14. 自分のスキルの有効活用をしています
「ま、まぁ……そう言う感じのもので適切な環境を作り出して作ったわけです」
そう言って魔道具のペンを指し示す。いらない話をしてしまったし、いらない事も思い出してしまった。
「基本的にまだ暴走の可能性が捨て切れないので、能力を上げられる値は適性媒介の使用を含めて2割いくかいかないか。その代わりに安定性を重視し、省略術式のスクロールを5つまで展開できるようにしました」
図を提示すると、日上先輩が一つ頷く。
「十分実用性に足る。それで、省略術式は俺たちでも扱えるものか?」
「はい。というか……
一花ちゃんのチートスキルには負けますけど、私のスキルだって割と優秀だと思うんですよね!!」
主に他人もある程度使用できるという意味で!今だって私の作った略式のスクロールとかお父さんが便利だって使ってるもん。一対一であれば負けるかもしれなくても複数人数での戦闘なら私にだって勝ちの目あると思うんですが!!
私のユニークスキルは「術式改変」っていうものだ。
程度にもよるけれど、魔法の短縮詠唱や魔法陣の簡略化……逆に威力を高めることを前提とした長めの詠唱や魔法陣の複雑化なども可能だ。
……流石に短縮詠唱は他の人に使用させるの無理だけど、魔法陣はスクロールやその他媒体の形であれば他人も使用ができる。
「あれと自分を比べる必要はない。しかし……どんなスクロールでも内蔵できるのか?」
「やっぱり物によりますね。あと製作者と使用者のその魔法の習熟度とか。なので、私が使えない魔法はスクロール化できなくて積めないのが悔しいとこです」
だって私のスキルを先輩たちが使えてたらもっといいのできたもの!そこは悔しい。でも一年生なのである程度は仕方がない。
あとこれ使っても、私では一花ちゃんたち並の破壊力を持った攻撃魔法は使えない。三月くん曰く、「二菜ちゃんまで破壊神化しなくて良かった」とのことである。
あの子はちょっと一花ちゃん嫌いすぎる……のか?優奈は「当然では?むしろあんたがおかしいの!」と言っていた。
というか、私よりも先に周囲がブチギレして私が見るときにはガチ凹みしているので、私が精神的におかしくて一花ちゃんを擁護しているとか許してるとか、一花ちゃんを頼りにしているわけではなく、単純にそれ以上怒ることができなかっただけの話なんだけど。
言おうとしたことは大体、目の前で弟が淡々とゴミでも見るかのような瞳で諭すように言うのでもう言うこともない。
また話が脱線したけれど、そういうわけなのでこれに内蔵しているのはバフ系・防御系・回復系などのものだ。
意外と何も言われないんだけど、私結界魔法系結構得意なんだよね。それに伴って同じ系統の術式を簡易にするのもまぁまぁ上手くいく。得意な理由はお察しである。私、ユニークスキルないと死んでたな。
「とまぁ、私の趣味と実益ゴリゴリで作ったものなんですけどそこまで興味あります?」
「あるとも」
日上先輩は愉しそうに口角を上げた。
「今年は二年に一度の魔法科高等学校対抗戦が行われる。その戦いにおいてこれの導入は他の学校の連中の固定観念を覆すだろう」
「戦術の幅が広がることは確かだ。君は適性媒介を含めて2割いくかいかないかが増幅値の最大だと言っていたけれど、それを自らの能力だけで増やそうと思うとどれだけの時間が必要か。しかも前提はしっかりとした数値を取ることだろうけど、安定性もそれなりにある。更に……5つもスクロールを入れられるなんて正気の沙汰じゃない」
悪そうな顔でそんなことを言われるので褒められている気がしない。
「これの他者への転用方法を対抗戦までに確立できるか?」
「適性媒介を教えても大丈夫なんですか?」
「隠すほどのものでもなかろう」
みんな隠すんだけどね。いざという時の切り札になりがちだからって理由らしいけど。
「生徒会役員は小鳥遊の研究に誇張や誤魔化しなく付き合うように」
え、間近で国宝級の美貌見ながら研究するとか無理にも程がありませんか?マジで顔ずっと見てる気がする。
「よろしくね、小鳥遊さん」
「はい、喜んで!!」
推しの笑顔に思わずいつもの元気なお返事をやってしまって頭を抱えた。
日上先輩と遥先輩が複雑そうな顔で私たちを見ていたことにその時は気づかなかった。




