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【電子書籍化】転生したらラノベヒロインの妹だったので推しの顔を見にライバル校へ行きます。  作者: 雪菊
3章

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43.あっという間に春休みです




あっという間に春休み。

目の前で楽しそうに私に着物の生地を押し当てているのは婚約者様である。


我が愛しの、国宝レベルに美しい容貌をお持ちになっている婚約者の八神終夜さんは、私の事がちょっとヤバい感じに好きなので、こういう私を飾り立てたりする機会を逃がさない。

イキイキと率先して参加する。


私よりもノリノリなので、「終夜さんに任せとけば変なことにはならないな」と思ってなされるがままである。なお、基本的に本当は他所の男には見せたくないらしい。そこは割とまともな人なので我慢してくれる。


あれから勇樹くんの突撃がなくなったのでめちゃくちゃ平和である。

今までのはなんだったんだろう。

流石にもう諦めてくれたと信じたい。



「こっちとこっちは確定として……何着まで買っていいと言われていたかな。やはり君を最高に飾り立てるのには限界まで買っておくほうがいろんな君を見る事ができていいと思うんだけど」


「選んだその2つでいいんじゃありませんか?どっちにしても着るのって一着でしょう?これ顔合わせの時用ですから」


「そのあとにいろんな集まりに顔を出さないといけない場合に備えて、もう少し仕立てておくべきだよ」



でもそんなにいっぱい買うのはちょっとどうかと思うのでとりあえずその図案半分にしてください。そこからまた選んでください。

とはいえ、立場というものを得てしまったようなので終夜さんの言っていることも尤もだ。流石にその30はやり過ぎだと思うけど。だからとりあえず半分に絞るとこから始めよう?お願いだから。



「指輪以外のアクセサリーももう少し揃えておくべきかな。社交をあまりしないとはいえ、ドレスも何着か用意しておいた方がいいだろうね」


「指輪はダメなんですか?」


「ダメじゃないけど、どうせならここにつける物を僕が用意するまで待っていて欲しい……という僕の我儘だよ」



持ち上げられた左手の薬指にそっと唇を落とされる。

まぁ、本当、なんというか、こういう。この男、本当こういうところである。こういうところが狡い。そして愛しい。愛しいポイントが天元突破している。限界がないのか私の婚約者。



「今度は、君と揃いの物を用意させてもらえると嬉しい」



蕩けるような笑顔を向けられると動悸がするので私心臓発作で死にそうである。あと多分、クリスマスパーティ用に貰ったアクセサリーたまに取り出してにやけているのがバレている。



「仲が良いのは大変喜ばしい事ですが、まずは選んでくださいませ」


「そ、そうですね!」



楓さんに釘を刺されて着物に向き直った。

最終的に全て終夜さんが嬉しそうに選んだ。もう終夜さんが似合うと思うならそれ着せてくれれば良いかなって……私が一番良く思われたい人なわけだし。


なお、その後ろで何着か終夜さんの分も同じ枚数まで注文しておいた私は偉い。顔合わせの時も隣に並ぶのであって困る物じゃないと思うし。

なお、後日「頼みすぎだよ」と終夜さんに怒られた。男用は着回しがきくとか理不尽な事を言ってきたので目一杯駄々をこねた。



「私のために!!私のためにいっぱいいろんな服来てくださいぃ!!この年齢でしか着れない服がこの世にはあるからこの世界にある似合う服全部一回着てください!!」


「無茶を言わないで、二菜」



何故か私がわがまま扱いされた。解せぬ。

終夜さんの顔は世界の宝なのに……。


それと、彼を誘って花守家の地下研究施設にもらった自分の研究室へと向かった。

この地下から出てこない一族の者も多いらしく、花守家ってガチの引きこもりなんだなって思った。廊下を歩いているとヤバげな笑い声とかエキセントリックな叫び声が聞こえる。

実際に話をするとそうでもないんだけど、それを知らない場合「危険な場所に迷い込んでしまった」と思って気が狂うと思う。

いやまぁ、だからそれなりに外に出る私に当主の証が出現した時に皆さま反対せず逆に大喜びしたそうなんだけど。

「当主の仕事とかクソ面倒だし人と関わるくらいならずっとモルモット見てたい」とか叔父さんと従姉妹に言われた時は頭を抱えた。



「相変わらず刺激的な環境だね」


「花守のパラダイスですよ。……そろそろ掃除しろって言って回らないとダメだなコレ」



研究にしか興味がない連中が集まっているためか、家事関連が全くできない…と言うよりやらない人たちが集まっているようで、放っておくと腐海になってしまう。

初めてきた時はなんというか私の精神状態が悪くて、ろくに眠れなかったのもあったけど夜通し掃除して回った。怨霊みたいな「やめてぇぇぇぇ」「綺麗な場所に慣れると辛くなるぅぅぅ」「浄化されてしまうぅぅぅ」という声が響き渡ったものである。妙なテンションで掃除して回ったのでしばらく「悪魔姫」「魔女王」「お嬢魔王様」などよくわからない厨二みたいな名前で呼ばれたけど、どう考えてもあの環境で研究してた彼らの方がよっぽど魔属性である。

