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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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81.彼女と彼は対策を練る。

side リディア

 想像以上に物騒な話になって、びっくりしたわよね。


 商会の店舗責任者との防犯会議が終了した後。

 わたしとラディと両親、そして、デュアル親子が残って。

 商会本部と工場の防犯について話したわけだけれど。


 当初から基本的な防犯体制は取っていたから。


 ―――当然ながら、私兵というか、警備の人間も常駐しているし。

 ダズルの結界や精霊たちにも守られている。

 今では、録映機だって、あらゆる場所に設置してあるはずだ。


 だから、今すぐできることと言えば。

 結界強化と従業員の守備体制を整えるという話になったのはわかるのよ。


 防犯強化となれば、わたしも、まずはそこからだと思う。

 簡単な案は出したけれど、具体案は持ち帰って再考するつもりだしね。

 対策については納得しているのよ。


 でも、何に驚いたって、現状よね。


 不法侵入やスパイ行為を目論む人がそんなに多いなんて思っていなかったし。

 攻撃魔法や火を放とうとする人がいるなんて、想像すらしていなかった。


 おまけに、従業員が危険な目に遭う可能性があったり。

 何よりも、わたしが誘拐される可能性だってあるの?


 いやいやいや。

 さすがに、そこまでする人はいないんじゃないかと思うんだけれど。

 両親や伯父様の顔を見ると、冗談を言っている風ではないのよね……。


「あの……。リディが狙われる理由は、会長の娘だということだけですか?」


 ん?ラディは何を確認しようとしているのかしら?


「…………。そうだな、確証はないが、まだ、リディアの知識やアイデア力については外部にバレていないはずだ」


 ……ああ、そういうことか。

 わたしの前世知識が狙われているかを心配していたのね。


 でも、万が一、捕まったとしても言う気はないわよ?


「ああ、やっぱり、アイデアはリディアが出してるんだ」

「口外するなよ?」

「わかってるよ。約束する」


 そうよね、レオン様は、さすがに気づいていたわよね。

 でも、そういう風に突っ込まれたことはないし。

 今も、すぐに諸々察してくれて、本当にありがたいわ。


 なんて、心の中でこっそりとレオン様に感謝していたら。

 伯父様と両親が目配せしているのに気づいた。

 何かしら?


「実は、万引きした娘は、他にもよからぬことに首を突っ込んでいてな」

「は?」


 え、何の話?

