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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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93.彼女と彼は追込作業に励む。

side リディア

 今回は、さすがに反省したわ。


 黒幕を突き止めようと思って。

 わざと捕まった誘拐劇は、想像以上に大事になってしまった。


 わたしってば、自分で何とかできると思ってたのよね。


 でも、それが、いかに浅はかで傲慢だったのか。

 今ならよくわかる。


 そりゃ、精霊に経過報告を頼んでいたし。

 自己防衛も徹底していたけれど。


 まさか、国外に連れ出されるとは思っていなくて。

 結果として、二国の王家にまでご迷惑おかけしてしまった。


 最終的に黒幕は捕まったし。

 副産物で、大量の悪人も捕まえられたそうだけれど。


 たくさんの人に迷惑をかけたことには違いないのだ。


 ラディが来てくれて人目を憚らずに抱き締めてくれた時。

 あのお母様が、窶れて憔悴してしまっているのを見た時。


 どれだけ心配をかけてしまったのかを思い知って。

 わたしは、ものすごく後悔した。


 考えてた言い訳なんて吹っ飛んで。

 謝ることしかできなかった。


 お母様もラディも怒ることはなかったけれど。

 ちゃんと怒ってくれた伯父様とお父様にはむしろ感謝してる。


 怒られて当然のことをしたと思う。

 だから、今、わたしは、ものすごく反省しているのよ。


 ――――ちなみに、黒幕さんたちはと言えば。


 ドラングルのあの商会は、取り潰すと多方面に影響があるらしく。

 会長は当然捕まって、責任者も挿げ替えられたけれど。

 基本的には罰金刑で済んだようだ。


 魔術師団の副団長は、解雇になって。

 更には、魔力も封じられてしまったらしい。

 わたしの講義も一旦保留になっている。


 他にも、金銭的なこととか、いろんなやりとりがあったみたいだけど。

 今後のことはすべて、王家にお任せしたそうだ。


 そんなわけで、反省中のわたしは、お詫びはもちろんのこと。

 自主的に謹慎をしていたわけだけど。


 実際のところ、謹慎をしなくとも。

 仕事が溜まりに溜まっていたから、元より缶詰め状態には変わりなくて。


 尚且つ、お義兄様とお義姉様の結婚式が近づいているから。


 とにかく仕事に追われている。

 ドラングルの講義はなくなったけれど。

 通常仕事に加えて、生ハムの仕込みもあるのだ。


 あ、でも、生ハムの商品化は。

 実は、事実上保留になっているのよね。


 というのも。

 ラディたちは生ハムを気に入ってくれたけれど。


 サティアスの料理人や商会のメンバーの中には苦手な人もいて。

 フレイル伯爵領の加工肉部門でも、賛否が分かれたらしいのだ。


 まあ、でも、それも当然の反応だと思う。

 むしろ、ラディたちのほうが特殊なのよ。


 ということで。

 伯父様たちの為に製造すること自体は決まっているんだけど。

 製造担当や生産量については、現状、調整中なのだ。


 だから、生ハムは個人的な分だけでよかったものの。

 結局反省もままならず、仕事に追われていたら。


 あっという間にレンダルに発つ日になってしまった。

 もちろん、仕事は気合で終わらせたわ。


 そうして、出立当日――――。


 毎度の如く、両親と伯父様に見送られて。

 シェロに転移してもらって。


 わたしたちは、久しぶりにグラント家までやってきたんだけど。

 待ち構えていたらしいお義姉様が凄い勢いでやってきて。


「リディア様!ご無事でよかった!」


 そう言って手をぎゅっと握りしめられて。

 その次は、お義母様にも抱き締められてしまった。


