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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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78.彼と彼女は捕まえる。

side ラディンベル

 まさか、俺と離れたほんの少しの間に会っていたなんて。


 デュアル侯爵から依頼を受けて。

 雑貨店で起きた問題、というか、犯罪だね、あれは。

 その犯罪の立証に向けて、俺とリディは動いていて。


 しばらくは俺が店舗に通って情報を集めていたんだけど。

 どう調べても、犯罪が行われていることは間違いないようだった。


 だから、証拠の確保と犯人の特定のために。

 魔道具を設置しようと、リディと一緒に店舗に出向いていたんだけど。


 リディは既存の魔道具の確認があったから、店舗に残っていて。

 俺だけが先に店長室に行ってたんだよね。


 でも、なかなかリディが店長室に来ないから。

 迎えに行ったら、売り子らしい娘がリディに絡んでいて。


 どうしたのかと思えば、不貞を追求されていたとかで。

 しかも、その相手がレオン様とか。


 どうして、俺がちょっと離れた隙にそんなことが起きているんだろうね?


 いや、本当にね?

 リディと離れたのは数十分とかなんだよ。


 そんな短い間に、まさか、レオン様がリディに会ってるとは思わなかったよね。


 リディはもちろん、レオン様だって、こっそり会うつもりじゃなかったはずで。

 序に言えば、俺のことだって探してくれたみたいだから。


 ふたりを疑うことはないんだけど、どうして、そのタイミングだったのか。

 何で、レオン様がリディに話しかけたときに、俺はそこにいなかったのか。


 まるで、ふたりきりで会うお膳立てをされていたようで。

 神がレオン様に味方しているように感じてしまうのは、俺の嫉妬なんだろうか。


 ………俺も、大概、大人げないね。


 俺のくだらない嫉妬にリディも気づいたかもしれないけど。

 気づかないふりをしてくれて、本当にありがたかった。


 話を聞くに、レオン様は、俺にかなり気を遣ってくれているみたいだから。

 ちょっと圧を掛けすぎたかなって反省はしているけど、後悔はしていない。


 どうか、これからも、リディに近づきすぎないようにしてくださいね?


