8.学院生活は充実しています
月岡くんを「私とは合わない人」リストにぶち込んで、なるべく関わりを減らしたことで優奈は月岡くんを「面倒なタイプ」に認定してしまったらしい。おーい、向こうめっちゃいい家のボンボン……。でも私の味方でいようとしてくれる友情には感謝します。優奈のそういうとこ、しゅき!
そういえば、魔法適性検査の結果が出た。基本魔法の強さとか発現させるまでのタイム、的に当てる正確さ、魔法の解析能力等さまざまな項目があるんだけど、私が際立って高いのは魔法発現の速さと解析能力だ。
発現の速さに関しては私のユニークスキルも関わっているので一花ちゃんほどではないにしろ予想通りだ。解析能力はちょっと驚いたけど研究者向きな能力なので有り難がっておく。
ぶっちぎり適性Sランクを叩き出した私はそれでも「ふん、小鳥遊のくせにその程度か」と勝手に私のデータを覗き見たボンボンに言われるのだった。
…さっきちらっと見えたけどコントロールがC +だったので私に絡むより鍛錬しろ。マジで。コントロール関連が一番危ないんだぞ見ろ勇樹くんが暴走した時の様子を!!
あ、陽玲のデータだから見せられないんだった……。中等部にいた時は見れたんだよ。今は令月の生徒なのでそれは見せられませんよね。反省。
勇樹くんの暴走データは本当にヤバい。原作でも結構アレだったけど、そこそこ強い相手から取り込んだ魔法とかを主人公特有の巨大魔力でぶん回すの生ける凶器としか言いようがないよ。
ちなみに、一花ちゃんに頼まれて応援に行っただけなのに巻き込まれて当時伸ばしてた髪が片側だけ肩くらいの長さになりました。その晩は泣いた。
適性検査を踏まえて、実習教科も増えた。それに加えて勉強研究鍛錬。能力の維持・発展にはそれなりに労力をかけなければいけない。天才でないのならなおのことだ。
…そんなことを言っているけれど、身近に一花ちゃんっていう超天才がいたから自分のことを天才でないと思ってるけど、成績とかを見るに、普通に考えると私もそこそこすごいんじゃないかな?いや、でも世界は広いから本当にそうかはわからないけど。
そんな日々の間に、少しだけ八神先輩を遠くから観ちゃったりなんかする。目立つので見つけるのは簡単だし、YES イケメン、NO タッチの精神である。
推しにご迷惑をおかけするのは私の本意ではないので!美しいご尊顔を近くで拝見できるだけでこの学校に入った意味はあった。私、ナイス判断である。
あと、なぜか最近、私が通りかかった瞬間に周囲のお姉様方が「目があったわ!」「いいえ!私によ!!」と漫画とかアニメの女子みたいな反応してる。いくらなんでも頻度多くない?おかしい。
「きゃー!八神様ぁ!!」
「日上様、頑張ってー!!」
推しの名前が聞こえたのでそっと窓の外を見ると、体育の授業前にクラスメイトと軽く運動をしていたようだ。バスケかな?日上先輩も一緒である。
この世界において人気スポーツNo. 1は魔法も使って競技を行うマジックストライクボールだ。だけど、専用競技場がないとできない。なので、授業前のちょっとしたお遊びとか、場所が空いてない場合の体育とかだと、普通にサッカーしたりバスケしたりしている。魔法を使う競技の授業もあるけど、競技系って良くも悪くも白熱するので、魔法の事故起こったらヤバいっていうこともあって、やっぱり専用競技場でしか許可されていない。
というわけで、ダンクする日上先輩とか、華麗に3Pシュート決める八神先輩とかがみれちゃったりする。そしてそのたびに悲鳴が上がる。日上先輩は煩わしそうにしていて声の方を振り向きもしないけれど、その日はたまたま、八神先輩がこちらに向かって笑顔で手を振った。意識が飛ぶとこだった。あまりにも格好良すぎて。
そんな充実した学院生活を送っているけれど、合間にちょいちょい絡んでくる月岡くんはなんなんだろう?小鳥遊への拘り強すぎない?
月岡ってそもそも巫子様的な家じゃなかったっけ?詳しくは知らないけど。
でも珍しく口を開いた宮藤くんに「怒りが最高に達した時の対応を参考までにお伺いしてもよろしいか」と聞かれたので「お父さんに泣きつく」と言った後からだいぶ態度が、これでも、マシになっているのだ。
いや、あんまり家の名前出されるからお父さんに電話で報告自体は入れてるんだけど。
めちゃくちゃ困惑した声で、「そんな子には見えなかったんだけどなぁ。調べてみるよ」と言っていた。
お父さん忙しいのに手を煩わせて申し訳ない。とりあえず忙しいのにごめんねっていうと、一瞬の間の後に一花もこれくらい気遣ってくれればとギリギリきこえるくらいの呟きが聞こえた。
一花ちゃん何やってんの。