28.原作とは違う展開です
最終戦は陽玲と令月での対戦で、原作通りになった。
違うのは私がこっちに居たりだとか、令月のめちゃ強ライバルコンビがコンビではなくクインテットになっていることである。なおかつ、能力の底上げもあります。
すでに怪我しないように、さらに怪我した時の万が一のために持てる力総動員している。詳しくいうと、遥先輩の魔法石多めのご用意をしてます。頼りにしています。お願いします!!
ちなみに藍川くんはトーナメント表の勝ち上がった陽玲の名前を見ながら、「藍川だとややこしいから穂積呼びで統一お願いします!」って言ってた。ので穂積くん呼びになりました。
ちなみに、彼のお姉さん勉強出来なさすぎて留年が近くなってきたらしいんだけど大丈夫だろうか?
誰情報って?壱流くん。壱流くんマジで藍川姉への好感度が低すぎるらしくってめちゃくちゃ長いメール送ってくることあるんだけど、あなたはあなたで一花ちゃんの件どうするの。
正直、一花ちゃんは私を巻き込むけど殺そうとはしないので、いっそ次期当主とかになって頂いて私の安全を担保して欲しい気持ちになってきている。勇樹くんを婿にして良いって言ったら頷くと思うんだ……。
だめ?そもそもこれ言い出したの三月くんなんだけどね。三月くんは賢いなぁ。賢いけど姉を売るような真似は……もしかしてそもそも私が一花ちゃんにされてる……?あれ?
「そろそろ意識をこちらに向けてくれないと困るな」
八神先輩に注意されて、前を向く。
ああもうマジで私現実逃避したい。
一花ちゃんと勇樹くんは悲しげに私を見てるし、他二人は勇樹くんが悲しそうなのでキレてる感じで見てくるし、壱流くんはそれを不快そうに見ている。おまえさては、一花ちゃん含めたそこの四人嫌いだろ!?いや予想がつくことではある。私だって関わる必要がなければ自分からいかない。
「よーし、姉貴は俺が責任持って足を引っ張ります!」
「え……じゃあもしかして一花ちゃんの足を引っ張るの私の役目!?」
「京月の子をリタイアさせたらすぐに手伝うから大丈夫だよ」
「八神先輩もしや神ですか」
なるべく早く来てくださいね、と念を押して配置につく。なお、倒せたりリタイアさせるイメージがわかない。
遥先輩は後ろでバッファーやってくれる。あと、勇樹くんと壱流くんの相手は日上先輩がしてくれるっぽい。
壱流くんニコニコしてるのが怖いんだが?原作では君めちゃくちゃ親友キャラだったんだが?意味がわからないんだが!?
少しつまらなさそうな顔をした彼は、私を見て手を振った後……薄らと笑った。
あー!!やめてください!!
三月くんがガチギレした時と同じ顔だよそれぇ!!誰だよ壱流くんこんなに怒らせたの!勇樹くん?勇樹くんか!?一花ちゃん!?
「ねぇ、あの手の人間キレさせると何やらかすかわからないっていうの私の持論なんですけど、逃げちゃダメ?」
「あの手の人間が誰を指してるか知らないけどダメだろうな」
三月くんはこういう時、多少自分にデメリットがあっても的確にダメージ与えにいくんだけど何するつもりだろう。
その答えは試合開始と同時に出た。
おまけ程度に穂積くんにも魔法は伸びていたが、ガチで潰すつもりだっただろう術式は藍川姉へと伸びており、彼女は試合早々失格になった。
「悪い、ちょっと体調悪くってミスったわ」
申し訳なさそうな顔が妙に白々しい。
これ以上やってもまた誰かを巻き込むかもしれないとか言って彼はすぐにリタイア決めた。唖然とする全員。
何がどうなった!?!?