 俺は強くそう願っているわけだけど。

 実際のところ、今、俺が願わなくちゃいけないのはそこじゃなくて。


 当然ながら、雑貨店の問題解決だ。

 わかってる。重々わかってる。


 ということで―――――。


 俺たちは、容疑者を洗い出すことから始めたんだけど。


 やっぱり、さすがリディだよね。

 新たに設置した魔道具によって、あっさりと容疑者があぶりだされた。


 とはいえ、これまでも容疑者がいなかったわけじゃなくて。

 いくつかの書類を照らし合わせて、実は、ふたりまでは絞っていた。


 でも、どっちが犯人なのかの判断が難しかったから。

 魔道具に頼ることにしたんだよね。


 それが、こうもあっさりと判明してしまうということは。

 これまでの警備も含めて、反省点も山盛りだ。


 とは思うけど、まずは、今回の犯人を確保しないといけないから。

 俺たちは、今後の計画の算段を付け始めたんだけど。


 容疑者って、この前リディに言いがかりを付けてた売り子なんだよね……。


「あーー、あの子かーー―」

「かなり気が強そうだったわよね?単に呼び出して追求しても、罪を認めない可能性が高いと思うの。となると、現行犯逮捕しかないのかしら……」


 確かに、リディの言う通りかもしれない。


 リディとレオン様の件だって、最後まで納得いかない顔をしていたし。

 自分の思うことが絶対だと信じてるタイプだと思う。


 彼女は、これまでも何度も繰り返しているから。

 もうやってほしくはないけれど。


「そうだね。わざわざ罪を犯してもらうことに気が引けるのもわかるけど、尋問で長引かせるよりは、手っ取り早いかも」


 言い方は悪かっただろうけどね。

 早く解決したいから、できればこの線で進めたい。


 店長にも理解を求めて、デュアル侯爵にも許可を取って。

 俺たちは、再犯したところを捕縛する計画を練ることにした。


 そうして、その数日後――――。


 俺は、従業員出口で彼女を待ち伏せていた。

 ほどなくして現れた彼女は、俺を見て驚いているようだ。


「あれ?ラディンベルさん……?」

「お疲れ様。君に話があって待っていたんだ」

「え…?わたしに?」

「うん。ちょっと付いて来てもらえるかな?」


 リディに言われた通りに進めているけれど、彼女の反応も聞いてた通りだ。


 俺としては、なんで、この娘がうれしそうなのかはわからない。

 でも、素直についてきてくれるならありがたい。

 変に警戒されたり暴れたりされたら、どうしようかと思ってたからね。


 そうして、彼女を連れていったのは店舗の休憩室。

 中に誘導したら、彼女はまた驚いていた。


 休憩室で待機していたのは、店長にリディ。

 そして、義母上とデュアル親子にも来てもらっている。


 彼女の行動履歴から。

 今日、再犯する可能性が高かったから来てもらってたんだけど。

 無駄足にならなくてよかった。


 まあ、レオン様を巻き込むのはどうかと思ったんだけどね。

 娘が逃げたり暴れたときのために、男手を増やしておこうと侯爵に言われて、それもそうかと思ったんだよね。


「え、なに……?あの、ラディンベルさん、これは……?」

「君に話があるのは、彼らだから」


 俺にそう言われて、娘は、室内のメンツを見渡した。

 俺は、出入り口のドアの前を陣取ったまま動いていない。


「あっ!不倫男!」


 うわー、なんで、ここでそれを言うかな?


 不名誉な呼ばれ方をしたレオン様は、きょとんとしていたけれど。

 リディに説明をされて、俺たちに申し訳なさそうな顔をしていた。


「貴方ね………。まだそんなことを言っているの?しかも、本人の前で言うなんて不敬にも程があるわ」

「はあ?何よ、偉そうに。あんたなんて、たかが商会の娘でしょ?それで不敬?」


 あああ。もう、ほんと、その口を閉じたい。


 義母上の笑みは深まったし。でも、目は笑ってないし。

 侯爵も真顔になってる。


 俺、ここから逃げ出していいかな?


「わたしじゃないわよ。証拠もないのに、この方に不貞を突き付けるなんて、ある意味自殺行為よ?そんなに罰してほしいの?」

「もっと意味わからないし。あんたの男がそんなに偉いとでも?」


 リディの男じゃないけど、偉いのは確かだ。


「随分と失礼な子だね?僕はこれでもデュアル侯爵家の嫡男なんだけどね」

「は…………?」

「次期侯爵様よ」

「嘘!嘘よ!!」


 ここで畏れてくれれば、まだマシだったのに。

 貴族に嘘つき呼ばわりはやばいでしょ。


「はあ……。貴族の名を騙ってただで済むわけがない。そんな嘘をつくわけがないだろう?君は、自分の主張から逸れたものはすべて否定するのか?」


 さすがに侯爵も黙っていられなかったのか口を開いたのだけど。

 それに対して、娘は更に眉を寄せて怪訝な顔を隠そうともしなかった。


「ああ、私は、君が不倫男と言い放ち、嘘つきとされたこの男の父親だ。デュアル侯爵家の現当主だよ。そして、こちらはリアン商会の会長だ」

「………っ!」


 そう言われて、再度ここにいる面々を見て、彼らの表情を見て。

 娘は、漸く自分の失態に気づいたようだ。

 少し、震えているかもしれない。


「こんなことを話している時間も勿体ないな。話は私が進めさせてもらうよ。さっきの息子の件は不問にするから、正直に答えてほしい」


 そうして、侯爵がその後のことを引き受けてくれた。

 娘も、領主にそう言われたら逆らうことなんてできないはずだ。


「君がここに呼び出された理由はわかる?」

「え……?あの、わたしは、ラディンベルさんに」

「うん。彼に連れてきてもらったけど、話があるのは私と会長だ」

「え、あ、あの、私に何か……」


 ああ、この子、本当にバレてないと思ってるんだな。


「君の鞄の中身を見せてくれないかな?」

「………っ!」


 これで、本題がわかったかな?

