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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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87.彼女と彼は呆れ果てる。

side リディア

 あまりにもお粗末な内容で、拍子抜けしたわよね。


 ガンズ商会がリアン商会を技術盗用で訴えてきて。

 法廷で争うことになった。


 そんなの、わたしだって法廷に行きたいって思うのは当然じゃない?


 はっきり言って明らかに冤罪だけど。

 その状態でどう攻めてくるのかはものすごく気になるもの。

 それに、今後の対策にだってなると思うの。


 だから、無理を言って、同行させてもらって。

 ラディと一緒にレオン様の従者に扮して傍聴席に紛れて。

 お手並み拝見とさせていただいたわけだけど。


 陳述内容があまりにもお粗末すぎて呆れてしまったわ。


 設計図の盗難事件をでっちあげたのは、考えたと思う。

 でも、詰めが甘すぎる。


 あんな馬鹿げた話をするだけで盗難事件を立証できると思ってたのかしら。

 五年前にしたのも、悪手だったわよね。

 まあ、うちよりも早くから開発してたって言いたかったんでしょうけれど。


 おまけに、お母様にも言質を取られちゃったものね。

 もし、今販売している商品が盗まれた設計図のものだって断言しなければ。

 もう少しは逃げられたかもしれないのに。


 ガンズ商会って、会長も残念なのね。


 ただ、この訴訟の本当の目的が技術入手だったことに気づいたときには。

 その考えに至らなかった自分が不甲斐なかったわ。


 この裁判で負けたところで、命まで取られることはないから。

 技術さえ入手できれば再起できるとでも思ったのだろうけど。


 もちろん、お母様たちはそんなことはお見通しで。

 鑑定書を用意して、さっくりと回避していて、さすがだったわ。


 そうして、結局、大した審議もなく。

 証拠不十分でリアン商会は無罪放免を勝ち取れそうだったから。

 こうなったら、さすがにガンズ商会も諦めるとは思ったけれど。


 まさか、会長自ら偽証を自白するとはね。


「ガンズ殿。それは、どういうことですか?」

「え?は……?」


 あら?もしや、口に出しちゃったことに気づいてないのかしら?

 まあ、確かに、思い通りにいかなかったからか、呆然とはしていたけれど。


「今、『全く同じように作れと指示した』とおっしゃいましたよね?」

「え!?あ、いえ、それは、その………」

「誰に何を同じように作るよう指示したのですか?」

「あ、それは……、あの……、職人に設計図と同じように作れと……」

「職人が設計図の通りに作るのは当然ですよね?それを、わざわざ、全く同じように作るよう指示したと?」

「そ、その通りです!」


 ええー、それは無理がないかしら?


 さっきの言葉は、どう考えたって。

 リアン商会の商品と全く同じように作るように指示したのに。

 どうして、技術が異なるという鑑定結果が出てしまったのか。

 ―――という心情から生まれたものよね?


「そうですか……。ですが、それならば尚更、リアン商会の商品はガンズ商会の技術を使っていないということになりますね。鑑定書が証明しています」

「し、しかし!きっと、盗んだ設計書からヒントを得ているはずです!」


 うわー、この期に及んで、まだ粘るのね。


「ヒントですか……。使っている技術が違うのに、ヒントというのは無理がありますね。しかも、盗難事件も立証できておりません。せめて、ガンズ商会も技術登録をしていれば、その時期と内容を比べることができるのですが」

「くっ………………」


 今更、そんな悔しそうな顔をされてもね。

 本当に詰めが甘いわね。


 なんて思ってたら、ここで、お父様が発言を求めたわ。

 どうしたのかしら?


「リアン商会の設立は二年前ですが、我々が冷蔵庫の開発を始めたのは十年前です。十年前の試作品の鑑定書もありますので、こちらもご確認ください。現商品は改良されたものではありますが、基本技術は十年前と変わっておりません」


 まあ!レンダル時代のものまで鑑定してたのね!

 あの試作からもう十年なのかー。

 あの時は色々試行錯誤して大変だったわよねー。


「ほう……。十年前からですか。それはすごいですね。確かに、鑑定によると、同様の技術を使っているようです」


 これは、うちの商会に有利な情報よね。

 技術盗用どころか、独自の技術だってわかってもらえたんじゃないかしら。


 なんて思ってたのに。


「なんと!まさか、あの試作品を盗んだのもリアン商会だったのか!」


 はあ?今度は何を言い出すの?

 もう、ここまでくると呆れ果てるわね。


「どういうことですか?盗まれたのは設計図で五年前なのではないですか?」

「設計図が盗まれたのは五年前です。ですが、試作品も盗まれているのです」

「はぁ……。そうですか……。その証拠はありますか?」

「あ、なにぶん昔のことですので、証拠は……」

「ないのですね?」


 法廷人もため息ついちゃってるし。

 傍聴席の人たちが白い目で見てるの、気づいてないのかしら。


 このタイミングでそんなことを言っても信ぴょう性がなさすぎる。

 ガンズ商会の会長は、これ以上口を開くと逆効果だと思うわ。


「ひとつ、よろしいでしょうか?」


 あら、お父様、今度は何かしら?


