5.入学しました
そして、現在……───
4月、私は令月魔法学院高等部へ入学する。
ラノベの第二部開始時期だけれど、私は原作とは違う道を歩んでいる。
負け確定ヒロインなんてやってるくらいなら|八神終夜(推し)の顔を見ていたい!!ミーハーで申し訳ない。でもアイドルの追っかけみたいな気持ちなので怒らないでほしい。関わるつもりはない。まぁでも在学中に落とし物を拾って届けたりとかくらいはあるといいなって思ってしまう。
「二菜、行くよ」
「はーい!」
優奈に呼ばれて隣に並んだ。令月は入学式で並ぶ順番が成績順なんだって。私は三番目、優奈はその隣の二番目に座る。
一番は月岡新という男子生徒だ。目を見張るほどの美少年である。背は160を少し超えたくらいかもしれない。さらさらとした金の髪は月の光を反射したような美しさだ。流石、名家の御子息は佇まいが違う。
……私は小鳥遊の子だけど、あっちのお家が認めてたの一花ちゃんだけだから佇まい云々はノーカンでいい?
私の隣には宮藤知也という結構ガッチリした感じの男子がいた。美しいというよりはカッコいい男子って感じ。武道でも嗜んでいそうだ。短めの黒髪で軍人のような雰囲気がある。背はすでに180を超えているのではないだろうか?まだ高1なので更に伸びそう。
そしてその彼の隣には桜井咲良という美少女がいる。
薄桃色の髪の華やかな雰囲気で思わず触れたくなるような女性らしい体つきをしている。桜井家といえば、数年前に貿易で財を成した企業の家だったかと思う。
優奈も美しい群青の髪なので、おそらく前に並んだ私たち1年五人は髪の色だけでもめちゃくちゃ目立つ。私は千歳緑?に似ているし。赤がいたら戦隊モノみたいだった。赤髪にはあまりいい思い出がないんだけどね。
勇樹くんが赤イメージなのだ。ついでに一花ちゃんはピンクだ。桜井さんより濃い感じのやつ。姉妹なのになぜカラーリングが違うのか?正ヒロインと不遇ヒロインの差なんだろうか……。でも、お母さん緑系でお父さん青系なのになんで一花ちゃんピンクなんだろう。お父さんの親戚あんまり見たことないからわかんないけど、従兄弟は青系だった気がする。ちなみに三月くんは紺です。
そんなことを考えていれば、入学式が始まった。校長先生の挨拶、先生たちの紹介の後に現れたのが日上光一先輩。
優奈が好みだと言った先輩だ。作者いわく皇帝系生徒会長である。黄色の髪は太陽を思わせる。その圧倒的な存在感に新入生の殆どが息を呑んだ。
後ろに控えている美貌の儚い系青年は銀髪で、物語にある精霊とかのようだ。人間味が薄い。こんなに美しい男の人って芸能人でもそうはいないと思う。写真を撮らせて欲しい。かの人が私の推し、八神終夜である。
「今日という良き日に、我が令月魔法学院高等部へ新たな仲間を迎えられた事を喜ばしく思う」
その言葉から始まった挨拶を聞きながら「良い声だなぁ」と感心しつつ学内での禁則事項とかが混じっていたりすると困るのでちゃんと聞いておく。内部進学生でない以上、情報収集もしっかり行わないと痛い目に遭うのはわかり切っている。
とは言っても、一花ちゃんと同じ学校にいるよりはマシだ。
まず、あんなヤバい能力を持つ姉と比べられるし、あんなヤバい能力を持つ姉を持つ以上平均以上の能力を持っていてもなぜか嘲笑の的になるし、勇樹くんはパーソナルスペースが近すぎてイラッッッとする。私は昔の置き去りにされた件を思ったより根に持っている。想定より自分は執念深かった。
でも三月くんには何を言われても許せるので割と恩も覚えているタイプだと思う。
別に一花ちゃんも家族なので嫌いではないけど、他人だったら縁切ってる。何回かちゃんとそう言ったけど、あれ多分本気にしてない。
案の定、外部入学の皆にはとかなんとかの言葉もあったけれど、注意事項に関しては希望者に職員がプリントを配布してくれるそうだ。後でもらいに行こう。
……今日から寮生活なので先輩とかにやらかすとまずいし。
本気で知らなかったのだけれど、魔法関連の高等学校って寮生活になるものらしい。ラノベでは自宅の描写もあった気がするのだけれどだいぶ記憶も朧げになっているところもあるからどこまで同じかはわからない。
集会後、教室へ移動する。
上位進学者10名はSクラスとやらで、少数精鋭クラスとしてやっていくのが令月方針だとか。来年はまた成績順でクラス編成変わるかもしれないから固定ではないけどね。
引率の教師に促されて席へと座る。席は好きにして良いよ、との事なので遠慮なく優奈の隣へ行った。桜井さんは月岡くんと宮藤くんに追い払われた後、ちょっとチャラ目の男の子の方へ行った。
「それでは、Sクラスの皆。席に座ったな。私は風凪聡太、このクラスの担任を務めることになる。まずは順番に自己紹介をしてもらう。まずは…月岡からだ」
驚いたな。担任まで出身すごい。陽玲も確か一花ちゃんの担任は月岡の家系の人だっけ。
日本に旧家名家はいくつかあれど、その中でも特別な四つの家がある。「花鳥風月」と呼ばれる四家は「花守」「小鳥遊」「風凪」「月岡」。
本来私たちはめちゃくちゃ良い家のお嬢様である。ただ、お父さんもお母さんもそういうのを笠に着るタイプではないし、割と普通の子として育ててくれてるのでそんな感じはしない。ただちょいちょい金にものを言わせる時があるだけだ。
……なんか材料を入れたら料理を錬成してくれる調理用魔道具とかね!(爆発予防なのは言うまでもない)