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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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77.彼女と彼は任務に乗り出す。

side リディア

 会合が普通に終わってホッとしたわ。


 王宮で開かれたラーメンの試食会で。

 わたしによくわからない絡み方をしてきたレオン様。


 口説かれたと言われれば、そうかもしれないけれど。

 あんなの、お世辞でよく聞くことだし。

 正直、口説き文句にすらなっていなかったと思う。


 だけど、あの時の、無駄に熱っぽかった目がいただけない。

 わたしたちを揶揄うにしても演技過剰だったと思うのよね。

 あれがなければ、ラディだってあそこまで敵対しなかったと思うのに。


 そりゃ、ラディがあんな風に怒ってくれたりしたのは嬉しかったわよ?

 独占欲みたいなものを見れて、ちょっと浮かれたのは事実だ。


 でもね、ラディを不快にしたことは確かだし。

 わたしだって、ああいうのは避けたいから。


 ラディに言われるまでもなく。

 その後もレオン様に近づくつもりは毛頭なかった。


 それなのに、レオン様のほうから連絡があるなんてね。

 しかも、それが、仕事の話となると断れない。


 ラディだって、そこまで大人げないわけではないから。

 渋々ながらも了承してくれて、段取りも取ってくれたのよね。


 そうして、会合に向かったら。


 開口一番に、再度謝罪をされて、本当にびっくりしたわ。

 そこまでしてもらうほどのことでもなかったのに。


 とは思ったけれど、ラディの敵対心はすごかったから。

 これはこれで逆によかったかもしれない。

 それからのラディは少し態度も軟化したようだったしね。


 ということで、似非口説きの件は、これでお終いよ。


 なんて思って、すっきりした気分で本題に入ったら。

 相談内容はまさかの岩塩で。


 そう言えば、この世界ではまだ見たことがなかったから。

 テンションも上がってしまって、またやらかしてしまった。

 伯父様もレオン様も気にはなっただろうけど。

 知識の出処については追及してこなくて助かったわ。


 そうして、来る前とは真逆に心を軽くして。

 岩塩の発見にうきうきしながら帰宅しようとしたら。


 伯父様に引き止められて。


 またラーメン屋のことかしら、なんて気軽に話を聞いたら。

 思わぬ依頼をされて衝撃を受けた。


 どうやら、ここにきて既存店舗で問題が発生したようなのだ。


 確かに、常にすべてが順調なんてことはないわよね。

 それに、確かに、起こり得ることではある。

 前世でも、そういうことはあったから。


 でもでも、なあ………。

 我が商会では起きてほしくなかったわよね………。

 これはショックだわ。


 なんて衝撃を受けたのも、しょうがないと思う。

 任命されたのは、犯罪の捜査だったのだから。


 今回、問題が起きたのは、庶民向けの雑貨店で。

 犯罪が発覚したものの、誰がやったのか、ということまではまだわからなくて。

 現状は、手をこまねいている状態なのだそうだ。


 そこで、わたしとラディに捜査の命が下ったわけだけど。

 これは、さすがに、気分良くできる仕事ではないわよね。


 とはいえ、当然ながら、放置することはできない。


 まずは、実態調査、ということで。

 ここしばらくのラディは、問題が発生した店舗に通っている。


 店長への聞き取り調査と事実確認がメインなんだけど。

 表向きは、新商品の市場調査、ということにしているのだとか。


 そして、その間に、わたしは証拠確保のための魔道具を作っている。


 別に、新たに特別な魔道具を作るということではないから。