 あの娘のことは解決したんじゃなかったのかしら。


「あの後、送り届けた騎士から、あの娘の様子がどうもおかしいと言われてね」

「万引きがバレたことよりも、他のことが気になっていたようなんだよね」

「それで、念のため、影を付けておいたのよ」


 なんてことだ。

 まさか、そんなことになっていたなんて。


 そうして、詳しく話してくれたことによると。


 万引きに対する処罰は、解雇と罰金だけだったから。

 あとのことは、娘のご両親に対応を任せていたらしいのだけど。

 娘は謹慎することもなく、日々遊びに出かけていたようなのだ。


 そして、必ず、最後はある飲食店に寄っていて。

 店内でもこそこそしていて怪しかったから、店についても調べてみたら。

 その店では、裏の取引がよく行われていることがわかったという。


 で、あの娘は、ラディを篭絡するように指示されてたらしいのよね。

 報奨金も用意されていたようだ。


「え?は?俺、ですか?」

「そう。リディアを攫うには邪魔だと思われたんだ」


 なるほど。

 そういうことだったのね。


「今回の誘拐未遂犯は全員捕まえたよ。黒幕は織物を生業としていた男爵だ」

「うちが安価で質のいい綿織物を売り出したから、業績が下がったんだろう」


 誘拐が計画されていたことも驚いたけど、既に解決してることにも驚いた。

 わたしが他の店舗用の魔道具を作っている間にそんなことがあったなんて。


 ちょっと驚きすぎて、唖然としていたら。

 ラディが、わたしの手をぎゅっと握ってくれて、我に返った。


 にしても、恨まれる理由はわかったけれど。

 うちの商会だって、すべての織物を手掛けているわけじゃないのだから。

 犯罪に手を染めなくても、業績を上げる方法はあったと思う。


「男爵は、会長の娘を誘拐して商会を脅すつもりだったらしいよ」

「リディアの知識については、全く気付いていない様子だったな」

「そうだね。世間知らずのお嬢様くらいにしか思ってないようだったね」


 なんて失礼な。

 とは思うけど、狙われることを考えたら。

 それくらいに思われていたほうがいいのかしらね?


「今回は捕まえられたが、同じようなことを考える輩が他にいないとも限らない。別件で捕えた不審者の中にも、リディアを狙っていた者がいたしな」

「僕が表に立つことで、サティアスは僕の補佐に見えるようにしてきたんだけど、バレるもんだね。知識のことはバレていないまでも、リアンティアが会長でリディアが娘だってことは広まり始めてる」


 そうなのか。


 実は、お母様が会長だってことは意外と知られていないのだ。

 別に隠していたわけじゃないけど、わざわざ言うことはなかったものね。


 王家や直轄領の代官様たちはさすがに知っているけれど。

 あとは、ギルド長コンビや昔馴染みの商会のメンバーくらいで。

 お弁当屋さんのスタッフだって、知らないと思う。


 だから、あの万引き娘が知っていたのも不思議だったけれど。

 まさか、裏からの情報だったなんて。


 伯父様は陛下と仲のいい高位貴族という位置づけにあるから。

 表に立って、わたしたちを守ってくれていたのね。

 今までそういうことにも気づかないでいたなんて、申し訳なくなってきたわ。


「だから、警戒は怠らないようにね」

「わかったわ。伯父様、いろいろありがとう」


 いろんな思いを込めて伯父様に御礼を言ったら。

 それが伝わったのか、当然のことしかしてないよ、って微笑まれた。


「それと、レオンは、必要以上にリディアに近づかないように」

「え?なんで?」

「今まで商会に関わってこなかったお前が急に懇意にしていたら、変に勘繰られるかもしれないだろう。お前の家族が巻き込まれでもしたらどうするんだ」


 万引き娘のように、変な誤解をされるのも困るけれど。

 岩塩のことがあるとはいえ、確かに、タイミングもよくないと思う。


 不審者が増えて、わたしを狙う輩までいるのだから。

 今、この時期に、わたしや商会に近寄るのはやめておいたほうがいいわよね。

 レオン様のお子様はまだ小さいのだから、危険は回避するに限る。


 どうやら、この話もしたかったから、この場にレオン様も呼んでいたようだ。

 自宅で話して、奥様や使用人に話が広まるのを避けたかったらしい。


 そうね、いたずらに不安がらせてもいけないものね。


 レオン様もそこまで説明されたら反論できるわけもなく。

 渋々と言った体ではあったけれど、受け入れてくれたんだけど。


「でも、商品会議とか手紙のやりとりとかはできるよね?」

「俺を通してくださいね?」


 レオン様とラディの謎の攻防が勃発していた。

 うん、これは、ラディに任せよう。


 そうして、その後は、わたしの警備の話を詰めて。

 皆から、気を付けるように、と何度も何度も言われて。

 その日の会議は終了した。


 家に着いた途端にラディに抱きしめられたのは驚いたけれど。


「リディが攫われなくて本当によかった」


 って言われたら、抱きしめ返すことしかできなかったわよね。


 ただ、その後。

 万引き娘がラディを狙ってたことを知ってたんじゃないか?

 って追求されたのは参ったわ。


 でも、わたしだって売り子さんから聞いてただけだし。

 黒幕がいたなんて知らなかったし。

 何よりも、他の女がラディに懸想してるなんて口にしたくもないわよ?