なお、現在魘される夜は終夜さんのメンタルセラピーを受けているので比較的マシである。少なくとも夜中に掃除して回ろうとは思わない。いや、ここの掃除はそろそろやりたいけど。

……来週くらい予定入れるか。



私の研究室に招き入れて、とある方にお譲り頂いた刀を見せると、終夜さんは瞳を見開いた。

終夜さんの最適媒介は刀である。刀は神様に祀ることもあるものなので神様関連のお家とかだと割と媒介となる人は多い。あとは鏡とか勾玉、水晶など天然石なんかも多いらしい。



「どこから……」


「終夜さんのお祖母様よりお預かりしました」


「あの方のところ行ったの?よく生きて帰れたね。女性が行くとまず機嫌が悪くなって吹雪くのに」


「終夜さんと婚約してます、ってちゃんと言えば通してもらえました」



まぁ、終夜さんのお祖父様に色目使ったら殺すって言われましたが。宣言されましたが。

でも終夜さん以外に興味があんまりないんだよなぁ。だってほら、私綺麗な顔が非常に好きだけど、終夜さんという最高レベルのお顔が常に側にあるので。これで中身もめちゃくちゃ良いのに私の婚約者で本当に申し訳ない。でも絶対手放せない。



「そう。それで頂いたものを僕用に魔道具として調整してくれた、ってところかな」


「そうです。……とはいえ、元になったものの力が強いせいで、性能が非常に高く、これは来る死亡フラグというものへの保険的な意味合いが強いんですけど」



私が自力で作れる魔道具に比べると、めちゃくちゃ高性能なので、マジで普段使いは別のものにしてもらうことは約束しなければならない。推奨できない。

頂いた、というか下賜していただいたというべきか。でも基本的には、祖父母から孫へのプレゼントというやつなので。



「でも、保険と言うからには君のものをこそ新しくするべきじゃないのかな」


「魔道具関連で自分でやるのはそれ無理案件でした。叔父さんに相談したところ、もうそれやるよりは古来よりある方法で対応しきったほうが確実と助言を頂いたので、これをいくつか加工して身につけてついでにいくつか予備を持っていくことにしました」



できることなら自分でなんとかしたかったけど、まず生き残らなきゃ未来がないしなぁ。終夜さんにお見せするとちょっと引いていた。いや気持ちはわかる。実際にまともにお金を払うと都内高級住宅地一戸建てが買えるような物をサッと出されると私もスペースを背景にした猫ちゃん顔になってしまう。



「タリスマン、こんなに揃えられるものなんだね」


「ここに養子に入ったおかげで作り方がわかったので。元々、花守の一族は攻撃関連よりこういうもの作る方が向いてるんですよ。私も例に漏れず、だったので自重なしのガチで作りました。幸い、一部力をお借りしたお方には婚約者様のご縁もありましたし」


「……なるほど。君も僕をうまく使っているわけだ」


「死んだら終夜さんと結婚式できないので必死なんですよこっちは!!私のためのタキシード姿と黒五つ紋付き羽織袴見るまで死んでも死にきれません。絶対生き残りますよ!!ところで何着着ていただけますか!?」


「君、自分のドレスとか差し置いて僕にタキシードと羽織袴両方、あわよくば数着着せることしか考えていないあたりがブレないよね」



せっかくの美貌の婚約者様なので両方見ないと損である。

なんなら軍服も見たい。軍に入って欲しくはないけど。顔に傷がついても愛せる自信はあるけどできたらそのまま綺麗に年取って欲しい。あと、お母さんみたいに胆力がないので戦場で死なれるかと思うと胃がキリキリして困る。切実にそういうのは困る。めちゃくちゃ困る。後をおわれたくないなら軍人はやめてほしい。



「ありがとう。命をかけても、君を守ってみせるよ」


「絶対命はかけないでくださいねマジで。フリではないですよ本気ですよ、私多分後追っちゃうタイプなので私殺したくなければきちんと一緒に生きてくださいね!!」



そう言えば、幸せそうに微笑んで「じゃあ、君が死んだら僕が地獄の果てまで追いかけるよ」と言うので、「そこは絶対に二人で生き残ろうとか言うとこじゃないんですか!?」と突っ込んでしまった。

あと幸せそうな顔をするな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コレは自分のすべてをかけて改造した刀が終夜さんのところに行ったパターン
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