 誘拐のこと、すっかりバレてるのね……。


「僕たちも心配してました。ご無事で本当によかったです」


 フィン君にまでそう言われてしまったら。

 ただただ感謝とお詫びの言葉しか言えなかったわよね。


 そうして、シェロにも御礼を言って見送ってから。

 みんなでお茶をすることになったんだけど。


 まずは。


「お義兄様、お義姉様。この度は、本当におめでとうございます」

「やっとだね。なんか今更だけど、無事、結婚が決まってよかったよ」

「ああ、まあ、な。改まって言われると照れるが…、ありがとな」

「うふふ。これで、リディア様とも家族です!」


 お義姉様、喜ぶポイントが違います。


 とは思いながらも。

 早速、お祝いをお渡ししたわ。


 おふたりが産まれた年のワインとグラスは、わたしから。

 ビアマグとグリーンフィール産のエールは、ラディから。


 そして、両親からは、出来立てのモルトウイスキーを。

 ―――リアン商会の立ち上げ時に仕込み始めて、先日、やっと完成したのだ。


 伯父様からは、クラバットとスカーフのセットを預かってきている。

 ―――おふたりの目の色に合わせてあるらしい。


「え、あ、あの、こんなに……?」

「これは凄いな。というか、公爵閣下からも……?いや、それは……」

「お義兄様。父はもう平民ですよ?伯父様は侯爵ですけれど」

「リディア、今、突っ込むところはそこじゃないわ。でも、本当にいいの?こんなにいただいてしまって。それも、すごいものばかり」

「勿論です。両親も伯父様もおふたりのご結婚をすごく喜んでいましたから」


 どうやら逆に困惑させてしまったみたいだけれど。

 ぜひとも受け取ってほしい。


「リディア様!本当にありがとうございます!」

「ラディンもな。何だか気を遣わせて悪かったな」


 いえいえ。

 喜んでもらえたならうれしいです。


「それと、みんなにもお土産はあるんだけど、物騒でごめんね」

「は?物騒?」


 ああ、そうだわ。

 今回のお土産は防犯グッズがメインなのよね。


 計算機は、あまりにも品薄で二個しか確保できなかったし。


 インスタントラーメンについては。

 品薄でもあるけど、他国への持ち出しには未だに規制があるし。

 レンダルではお箸が普及していないから、今回は断念したのだ。


「おお、新しい武器を開発したのか!」

「まあ、一部、武器っぽいのはあるけど、基本的に防犯道具だから」

「いや、これ、雷を身体に流したら、相手、死ぬだろ?」

「死なない程度には調整してあるよ。気絶するだけ」

「これは何だ?」

「ああ、それを手に嵌めて殴ると、相手に結構なダメージを与えられるよ」

「………本当に物騒だな。ありがたいが」


 ありがたいのか。


 というか、さすが影の一族だけあって、食いつきがよくて何よりだわ。

 四種機能の腕輪も全員分用意したから、これからはみんなでお揃いね!


「リディア、これは?」

「新商品の魔道具なんですが、自動で計算してくれるんですよ」


 今度は、お義父様が計算機に興味を示されたから。

 足し算・引き算・掛け算・割り算を一通りやってみせたら。


「「「「「おおおおお!!!」」」」」


 みんなの食いつきが防犯グッズ以上で。

 取り合いにもなってしまって。

 わたしもラディも苦笑するしかなかったわよね。


 結局、その日は、商品説明で一日が終わってしまったわ。


 とはいえ、ゆっくりできたのは初日だけで。

 翌日からは大忙しだったのよ?


 結婚パーティーの最終調整をしなくてはならなかったし。

 何よりも、海鮮系のお料理の試食会があるのだ。

 海老とかの魚介類だけは、わたしたちの到着待ちだったのよね。


 そうして迎えた試食会当日――――。


「リディア様ー!逢いたかったですー!」


 ご実家に戻っていたお義姉様がご家族を連れてやってきたのだけど。

 お義姉様、この前会ったばかりですよ?


