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【電子書籍化】転生したらラノベヒロインの妹だったので推しの顔を見にライバル校へ行きます。  作者: 雪菊
2章

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37.どこまで甘えても良いのでしょうか?





目を覚ますと、心配そうに私を見つめる終夜さんと目が合った。

あ、ああーっ!!?私もしかして倒れたのかな!?えっでも私もう傷とか完治してるし、魔法回路も直してもらったしそんな要素ないはずなんだけど。

…まぁ、いきなり命の危険感じてパニックにはなったけど。



「良かった。百面相するくらいだから元気だね」


「えっと、私は何があったかわからないんだけど……」


「過呼吸を起こしてしまったんだよ。原因はトラウマとストレスとの事だよ」



そう言われて、倒れた時の事を思い出すと、少し息が苦しくなってくる。



「思い出さなくていい。でも……僕を連れていて良かったでしょう?」


「は、はい」



困ったような顔で微笑む終夜さん。その時に手を握っていてくれていたことに気がついた。相当酷い状態だったのかもしれない。

でも少しだけ、手の温もりが嬉しい。かも。



「今まで大丈夫だったのに、なんで……」


「今までが大丈夫だったからといって、いつも大丈夫なわけではなかっただけだよ。……ショックだったんだろう?」



自分の状態に困惑している私にかけられた言葉に納得をする。


ショックだった。

家族の命すら切り捨てるような態度も、命を奪いかけたというのに謝ったら許してもらえるという根拠のない自信も、許せなかった。

前から許していなかったけど、放っておくと被害が広がるから走り回って、それを仲直りと誤解されていたところはあった。その都度、注意もしていたはずなのに彼女の中には何も残らなかったことを考えると、とても悲しい。


それら全ての感情を、身体はストレスに感じて今この状況になっているのかもしれない。



「もう少し、もう少しだけ側にいてもらってもいいですか?」


「もう少しなんて言わず、いつまでも。君が望む限り」



優しくそう言われると、なんだか無性に泣きたくなった。

寄りかかってもいいのだろうか、甘えてもいいのだろうか。


私も、あんな風にならないだろうか?


どこまで望んでもいいのか、あまり良くわからないけれど。


プロポーズまがいの行動しといて何をって感じだけどね。でも、なんか終夜さんと婚約するなら一生添い遂げる覚悟でいろってみんな言うし……。私も、そうあるべきかなって思ったし。


結局、しばらくしてから花守のお家に用意してもらっている部屋へ戻ってもらった。

いや、一応未婚の男女なので……。夜間に二人きりはちょっと問題があるよね、たぶん。一般的に。



「お嬢様、今よろしいですか」


「はい」



呼びかけられて、入室の許可を出すと、女中の着物を美しく着こなした見た目20代くらいの美女が現れる。……三月くんと同い年の子供いるとか信じられない。見た目が若すぎる。



「小鳥遊の刺客を追い返しました。本当に始末せずに良いのですか?」


「……うん。けれど、花守の皆の命が最優先です。向こうがその気なのであれば遠慮なくやり返してください」


「かしこまりました。ところで、終夜殿は多少お嬢様に気安過ぎはしませんか」


「楓さん、三月くんと同じことを言うんだな……。元々先輩と後輩だしその……あの……お、おお、お慕い、している、ので……?」



顔に上がってきた熱をどうすればいいのか。赤くなっているのがわかるのもまた恥ずかしい。

そんな私を見ながら楓さんは「まぁ……」と微笑ましげな顔をする。



「そのような顔をされると、誠二様と出会われた頃の梢様を思い出しますわ」


「お母さんを……?」


「ええ。顔立ちは父君に似ておりますが、不器用で一生懸命なところは母君似なのやもしれませんね」



だからこそ、苦労させるようなら許しませんがと笑っていない感じの冷たい瞳で言う楓さん。

三月くん曰く、「二菜ちゃんが不幸体質止めて幸せになったら自然に過保護なくなるよ」と言っていたけれど、不幸体質とか言われるとちょっぴり傷つくので止めて欲しい。こっちは常に止めたいと願っている。お参りの時はお賽銭もはずんでいる。無神論者だったけどその辺りは必死にお祈りをしてる。


……好きな人と婚約してるんだからそこまで不幸ではなくない?


心の中でそう自分に問いかけようとしたら、自分よりも先に楓さんが口を開いた。



「命の危険がもう予言されている時点で、我々もお嬢様をお守りすると決めております。ご安心召されませ。わたくしたちが必ずや守り抜いてみせます。終夜殿など、顔の良い盾だと思えば良いのです!」


「私のいないところで何かあったの?」



朝起きたら、戸の前で終夜さんが待ってくれていた。嬉しくて思わず、はにかむように笑った。



「おはよう、二菜」


「おはようございます、終夜さん」



毎日、顔を合わせて当たり前に挨拶ができる。それがこんなにも心温まる事だなんて、初めて知った。

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