小鳥遊壱流は小鳥遊家本家の血を引く少年である。容姿もそこそこ整っていたし、小鳥遊家の中でも光る才能を持つ存在であったが、それよりも遥かに話題になる存在がいた。
小鳥遊一花。
彼の父の弟の娘。
従姉妹。
小さい頃に少しだけ会った彼女は表情がコロコロ変わる可愛らしさと、下の妹弟を思いやる少女であったし、頭もよく、面白くなるかもしれない存在として彼の目に映った。
逆に、二菜は大人しく、怪我ばかりする鈍臭い女の子だったので早々に興味を失った。いかにもヤバそうな弟の方は今でも気になっているのだが。
ところが、高校に入って再会してみると、彼女自体の面白さは激減していた。
千住勇樹という男に恋するただの少女……であればまだ良かったが実際に出来上がっていたのは恋にあらゆる力を注ぎ込むことを躊躇わない化け物である。
壱流が花畑を頭に拵えた女にうんざりしていた事も原因かもしれない。
勝手に人を親友扱いしてくる面倒な男にも心底気が滅入る。
小鳥遊壱流は自身も認める享楽主義者である。
楽しいことだけしか考えたくないし、楽しいことしかしたくない。
面白い人間にしか興味がないし、面倒な家の事情なんか知ったことではない。
一花に対してもコンプレックスなんて抱くのも馬鹿馬鹿しい。彼は彼女の良いところなどもはや身体にしか見出せない。美しい女体以上の価値では測れなかった。
千住勇樹に関しては尚のこと考えたくなかった。
正直顔だけ見れば、鏡を見たほうがよっぽどマシな人間が映るし、能力こそ面白いが、先見でもないのに先を知った言動をするのも気持ちが悪い。勝手に親友扱いされるのも苛立たしい。壱
流は、自分のことをろくでなしだと思っていたが、コイツよりは案外普通なのかもしれないと思い直す。
京月と藍川の二人だって、千住に追従するだけで何一つ面白くないし、態度はクソみたいだと思っていた実家の連中よりさらに酷い。自身の母親と同じくらいに醜悪な人間たちを初めて見た、そう考えながらそれでも転校も許されないまま今までやってきた。
そんな時に偶然に出会った小鳥遊二菜の発言は非常に面白かった。
人間を顔の美しさでしか区別しないところなど逆に好感度が高い。それ以外の評価基準で彼女は普通に公平で、他人の意見もきちんと聞くタイプの人間だと壱流は思っている。
小鳥遊一花は周囲を巻き込むことに躊躇がなく、千住勇樹至上主義。
千住勇樹は好みの女を侍らせることが好きな好色男。
藍川統子は脳まで筋肉な暴力バカ女。
京月結女は恋に溺れた悲劇のヒロイン気取りなヤンデレ。
壱流はそのように彼らを理解した。
理解したうえで家の命令で仕方なく親友キャラを演じてみせた。
小鳥遊壱流はチームのメンバーが嫌いである。
彼にとって横暴で話が通じない、もしくは斜め上の理解をする人間を好きにはなれなかった。
小鳥遊壱流は元々享楽主義である
我慢は嫌いだ。
面倒も嫌いだ。
気が長い方でもない。
(もうそろそろ良いだろ。無理。これ以上は数人殺しちゃいそう)
小鳥遊壱流は確かにラノベ内では千住勇樹の理解者で親友であった。
けれどこの世界は現実で、ラノベのように都合がいいものではない。
小鳥遊壱流は全てを他にぶん投げた。
あと、とりあえず咄嗟に引きずり落とせそうな人間も巻き込んでおいた。
(これで留年とかしねぇかなー!ざまぁみろ)
ギャアギャアと五月蝿い女の声を聞きながら誰にもバレないように笑った。
小声で言った「はは、怪獣かよ」という嘲笑込みでの言葉は彼に声をかけていた男の耳にだけ届いた。
彼には別に家への忠誠心とかもないのであった。
そして、運命は変わりつつあった。