「ガンズ殿。竜の鱗は、いつどこで入手されたのですか?」

「は…?竜……?鱗?何のことだ!そんなものは知らん!」

「それはおかしいですね。十年前の冷蔵庫の試作品は、魔力原動に精霊石ではなく竜の鱗が使われているのですが」

「なっ……!」


 あーあーあー。

 ガンズ商会の会長さん、本当に、墓穴しか掘ってない。

 そろそろ、哀れ過ぎて、わたしは泣いてしまいそうよ。


 とはいえ、リアン商会の設立時期も知らなかったくらいだから。

 それ以前はレンダルで商売していたことすら調べていない可能性もあるわね。


 それに、レンダルでは魔力を溜められる竜の鱗は有名で。

 竜の鱗を使った魔道具もちらほらとあったけれど。

 グリーンフィールでは大して知られていないかもしれない。


 となれば、お父様からの質問に答えられるわけがないのか。

 ご愁傷様。


「ガンズ殿。貴方の発言には一貫性もなければ、確証もない。それでは話になりません。訴え出るのであれば、きちんとした証拠を提示してください」

「あ、いや、証拠は……………」


 どうやら、設計図の盗難事件については一応書面を持ってきていたらしい。

 とはいえ、先の口述内容と同じ事しか書かれていなくて。


 騎士団や自警団とかの証言があればまだしも。

 ガンズ商会の人間たちだけの証言しかないだなんて。

 事件があった証明にはなり得ないと却下されてたわ。


 十年前の試作品の盗難事件とやらも、当然、証明できるものはなくて。

 あとは、今、彼らの手元にあるのは、見た目がそっくりの、リアン商会とガンズ商会の冷蔵庫と保温水筒のみだ。


 それらの製造技術が違うことは鑑定書が証明しているから。

 彼らには、もう、リアン商会を糾弾する材料はなくなった。


「見た目だけではリアン商会が技術盗用しているという証拠にはなりません。鑑定書によって技術が違うことは証明されていますし、十年前の試作品があることから製造開始時期もリアン商会のほうが早いのは明らかです。設計図や試作品の盗難というのも、本当にあった事件なのかも疑わしい」


 ですよねー。


 法廷に出るには準備が足りなかったと思う。

 まあ、法廷に出させたのはこっちだけど!


「よって、今回のガンズ商会からの訴えは棄却します」


 よし!勝った!

 まあ、負けるわけがないんだけどね。


 結局、ガンズ商会はそれ以上の反論ができず。

 今回の裁判は、そのまま閉廷となった。


「随分と呆気なかったね。もっと父上たちが追い詰めると思っていたから、拍子抜けしちゃったよ」


 帰りがけにレオン様がそう言っていたけれど。

 それには、わたしもラディも頷いてしまったわよね。


 もう少しはらはらするかと思ってたのに。

 呆れて終わったわ。


 そうして、後始末?があるという両親たちとは法廷で別れて。

 実は姿を消して傍聴していたダズルに送ってもらって帰宅したんだけど。


 ―――――それから、数日後。


 わたしとラディは、両親に呼び出されていた。


「何かあったの?」

「ガンズ商会との決着について、お話しておこうと思ったのよ」


 決着?あの裁判で終わったんじゃなかったの?

 あ、後始末って言っていた件かしらね?


「実はな、ガンズ商会は別件でも捜査されていたんだ」

「「え?」」


 別件って、他にも何かやらかしてたのかしら?


 なんて思ってたら、うちの商会への魔法攻撃や嫌がらせ案件だった。

 ああ、うん。それは、前にも聞いたけれど。


 確か、下っ端しか捕まえられなくて。

 ガンズ商会が関与している証拠が掴めてないんじゃなかったかしら。


「ずっと影を張り付けていたんだが、先日、やっと、執事が実行犯に金を渡して指示しているところを押さえることができてな。その証拠を元に騎士団に捜査と捕縛を依頼していたのだ」


 ああ、そう言えば、絶対に潰すって言ってたわね。

 そのために、本当に動いていたのね。


「あの裁判の日なら手薄でしょうから、その日に踏み込んだらしいのよ。結果から言えば、うちの商会への攻撃については執事が自白して捕えられたのだけど、余罪確認のために家宅捜査をしたら、色々とボロが出てしまったようよ」


 どうやら、被害に遭っていたのはうちの商会だけではなかったようで。

 かなりの余罪が発覚したらしい。


 うちは、結界や防犯道具によって守られたけれど。

 他では、傷害事件や器物損壊もあったようだから、結構な罪になりそうだ。


 ガンズ商会には本当に呆れてしまうわね。


「おまけに、その場にいたガンズ商会の技術者が裁判のことを話題にしていたようでね。うまく騙せてたらいいな、と言っていたのを騎士が聞いてしまったそうだ」


 うわー、それは口に出してはいけなかったわよね。


 まあ、裁判当日だったのなら、話題にしてしまうのはわかるけれど。

 騎士が来てるなんて知らなかったんでしょうけれど。


 会長さんもそうだったけど、迂闊すぎるわ。

 ガンズ商会って自滅タイプなのね。


「騎士も裁判のことは知っていたからな、その技術者を問い詰めて、今回の訴えそのものがガンズ商会のでっちあげによるものだと白状させたよ」

「それで、ガンズ商会には、偽証罪や虚偽告訴罪が科されたわ」


 ああ、もう、罪でいっぱいね。

 これ、罰金や業務停止だけで済むのかしら?


「訴訟の件は、うちの全面勝利と言ったところだな。まあ、当然だが」

「そうね。多分、ガンズ商会は再起も難しいと思うわ。噂も広がるでしょうし」


 そうなると、あの娘がちょっと哀れになるけれど。

 そこは、もう、しょうがないわよね。


 でも、これで面倒事は片付いたということよね?

 そろそろ軟禁状態から解放されるかしら。


「ああ、ただ、引き続き外出には気を付けてくれ。ガンズ商会が見せしめのようにはなったが、だからって不審者が全くいなくなるわけではないだろうからな」


 …………まだしばらくは無理なようだ。


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