「リディア様、えっと、父は御存じなんですよね?」

「はい。大変ご無沙汰しております。この度は誠におめでとうございます」

「あ、ああ……。その、今更だが、愚息が迷惑をかけて、すまなかったな」


 確かにパウエル伯とは面識があるけれど。

 さすがに、このタイミングで謝罪されるとは思わなかった。


 でも、もう過去のことですから。

 蒸し返すのはやめたい所存です。


 お義姉様も今更の謝罪に呆れながらも、それ以上の追求はせずに。

 そのまま御兄弟を紹介してくれて。


 早速、試食会を始めることになった。

 ライブキッチンを使わせて頂けるから、出来立てをお出しできるのよ。


 今回の試食メニューは。


 前菜にシュリンプカクテルとサラダを。

 ―――ここで、しれっと生ハムを出そうと思う。


 スープは、クラムチャウダー。

 メインは、エビフライ。

 〆のご飯はパエリアの予定だ。


 ということで、まずは、前菜をお出ししたら。

 シュリンプカクテルは瞬く間になくなってしまった。

 レンダルでも、海老は好まれるのね。


「リディア様、このピンクのものは……?写真には載ってないですよね?」


 あら。

 お義姉様が写真をお持ちでしたのね。


「実は新作なのです。生のハムなので好みは別れますが、ワインに合いますよ」

「まあ!」

「生でも食べられるのか?」

「加熱していないだけで、加工はしてあるので身体に害はないんです。でも、本当に、無理はしないでくださいね」


 恐らく、フィン君は苦手だと思うのよね。

 そこは、ラディがさりげなくフォローしてくれるようだ。


「あら、おいしいわね」

「あの、ワイン、ないですか?ワインが飲みたいですー」


 ふふ。ラディが言っていた通り。

 お義母様とお義姉様には気に入ってもらえたみたい。


 他の方々は半々かしらね。

 でも、それは、想定内だ。


 そして、次のクラムチャウダーもなかなかに好評で。

 貝も好き嫌いがあるからちょっと不安だったけれど。

 問題なさそうで安心したわ。


 試食会が順調でうれしい。


 なんて、ちょっと調子に乗りながら、エビフライを作り始めたら。

 じゅーっ!という音に惹かれたのか、みんなが席を立って見に来たから驚いた。


 お義姉様の御兄弟はちょっと引き気味かしら?


「先程は茹でた海老をお召し上がりいただきましたが、今度は揚げてみました。ぜひ、温かいうちにどうぞ」

「おお!これがエビフライか!写真で見て、楽しみにしてたんだ」

「私もです!」

「僕も!」


 フィン君は、さっきまで、やっぱり生ハムが苦手で落ち込んでたのに。

 すっかり元気になってよかったわ。


「おーいーしーいー!!」

「シア、もっと行儀よくできないのか」

「え、いらないなら、私が、」

「そんなことは言ってないだろう。話をすり替えるな!」

「義姉上!すごくおいしいです!もっと食べたいです!」

「フィン、それは、一通り食べてからにしなさい」


 ふふ。騎士一家だからか、賑やかな食卓で楽しいわね。


「あの油の量を見たときは驚いたが、旨いもんだな」

「私もびっくりしましたけれど、サクサクしていて美味しいですわね」

「リディアの料理に外れはないんですのよ」


 あら。御兄弟にも奥様にも好評でよかったわ。

 でも、お義母様。ハードルを上げるのは本当にやめてください。


 なんて思ってたら。


「「「おおおー!!」」」


 急に雄叫びが上がったから、何かと思えば。

 ラディが、厨房からパエリアを持ってきてくれたようだ。


「これは豪華だな!」

「取り分けますので、少しお待ちください」


 ラディよろしくね。


 そうして、全員にパエリアが行き渡ったと思ったら。

 すぐにおかわりの声が上がって、あっという間になくなってしまった。


 それで、みんなががっかりしてしまったから。

 急いで、追加のエビフライと、唐揚げやコロッケも揚げたのよね。


「いやー、本当に、どれも旨いな」

「これなら招待客もみんな喜んでくれるんじゃないか?」


 そう言ってもらえて、安心していたのも束の間。


「まあ!なんて綺麗なの!」


 今度は何かと思えば。

 料理長さんがフルーツポンチを持ってきてくれていた。


 そうだった。

 最後にフルーツでさっぱりしてもらおうと思ってたのよね。


「白ワインベースと炭酸ベースのものがありますので、お好きなほうをお飲みくださいませ。あ、フィン君は炭酸の方よ?」

「はい。僕も早くお酒飲みたいです。でも、あのしゅわしゅわも好きです」

「しゅわしゅわ?」


 ああ。そうか。

 レンダルでは、炭酸も珍しいんだった。


 ということで、ラディに説明をお願いしていたら。


「これ、飲み物なのか?」

「フルーツは飾りなのかしら。ものすごく贅沢ですけれど」


 という声が聞こえてきたから。

 慌てて、フルーツは食べれることを説明しておいた。


 ただ、そのフルーツポンチが意外に好評で。

 パーティーにも出すことになってしまったわ。

 確かに華やかにはなるかしら?


 なんて思いつつ。


 その後は、写真を見ながらみんなで意見を出し合って。

 漸く、パーティーメニューが確定したのだった。


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