロントガラスを叩き割って、運転手の持つハンドルを思いっきり左に回した。
「マッポさん達、早く車を出た方がいいぜ。まあ、左から出ないように気を付けろよ。」
そう言い残すと、爆発する前にパトカーのボンネットを蹴り上げて、デヴィの車の天井に飛び移り、後部座席に乗り込んだ。
「上手くやったのかしら。」
「ああ、わしの予想では、もうすぐ爆発音と車のブレーキ音と衝突音が聞こえるはずさ。」
そう言った直後、爆発音とブレーキ音、衝突音が聞こえた。
「素晴らしいですわ。」
「デヴィが素直に褒めるなんて、珍しいなあ。」
「あら、わたくしはいつだって素直ですわよ。怪しい殿方にわたくし達の情報をペラペラ喋ったり、勝手に警察に捕まるなんてへまをやらかさなければ、今回はわたくしの足を引っ張らなかったわねと褒めてあげますわよ。」
「まあまあ、あの時のことは根に持つなよ。なんとかなったじゃねえか。」
「根に持ってなどいないですわ。人なら学習しなさいと言っているんですの。あなたの能力は評価しますけれど、そのままじゃいつか足をすくわれますわよ。」
「わしは今しか信じん。過去などすぐに忘れるべきだな。」
わしは適当にデヴィの言葉を受け流した。デヴィは諦めたように、大きなため息をついた。