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【電子書籍化】転生したらラノベヒロインの妹だったので推しの顔を見にライバル校へ行きます。  作者: 雪菊
番外編

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世界の全てだったあなた 2

続・三月くん闇堕ち編



家に帰ってきた三月は疲れたような顔で前髪をかき上げた。

しかしアメジストのような紫の瞳は未だ不思議な魅力を放つ。



気怠げに荷物を置いて水を飲む彼が今さっき両親を殺してきたなんて思う人間はいないだろう。



三月にとって、人間は二菜かそれ以外かに分けられる。


三月は道ならぬ恋をしていた。

生涯叶わないその恋は疎まれ、忌避されるが故に、姉を思いその感情を封じて生きてきた。


それが、こんな形で壊された。

三月は二菜が幸せだと微笑むだけで幸せだったのに。



両親は「今生きている一花と三月を守るために二菜の死を飲み込むしかなかった」と告げた。

それがどうしたというのか。



「じゃあ、俺の為に死んでくれ」



三月はそう、両親に笑いかけた。

その答えに絶望する母にユニークスキルを使うと、父がそれを庇う。


死ぬ順番はどちらでも構わなかったから、そのまま首を分解した。

血を流す父の身体を抱いて泣く母の首を斬って、それを分解した。



自分がどうなっても、三月は二菜の仇をとりたかった。邪魔をするものも諦めた者も、小鳥遊を冠する者も全てが殺戮の対象だった。


この頃になると、三月の復讐心に釣られてのこのこやってきた神は殆どの力を三月に持って行かれて、その力を引き出す為の装置としての機能しか残っていなかった。


小鳥遊家の者達に誤算があったとすれば、揉み消せる筈だった少女の死が招いた数多の死がたった一人の少年によって引き起こされていたことかもしれない。

模倣犯が出たこともあってか、彼の凶行は複数犯だと見られていた。


おまけに、小鳥遊三月は両親の死に対してもきちんと泣いて犯人の逮捕と贖いを大勢の人の前で強く求めてみせた。

誰も彼が犯人だとは思わなかった。



「二菜ちゃんのお味噌汁が飲みたいなぁ」



二菜が使っていた部屋に入り、座り込む。

写真に写ったはにかむような笑顔の二菜を抱きしめた。



「もうすぐだよ」



復讐が終わったその先の未来なんて彼は求めていなかった。

自分も小鳥遊の血を継ぐ以上、全てを殺し尽くした後に死のうと思っている。




夥しい血が流れ、むせ返るような血の臭いが充満する。

妹の首が転がってきたのを見て壱流は「逃がしてやるんだったなぁ」と呟いた。



「こんにちは。いいお天気だね」

「何がいいお天気、だよ。あーあ。可愛い妹が生首だよ」

「人の姉の首を持っていった人間の言葉とは思えないな」



冷たい口調でそう言う三月はある方向に指を指すと、水中で瞳を閉じる事すら許されなかった二菜の頭部が現れる。

痛々しそうにそれを見る三月に壱流は切りかかった。

だが、近づく前にまず足が消えた。



(本当に人間かよ、こいつ)



魔法を使う素振りすら見せなかった。一花と同じ詠唱無視かと一瞬頭を過ったがすぐにそれを打ち消す。



(ユニークスキルで詠唱無しは結構聞く)



ユニークスキルは固有のもの。その効果がどんなものかなんて本人にしかわからない。



「とりあえず、心臓を取って首を潰すんだっけ?」

「しないよ」

「フハ、二菜とおんなじ殺し方して回ってんじゃねぇの?み・つ・き・くん」

「ああ……アレは単純にお前を知る人間を炙り出したかっただけだよ。そんなに楽な殺し方はしない」



そう言って壱流に一瞥もくれずに二菜の首を取り出して抱きしめた。



「『汝、罪ありき。我、報復を望むもの。復讐するは我にあり』」



神だったものが魔力を注がれて悲鳴をあげる。その力は壱流に向かい、彼は闇に包まれる。


神の権能を引き出した三月は水晶に飲み込まれていく壱流を無視してその場を去る。



水晶の中で壱流は自身にとって酷く辛い方法で嬲られ、やがて死ぬだろう。うまくいって誰かが壱流を助け出そうとしても生命力を水晶に奪われて死ぬ。




二菜を取り戻した彼は千住勇樹に止められるまで、一層過激に小鳥遊の血を継ぐ者の命を刈り取って行った。



その戦いにおいて。

最期に負けを認めた彼は、それでも小鳥遊は全て絶やすべきだと一花と勇樹を巻き込んでの自殺を試みる。


そんな彼は最期に最愛の人の姿をした天使を見た。

原作三月くんラスボス化した件

二菜の死によって愛した人を理不尽に失う事になった彼は復讐に取り憑かれる事になります。

それは神すら飲み込むほどの強い感情で、だからこそ彼は主人公に倒されるまで止まる事なく、その手を緩めることはありませんでした。

ラスボス化三月は人としてぶっ壊れてしまっているので正直なところ、小鳥遊が軍部に入り込んでいる事が多いということに起因する軍部のお偉いさんほとんど死んじゃった事件(仮)で国を揺るがしてしまったとか全然考えてません。ただ仇をとりたかっただけ。

最期に「もういいよ。一緒に行こう」と二菜の魂に導かれて三月は二菜と地獄へ行きます。

原作二菜は基本的に守られる立ち位置とスペックでしたが、その彼女が唯一「自分が守るべきもの」だと認識していたのが「弟」でした。それは三月と同じ感情ではなかったけれど。

仇は一応取ってるし、二菜が迎えに来ているので一部作品ファンには「最終的には三月の勝ちでは」とざわざわされるやつ。


今作でも、彼は二菜を思っていますが、理不尽に殺されるとかなければ基本的に理性と常識は持っているタイプなのでどうもなりません。一生独身なだけ。


ちなみに彼は「三月(みつき)」という名前ですが、3月生まれだからではなく、「三」番目の子どもで中秋の明「月」の日に生まれたから、というのが由来。友達によく揶揄われる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりになろうに来たら番外が増えてる…! ありがとうございます!!
[良い点] 二菜が命を狙われた理由と両親の結婚の条件が分かった時点で、何故この親は子供を作った。しかも三人も。やはり一花の親でお花畑の恋愛至上主義だったか。と思ったので、それだったら三月もこうなるのは…
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