 既存の魔道具に手を加えるくらいで、大した手間ではないんだけどね。


 何というか、気分が乗らないから、作業も遅くなってたんだけど。

 漸く、今回必要な分は全部作り終えたかな?というところで。


 ラディが帰ってきた。


「ただいまー」

「おかえりなさい。どうだった?」

「確認できるものはすべてきっちり確認してきたけど、否定のしようがないね。まだ犯人はわからないけど、確実にやられてる」


 あー、そうなのかー。


 ラディの調査によって。できれば。

 やっぱり犯罪なんかなかった、っていうのを期待していたんだけど。

 それは甘かったか。


「そう……。残念ね。わたしのほうも魔道具が出来上がったわ」

「もう出来たんだ、さすがリディだね」


 わたしとしては、時間がかかってしまったと思っていたのだけど。

 ラディが予定していたよりも早くできたならよかったわ。


 そうして、翌日―――。


 こういうことは、早々に行動するに限るから。

 わたしたちは早速、雑貨店まで出向いていた。

 ラディなんか連日のことだから、本当にお疲れ様よね。


「あれ?お嬢様?」

「あ、ほんとだ。今日はお嬢様も来てくださったんですね!」

「ふふ。わたしも来ちゃったわ。久しぶりね」


 この店舗には、アーリア商会時代の売り子さんもいるから。

 わたしを目敏く見つけて話しかけてくれた。


「今日は甘くないのを持ってきたのよ」


 久々だし、せっかくだから、差し入れだって持ってきているわよ?


「やったー!」

「ポテチですか?おせんべい?それとも、おかきとか!」

「うふふ。残念でした。海老せんよ」

「わああ!あれも美味しいんですよね。お酒にもぴったりで」

「酒の肴にしてたの?」

「しません?」

「……まあ、するわね」

「ほらーー!」


 今日わたしが持ってきたのは、平たくて薄い海老せんべいじゃなくて。

 ふわっとした、中華とかにも出てくる海老せんのほうだ。


 塩味だけじゃなくて、胡椒とかでピリッとさせても美味しいから。

 確かにお酒のツマミにはなるのよね。

 ラディもお気に入りのはず。


「持ち帰れるように小分けの袋も入れておいたから、みんなで分けてね」

「はーい!いつもありがとうございます!」


 そうして、わたしは、店内を少し見回ることにした。

 ラディは先に、店長のところに行っている。


 現状も店内には魔道具が設置されているから、それらに異常がないか。

 精霊石に込められた魔力は足りているか。


 商品を見るふりをしながら、そんなことを確認していたら。


「リディア嬢!」


 小声だったけど、いきなり声を掛けられたから肩が跳ね上がってしまう。


「あ、ごめん。驚かせちゃったね。馬車から君たちが見えてね」


 そう言ってきたのは、なんと、レオン様だった。


 確かに、わたしたちは、サティアス邸から自転車でここまで来たけれど。

 まさか、それを見られているとは思わなかった。


「それで、わざわざ?」


 本来はきちんと挨拶をしたいところだけど。

 ここに次期侯爵様がいるなんて知られたら大変だから。

 わたしもそのまま話をさせてもらったけれど。


「実はね、これを渡したくて」

「あ、これは!…………いただいてしまっていいんですか?」

「その為に寄ったんだから。後で、感想を聞かせてくれないかな?」

「もちろん!帰ったらすぐにでも送りますね」

「はは、ありがとう。でも、そんなに急いでいるわけではないから、いつでもいいよ。っていうか……」


 そう言ったまま、レオン様がきょろきょろとし出したから。

 どうしたのかと思えば、ラディを探しているみたいだった。


 だから、更に声を落として、今日のわたしたちの行動について説明したら。


「ああ……。そっか、あの件か。僕も手伝えたらよかったんだけど。僕が関わると大袈裟になっちゃうからね。大変だけど頑張って。あ、そうだ。ラディンベル君にはちゃんと、僕とは仕事の話しかしてないって弁明しておいてね?」


