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7.何だか絡まれています



寮の食事がとんでもなく美味しい。

優奈に「これ毎日なのかな?」と期待しながら聞けば、「そうね」と微笑まれた。月岡くんは「小鳥遊の娘が嘆かわしい」と溜息を吐いていた。やっぱり、お金持ちっていうのはシェフとか雇うものなのかな!?

うちは小鳥遊という名の庶民派なので。主に父が。あと、両親共に機密事項抱えてるっぽくて家に人入れるの嫌がってるからお手伝いさんとか雇ってないんだよね。まぁ、その分警備費にめちゃくちゃお金かけてるけど。


警備費にお金かけても身内からの被害があまり防げないのは辛いとこだ。



「二菜のところはお母様とお姉様関連以外はほとんど一般の家庭と変わらない生活を送っているものね」



淑女が如く微笑む猫被り系美少女優奈。

なんというか、お父さんの仕事の機密的な事もあるけど、男女問わず料理や洗濯、掃除なども一通りできた方が良い、というお父さんの考えも大いに作用している。

曰く、「戦場ではできることの多い人間の方が生き残る可能性が上がる」との事だ。でもこれ戦場で役に立つかは知らない。

なお、お母さんと一花ちゃん関連以外というのは、この二人は料理器具をもつと食材を爆発させるというよくわからない能力を持っているので該当しないだけだ。これも立派な魔法だと思ってしまうレベル。



「ふぅん、小鳥遊さんの家ってそんなに裕福ではないのね」


「いや、基本裕福だよ。生活関連は本当に親の仕事関連と教育方針だから」



でないと魔法学校の入学金授業料その他諸々+寄付金を一括でぽーんと払えないしね。ついでに私の研究資金なんかも出してくれてるので本当にお金はある。そう見えないだけで。

信用してるのかしてないのかわからない顔をした桜井さんだった。


翌日から授業が始まった。座学がほとんどで、再来週の魔法適性検査で実技教科が決まるのでそれまでは魔法実技はない。体育はある。優奈は「何故、魔法使いなのに体力が必要なのかしら……!」と体育を憎んでいるけれど、お父さん曰く「健常な肉体と精神あってこその魔法だから、日頃から体力作りを怠らないように」との事である。実はお母さんも体力はある。説得力がすごい。


部活動は引き続き魔道具研究部にした。作りたいものの研究も続けたいのでちょうど良かったのもある。


私が作りたいのは「魔法の補助アイテム」である。

魔法のブーストをしたり、単純に扱いやすくするアイテムを作りたいなぁと思っているのだが、なかなか難しい。最近の論文では「自分のものを作ることは可能であるが、他人の適性を見てアイテムを作成するのは危険度が高い」とされている。要するに、自分の魔力の変化は自身で分かりやすく、我慢もする必要がないため危険だと思ったらすぐ止められるが、他人のものを作ろうとするとその判断が難しくなる……らしい。というかものすごく婉曲に「我慢を美徳とするバカが多いがそんなことしたら適正値出ないに決まってんだろバーーーーカ!!」って書いてある。「これだから魔法使いなんて結局自分しか信用できね〜んだよ」という気持ちが滲み出た論文だ。まぁ……書いたの母方の叔父さんなんだけど。

普段の言動を思い出すからそう読めるだけかもしれない。


というわけでとりあえず自分のものから試すことにしている。あと能力値を細かく示す装置を調整するのも忘れないようにしないといけない。

中学の時の研究テーマがより緻密なデータを取る方法だったのだが、出来上がったものが身の周りでド否定された。褒めてくれたのは三月くんと優奈だけである。この二人には役に立ったらしい。個人的には結構良い出来だったので改良しつつ使用している。



「小鳥遊さん?やっぱりここにいた。なんでこんなところに?」


「何でって、私は中学から研究部を志望してるけど」



桜井くんが入ってきたのでそう返せば、「小鳥遊さんなら実践魔法関連の部活動をするのかなって思ったんだ」なんてよく分からないことを言われた。



「ああいう部活は一花ちゃんと比べられてめちゃくちゃ嫌な思いするから初めっから候補から外してるんだよね。あんな埒外の天才と比較するのなんて、普通人の心があったらできないと思うんだけど」



むしろ、グレずに健全に生きているので褒めて欲しいものである。



「それはともかく、桜井くんも入部するの?」

「いや、僕は……」

「Sクラスになる者が研究室に閉じ籠もるなど嘆かわしい」



怖い顔をしながら部室へ入ってきたのは月岡くんとそのお付きの宮藤くんだった。

二人を見ながら「なるほどこういう人らがいる環境だと叔父様もめちゃくちゃ婉曲にでも文句を論文にぶつけたくなるわ」と納得した。



「しかも<小鳥遊>……才能で立ち回ってきた一族の娘がそれとはな」


「言っとくけど、月岡くんと違って小鳥遊家としては我が家は分家だからね」


「あの姉を持ちながらよくそんなことが言える。せめて姉の邪魔にならぬよう立ち回るべきだろう」


「あ、人の心が無いタイプの人だったかぁ……」



うちのお父さんと一花ちゃんの才能がどれだけ素晴らしいかは知らんが、それを持たない下の子にまでそういうことをいうのは心底やめてほしい。

「コイツの言うことは右から左に流すべき」リストに月岡くんを秒で入れて桜井くんを見た。



「コレを連れてきたの、君?」


「た、小鳥遊さんがここに入っていったって教えたら案内を頼まれたから……」


「ふーん……」



巻き込むタイプもどうかと思うけど流され過ぎるのもどうかなーって。言ったら八つ当たりになるから言わないけど。



「なんでもいいけど、邪魔だから出てってほしい」



とりあえず笑みを作って出口を指差す。

戦いが強いだけが才能じゃないでしょうよ。君たちいつか痛い目見るからな!!

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