 でも、彼女は、鞄を抱きしめて、抱え込んでしまった。


「そんなことをしても無駄だよ。見なくても、店内に設置してある魔道具で、君の鞄の中に未会計の商品が入っていることはわかっている。今日はノート五冊に、色ペン各一色ずつを持ち出したようだね?」

「………っ!」


 そう言われて、娘は目を見開いた。

 そして、そこまで知られているとなれば、さすがにもう隠せないと思ったのか、開き直ったように、鞄の中身をぶちまけた。


 はい。これで、万引きの現行犯、確定だね。


「何よ、これくらい、いいじゃない!」


 更には逆切れした。


「いいわけがないだろう?それに、君は今日が初犯じゃないはずだ。過去に万引きしたものもすべてわかってるよ」

「………っ!」


 つくづく、この娘は、考えが甘いよね。

 ここまでされて、どうしてバレてないと思えるんだろう。


 そもそも、この犯罪については――――。


 雑貨店の店長は、実は、もっと前から気づいていたんだよね。


 でも、雑貨店の警備は万全のはずだったんだ。

 営業時間外には結界が張られていて、外からの侵入はできない。


 お客様の万引き対策だってしていて。


 目には見えないけど、未会計の商品には魔法で商品情報を埋め込んである。

 ―――おかげで、魔道具で簡単に会計をすることができるんだ。

 合計金額だって自動で計算してくれるこの機能は、本当に凄いと思う。


 その情報は、会計時に消去処理がされるから。

 未会計かどうかだって、すぐにわかるようになっているんだよね。

 ―――だから、会計担当になるためには魔力と信頼が必要となる。


 もし、未会計の商品を持って店を出ようとしたら。

 出入口に設置した魔道具がそれを察知して、出入り口をロックしてしまうんだ。


 他にも、録映機ができてからは、店内にも設置していたし。

 対外的な防犯対策は万全だったはずなんだよね。


 でも、最近、どうも在庫数と売上が合わないことが多かったらしくて。

 ―――在庫数も、毎日、魔道具で確認している。


 万引きはされていないのに、こんな事態になって。

 ほとほと困った店長が本部に相談したのが始まりだったんだよね。


 ただ、防犯対策は、対外的なものばかりで従業員にはしていなかった。

 身内を疑うのは嫌だったからね。


 とはいえ、そんなことを言っている場合ではないから。


 漸く、従業員も調べることになって。

 帳簿と出勤記録を照らし合わせて、容疑者を絞って。

 スタッフエリアにも魔道具を設置することになって。


 そして、やっと彼女の罪が発覚したというわけなのだ。


「罪は償ってもらうよ。余罪も含めれば、結構な数だからね。解雇は当然だけど、今月の給金も没収する。追って、罰金も請求するからそのつもりで」

「なっ!私、そんなに盗んでない!」

「盗んだ分の金を払えば終わりだとでも思っているのか?君は罪を犯したんだ。罰金程度で済ますんだから、むしろ優しいと思うけどね?」


 そう言った侯爵の目はものすごく冷たかった。


 それに怯えたのか、娘はもう俯くばかりで。

 これ以上の話もないから、騎士を呼んで娘を自宅まで送り届けてもらった。

 騎士には、彼女の両親に事の次第を説明してもらう予定だ。


「店長、ラディン君もリディちゃんもお疲れ様」


 休憩室にはしばらく沈黙が下りていたんだけど。

 義母上のその言葉で、俺たちもホッと息をつくことができた。


「こんな結果になって残念だわ。できれば、従業員を信じていきたいけれど、商会が大きくなって従業員も増えて、私たちも全員の人となりを完全に把握することはできないものね。これからは、従業員の防犯にも気を配っていくしかないわね」


 そう言われて、その通りだと思う。

 身内を疑いたくはないけど、今回のようなことの繰り返しは避けたい。


 そうして、後日、他店舗での対策についての話し合いをすることになって。

 今日のところはお開きとなった。


 今回の任務は、とりあえず、解決までもっていけたけれど。

 できれば、もう、こういうのはやりたくないもんだよね。


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