 そう言ったら、ラディは目をぱちくりさせた後、顔を赤くして。

 ごめん、って謝ってくれたから。

 わたしの焼きもちも少しは役に立ったかもしれない。


 そして、翌日―――。


 わたしは外出を控えるように言われているし。

 ラディは、警護のためにわたしの側を離れないから。


 ふたりで、本部と工場の防犯強化について詳細を話し合うことにした。


「結界操作権限の登録ってどうやるの?」

「魔力を登録してもらうだけよ。登録を許可する人間は限定するけれど」

「ああ、そっか。勝手に登録できないようにもしなくちゃいけないのか」


 魔力登録自体は簡単だけど、誰にでもできるのよね。


 だから、結界の魔道具とは別に、登録用の魔道具を作ろうと思う。

 そのふたつを連携させれば、結界操作に支障はないはず。

 そうして、登録用の魔道具の管理も厳重にすれば、大丈夫よね?


 多分、もっとすっきりできる方法もあるとは思うんだけど。

 わたしにも、この世界でできることにも限界があるのだ。


「なるほどね。確かに、それなら問題なさそうだ」


 よかった。ラディは認めてくれた。

 ならば、この案を両親と伯父様に提案しよう。


「それとね、結界自体の強度も上げるつもりよ」

「そうなの?それは、みんなも喜ぶと思う。無効化魔法で大抵のことは何とかなりそうだけど、過激派もいるみたいだからね」


 無効化魔法を破られる可能性は低いけれど。

 過激派は何をしでかすかわからないから。

 念のため、やっておくに越したことはないわよね。


「そんな結界ができるなら、侵入することすら難しいけど、万が一、侵入できても、欲しい情報には辿り着けないね」

「だといいんだけど。しばらく稼働させて、問題があったらすぐに報告してもらえるようにしておけば、精度も上がると思うわ」


 何でも完璧はないはずだから。

 今できることをやって、随時改良していくしかないわよね。


「そうだね。じゃあ、後は、本部の人間と技術者の守備強化だけど」

「魔法契約って、今は、知り得た情報を話せる相手を限定しているだけよね?」

「そうだけど、それ以上に何かすることあるかな?」

「場所も限定すればいいんじゃないかしら」


 縛りすぎかもしれないけど。

 本部や工場に侵入ができなくなれば、狙われるのはその他の場所なわけで。

 自宅やカフェで話しているのを聞かれる可能性もあると思うのよね。


「なるほどね。契約者には窮屈な思いをさせちゃうけど、しょうがないか」

「情報が入らないなら捕まえても意味がないって、諦めてくれないかしら」

「そう簡単にいけばいいけどね。でも、そうだね、それくらいやっておいたほうがいいかもしれない。自分が持ってる情報がそれだけのものだっていうのも理解しやすいだろうし」


 ああ、そっか。

 そこまで考えてなかったけど、こっちの人間の認識操作にもなるわよね。


「っていうか、思い付いたから魔法契約について話しちゃったけど、攫われないようにするほうが大事よね」

「両方大事だよ。今、防御の魔道具は持たせてないんだよね?」

「だと思うわ。依頼されたこともないし。でも、付与できるとしても、結界展開や認識阻害、解毒、精神干渉防御くらいよ?」

「……………。それだけできれば、十分だと思うよ」


 あら、ラディがなんか呆れてるわ。


 でも、怖い目には遭ってほしくないから、万全にしたいのよね。

 そう思って、何かないか考えた結果。


「あ!防犯ブザーとか催涙スプレーはどう?後は、スタンガンとか!」

「何か凄そうだけど、とりあえず、どういう物なのか教えてくれる?」


 痴漢撃退とか、女性の防犯グッズを思い起こして提案してみたものの。

 そうよね、知ってるわけがないわよね。


 ということで、それぞれの機能を説明したら。

 理解してくれたのはいいんだけど。


「異世界って、実は、すごい危険なところなんだね」


 なんか、ものすごく誤解を与えた気がするわ。


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