51.少し時は過ぎまして
終夜さんは卒業をすると、外国の大学に行って資格の取得を脅威のスピードで取っていった。
私はのんびりとしていたかったのだが、3年生も結局生徒会に入れられ、月岡くんたちと対抗戦に出たりしていた。この時は優勝した。
縁ちゃん(って呼んでくれって言われた)は1年生として入ってきて月岡くんにひっつき回っている。
そして今日もまた月岡くんに怒られてぴぃぴぃと涙も鼻水も出して泣いている。美少女形なしである。でもそんな縁ちゃんが可愛いらしく、溜息をつきながら膝に彼女を乗っけて片手間に本を読んでいるのをよく見る。
宮藤くんは「そういうのは家でやってください」と進言していた。月岡くんは「じゃあ縁をなんとかしてみろ」と言ってどかそうとしたら「ゆかりは絶対離れないんだからあああああ」としがみついていた。宮藤くんは諦めた。
遥先輩は国立大学の医学部に進学し、毎日忙しそうにしている。たまに怪我してないかとかでメールが来る。無事だと返している。
日上先輩も大学は海外へと進んだ。
アメリカで弁護士資格を取るつもりだという。「家もそっち関連だからな。都合がいい」と言っていた。
たまに終夜さんの写真を送ってくれるので感謝の日本食を送り返している。
返礼品を送ったら終夜さんから電話がかかってきた。
「なんで婚約者と親友が僕の写真と日本食で物物交換してるの」
「終夜さんが写真とか送ってくれないからですね。写真でも終夜さんのお顔は美しいです。大変ありがたいです。終夜さんもどんどん私に送ってください」
ちゃんと伝えておいた。「頭が痛い」と言っていたので、風邪に気をつけてほしい。
優奈は穂積くんと正式に婚約を結び、泥棒猫を片っ端から退けているらしい。肝心の穂積くんは優奈にベタ惚れなのであまりにも不毛な戦いである。
その藍川家はというと、宮藤兄と藍川姉が学生結婚をしたとのことである。
藍川姉を親類の悪意とかから守るためにさっさと結婚だけしといて家に旦那が居る状態を作ったら宮藤兄怖さに親類は黙ったらしい。
京月さんは変わらずとのことだ。
お兄さんは企業を上手いこと回しているし、最近テレビ番組のスポンサーなんかもやっているのでよく社名を目にする。
そして、一花ちゃんは魔法の関係ない大学に通いながら、文化研究をしたいと勉強をしているそうだ。今は魔力を完全に封じられてしまっているが、今までよりも穏やかに過ごしているという。
勇樹くんとも普通の恋人のようになっている。神罰によって顔に大きな傷がついたためか、寄ってくる異性が減ったが勇樹くんは変わらず姉を好きだと言っている。
一花ちゃんは本当にこんなに穏やかな生活を送って良いのかと不安に思っているようだが、少しずつ普通の女の子の暮らしに慣れつつある。料理だけはまだできないが。
勇樹くんは防衛大学に入り、準軍人として勉強と任務を必死になってこなす日々だ。正直、姉の分も勇樹くんが国に仕える事で姉は平穏に暮らしているという側面もある。だが、彼はそれでも幸せそうだ。顔合わせまでの邪悪な勇樹くんはなんだったんだろう。
私はその後、国立の魔法大学へと進学することにした。魔道具の研究をするためだ。花守の親類もそこの出身が多い。
たまにする電話が私の受験のお供だった。終夜さんと会いたいが、終夜さんは私のためにいろんな勉強をしてくれているので呼び戻したりはするつもりがない。
いつだって会いたいけれど。