 実際は、レオン様のお付きの方も側にいるけれど。

 確かに、ふたりきりで話しているように見えなくもないか。


 どうやら、レオン様は、結構ラディに気を遣ってくれているようだ。


「了解です。でも、ラディもそこまで狭量じゃないですよ?」

「そうかもしれないけどね、僕には前科があるからね」


 そう言って、レオン様はいたずらっぽく笑ったけれど。

 美形は、どんな顔をしても美形なんだと思い知ったわ。


 そうして、レオン様はすぐに帰られて。

 店内の確認をし終えたわたしも店長室に向かったんだけど。

 スタッフエリアに入った途端に、後ろから声を掛けられた。


 今度はなんだ。


「貴方!ラディンベルさんの奥さんなんでしょう?」

「え?………そうですが、それが?」

「旦那様と一緒に来てるのに、いない隙に逢引なんてどうかと思います!」

「は?」


 思わず声が出てしまったが、そうか、さっきのレオン様との件か。

 早速誤解されて、レオン様の弁明が正しかったことを知る。


「逢引なんてしていませんわよ?」

「あんなに親密そうに話してたじゃないですか!」

「仕事の話しかしておりませんが」

「はああ?」


 なんか、随分と失礼な子だけど。

 どうしてここまで必死にわたしを咎めるのかがわからない。


 初対面よね?

 わたしの対人関係も知らないだろうに。


 しかも、レオン様だって既婚者よ?しかも次期領主よ?

 万が一、不倫するにしたって、こんなとこで堂々とするわけがない。

 まあ、そもそも、するつもりなんかないけども!


 っていうか、もし、相手に非があったとしても。

 初対面相手にここまで言うかしら?


 そこまで思考して、思い出した。

 さっき、昔馴染みの売り子さんにこっそり忠告されたんだった。

 ラディに懸想している子がいるってことを。


 まあ、いつものことだと思って流していたんだけど、そうか、この子か。

 にしたって、好戦的過ぎるけれど。


「何を騒いでいるの?」


 そして、ここでラディが登場なんて、出来すぎているとしか。


「さっきね、レオン様が来ていたのよ」

「は?あの人が?ここに?」

「そうなの。帰宅中の馬車からわたしたちが見えたんですって。それで、わざわざお店に寄ってくれて、声を掛けてもらったんだけど、それを彼女が見て、わたしとレオン様が不倫していると勘違いしたみたい」

「は?」

「なっ……!」


 ラディの反応は予想通り。

 きょとんとして、あまり理解していない模様。


 彼女のほうは。

 わたしがすべて正直に話すとは思っていなかったのか、驚いているわね。


 でも、残念でした。

 疚しいことなんかないんだから、普通に話せるわよ?


「レオン様ね、これを持ってきてくれたの」

「ほら!そんなものまで貰ってるじゃない!私、わかるんだから!それ、宝石の原石でしょう?!」


 さっきレオン様にもらった物をラディに見せたら。

 彼女も食いついてきた。


 なるほど。確かに、そう見えなくもない。

 色もピンクだしね。でも。


「これ、お塩よ?」

「はあ?よくも、そんなひどい嘘がつけるわね?!」


 まあ、そう思われても仕方ないか。

 しょうがないから、魔法で削って少し舐めさせてあげた。


「………っ!」

「しょっぱいでしょう?これは岩塩なの」

「へぇ……。これが岩塩なのか。まさか、こんな色をしてるなんて思ってなかったな。結構きれいなんだね。食べるのがもったいない」


 ラディは、すっかり岩塩に興味津々だ。


「今度、商会でもこの岩塩を扱うのよ。だから、仕事の話をしていたのは本当。逢引なんかしてないわ」

「……………」


 わたしたちのやりとりで、ラディも彼女のことを思い出して。


「ああ、とにかく、彼女の誤解ってことだね。売り子さんかな?早く仕事に戻ったほうがいいよ。リディも、店長が待ってる」

「わかったわ」


 そうして、彼女を置いて、わたしたちは店長室に向かって。

 店長を交えて今後の計画を話し合って。

 店を閉めてから、魔道具を設置して帰宅したわけだけど。


 帰宅後。

 レオン様とのことは、ラディに事細かに説明させていただきました。


 ラディが、店内でもひとりにするんじゃなかった、とかぶつぶつ言ったけど、気にしなくていいわよね?


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