4.進学先は別にしても良いですよね?
転校した翌年、私は中学のお受験をした。通った。
弟がめちゃくちゃごねて一花ちゃんと別の学校になるように言ってたけど警備の都合上一緒の方がやりやすいのである。却下されていた。
「一花姉さんには護衛付いてるんでしょ?じゃあ巻き込まれないように二菜ちゃんは別の学校に行った方が絶対に安心だよ!」
そう言った弟に一花ちゃんは涙目だった。
それより三月くん、なんで私は「二菜ちゃん」で一花ちゃんは「一花姉さん」なんだ。そこは「二菜姉さん」じゃダメだったのかな!?
ちらっと三月くんに聞いてみたら「二菜ちゃんだって、一花姉さんのこと姉さんって呼んでないでしょ?」と首を傾げられた。あざと可愛い。さすが私の弟。
まぁ、ちゃん付けは親愛の証だと思えばいいかな!
中学に入ったら一花ちゃんは学校のアイドル、マドンナ、女神などの称号をいただいており、私は「小鳥遊さんの妹の割には普通ね」という評価を欲しいままにした。
そんな事を言われながら成績は学年で常にTOP3なので放っておいて欲しい。こっちはめちゃくちゃ頑張って努力をしている。
部活動は魔道具研究部にした。年1のレポートも結構楽しい。
ちなみに一花ちゃんはマジックストライクボール競技部である。魔法を使ってラグビーボールくらいの大きさのボールを奪い合い、相手のゴールにシュートする競技だ。正直言って私も苦手じゃないし一花ちゃんは「一緒にやらない?」と言いたげにチラチラ見ていたんだけど、私は姉に比べられ不憫そうな眼差しで見られるのは勘弁してほしい。そういった環境が確定した環境に、すすんで身を投じるほどドMではなかった。まぁ、あと普通にケガが増えそうで尻込みする。しかも大きいケガ。
そして警護してくれてる人が今ついてる関係で、部活動の時間が重ならない時も帰宅時間を合わせないといけなくなった。待っている間は図書室で勉強をしている。
私にも人がついているらしい。隠れるのが得意なのか顔見たことないけど、お父さんには「二菜はちゃんと守られてくれて偉いな」と褒められた。姉はたまに護衛を撒いているっぽい。道理で「今日は二菜様だけでお帰り頂くことになりました」って青い顔で言う人がいるはずだ。一花ちゃんチートだもんなぁ。護衛の方可哀想。
今の私にとってはそんな一花ちゃんを待ちながらお勉強する時間が大切だったりする。
進学先の高校なのだが、この陽玲学園の高等部ではなく、ライバル校の令月学院の高等部に進みたいのでお勉強を頑張っている。
理由はというと、ラノベ原作における推しがいるのだ。基本的に原作二菜と違って勇樹くんには恋愛的な意味合いではあまり興味がないので、それくらいなら推しの顔を観に行きたい。ミーハーで申し訳ない。
それに、主人公って大抵危険な目に遭うから巻き込まれたくないしね。一花ちゃんだけで巻き込まれてそれなりのケガするのに、勇樹くんも一緒になったらどうなるかわからない。できたら離れたい。
あと私は研究職に興味があるのでそちらの就職率が高いから将来のこと考えると向こうの学校のがいいかなって。
まぁ、研究職に就いてるうちのお母さんは陽玲出身だけど、学校の伝って結構大きいって聞くし堅実にいきたいよね。
そうやって勉強していたある日、水城優奈という女の子と出会った。
「なんでそんなに必死に勉強してるの?」と聞かれたのでちゃんと「好みのイケメンを観賞するために外部受験をするから」と答えておいた。
「馬鹿じゃないの?」
「いやいや、同じ学校で一花ちゃんと永遠に比べられるくらいなら別の学校で好みの顔眺めてた方が億倍マシでしょ」
「……ああ、小鳥遊さんのお姉さんね」
そう苦々しげに呟いた彼女は、その後時々一緒に勉強をする仲になった。
後日、彼女のお兄さんが一花ちゃんに告って玉砕するも取り巻きになった事で「兄さんは女の趣味が悪い」という愚痴を聞くことになる。一花ちゃん、結構な好物件だって原作に書いてあったのだけれど、現実は厳しいのかもしれない。
彼女は一緒に学校見学に行ったところ、勇樹くんの原作第二部におけるライバルになる人が好みだったらしく進学先を内部から、私と一緒の学院へと変更した。ちなみに三月くんも私を追いかけようとしている気配がする。気のせいかもしれないけど。
弟は可愛いので全然きてもらっていいです。大歓迎です。
一花ちゃんが中等部を卒業して、高等部に入ったことで原作がスタートした。
勇樹くんが入学してきたことで、落ちこぼれからの俺TSUEEが始まっている。
魔法には誰でも使える基本魔法と、個人や血統で表出するユニークスキルがある。例えば、一花ちゃんのユニークスキルは「詠唱無視」と小鳥遊家の血統に稀に出る「時空眼」というものだ。
詠唱無視っていうのは必要な詠唱の破棄及び魔法陣がなくても魔力さえ釣り合えば即座に魔法が発動するというチートスキルだ。ヤバい。
更に時空眼っていうのは空間を歪める力を持った魔眼のことだ。こう……時空をグニャっとすることで大木とかも曲がる。ヤバい。
そして勇樹くんのユニークスキルというのが「魔法目録」。ちなみにビジュアルアーツと読むらしい。知らんがな。内容はその目に映し、体験した魔法や経験がユニークスキルで現れた魔法書に刻まれていき、その力を扱えるようになる。という簡単に言えばコピースキルだ。エグい。
こいつら、私たちが必死に習得した内容をパッと見て、あるいは攻撃に当たって習得しちゃうんだよな。相手にするなら最悪。ヤバさとエグさ兼ね備えている。
倒すなら一撃で殺すしかないのでは?流石に姉と幼馴染みを殺害するつもりはないんだけど、おそらくそのつもりで挑まないと持久戦に持ち込まれるほど嫌なヤツ。実際戦うつもりがないので知らないけれど。
学内魔法対決編と言われていた学内での同学年内でのトーナメントで五人一組で出るものがあるんだけど、勇樹くんと小鳥遊の従兄弟だという男子と一花ちゃん含む三人の女子で出場していたが、それはもう酷かった。本当に敵に回したくない。
そして結局色々巻き込まれて大けがするのである。原作では多少ギャグっぽく書かれていたけれど、体験すると恨み言しか出てこない。
受験のそんな時に『色々』あったものだから、比べられたくないでござる、あんなヤバいのと近づきたくないでござると主張したところ両親も担任も私を不憫がってくれて推薦書を用意してくれた。
あ、やっぱりこのポジション不憫なんだ。