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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第四章 平民ライフ災難編
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76.彼は心穏やかではいられない。

side ラディンベル

 やっぱり、ラーメンは正義だよね。


 義父上とデュアル侯爵とこっそりと進めてきたラーメン屋出店計画も。

 遂に、試食会にまでこぎつけることができた。


 カイン陛下や殿下方の関心を引いてしまったから。

 王宮で試食会を開催することになってしまって。

 リディには、かなり呆れられてしまったけれど。


 結果としては、大成功だったと思う。


 陛下たちも、かなり気に入ってくださって。

 試食会終了後には、何食分ものラーメンをリディに作ってもらっていて。

 各自マジックバッグに収めていたくらいだ。


 ―――後々聞いたところによると。

 こっそりとラーメンを食べていたら、王妃様と王太子妃殿下に見つかって。

 隠れて食べていたということは勿論のこと。

 その食べ方に、かなりの大目玉を食らったということだった。

 ご愁傷様です。


 ということで、人前ではフォークで食べることにしたということだけど。

 それって、裏では啜って食べようとしているってことだよね?


 まあ、陛下たちもお忙しいだろうし。

 時間がないときなんかは、人がいないところでずずっとラーメンを食べるのも、アリなのかな?


 ラーメンのレシピについても。

 陛下たちが気軽に食べられるように王宮には売ることになったけれど。

 基本的には、しばらく、レシピの一般開放はしないことになっている。

 まずは、ラーメン屋を成功させないといけないからね。


 それに、どうしたって、ラーメンは下準備に時間がかかる。

 家庭で作るにはハードルが高いんだよね。


 なんて話が出たら、やっぱりここはリディの出番なわけで。

 インスタントラーメンという乾燥麺と粉末スープのセットを提案してくれた。


 一から作るよりも味は落ちるということだけれど。

 かなり手軽にラーメンができるということだったから。


 当然、販売に向けて開発を始めたよね。

 俺たちとしては、ものすごく人気がでる商品になると踏んでいる。

 騎士団とかには、まとめ買いされること間違いなしだろうしね。


 ああ、そうだ。

 試食会は、その後、サティアス邸とミンスター邸でも開催されていて。


 サティアス邸ではリアン商会のメンバーに食べてもらって。

 彼らも気に入ってくれたようで、早々の店舗オープンを望んでくれている。


 ミンスター邸には、マルコさんとバルスさんのギルド長コンビと。

 ダンさん夫妻を招いたんだけれど。


 男性陣はもちろんのこと。

 ミンスター夫人やダンさんの奥さんまでもが相当嵌まってしまって。

 ランドルとマリンダでの出店も急かされる破目に陥った。

 ありがたい話だけどね。


 そんなわけで、現状は。

 インスタントラーメン開発と出店準備が急ピッチで進められていて。

 ラーメン事業には期待が寄せられている。


 リディは、調理指導に大忙しだけどね。

 ドラングルの仕事もあるから本当に大変だと思うけど。

 このふたつに関しては、俺は役に立てないから。

 歯がゆいけど、やっぱり、影ながらサポートしていくしかないんだよね。


 ということで、相変わらず家事や雑用は俺の仕事だ。


 それが苦な訳でもないし、全然嫌じゃないんだけど。

 あまり頭を使わない作業というのは、無駄に思考を拗らせるのだと知った。


 俺の頭にあるのは、もちろん、王宮の試食会で会ったレオン様だ。

 デュアル侯爵のご子息で、次期侯爵だから、俺も強くは出れないけれど。


 だからって、リディに色目を使うのは見過ごせない。


 試食会の後、謝罪の手紙が届いて。

 もう失礼なことはしない、と約束してくれたけれど。


 俺が集めた情報では。

 レオン様は、相当、浮名を流している人のようで。

 まあ、あの顔だし。致し方ない部分もあるんだろうけど。


 だとしたら、女性の扱いだって熟知していると思うから。

 あの場でも、もっとスマートにできたはずなんだけどね。

 わざわざ俺の前で、わかりやすく口説く必要はなかった。


 デュアル侯爵や義父上からは。

 俺たちを揶揄って面白がっていただけで、本気じゃないから。

 って言われたけれど。


 でも、俺は、見てしまったのだ。

 レオン様が、リディを見た瞬間の顔を。


 あれは、一目惚れをしたときの顔だったと思う。

 頬を紅潮させて、固まってしまっていたしね。

 かなりの衝撃を受けていて、心臓もバクバクしてそうだった。

 すぐに立て直して、平静を装っていたけどね。


 だから、実際にリディの前に出たときにうまくできなかったんだと思う。

 下手な口説き文句を言ったのだって。

 本当の気持ちを誤魔化すためなんじゃないかな?


 なんては思うけど、もちろん、本人に確かめる気はないし。

 リディに伝えることもない。


 俺はリディを信じてるしね。

 おまけに、綺麗って言われてうれしいのは俺だけって言ってもらえたから。

 さすがに照れたけれど、すごくうれしかったな。


 思い出しただけでも、また耳が赤くなりそうだったんだけど。


「ラディ?」


 こんな時にリディに話しかけられたから、ドキッとしちゃったよね。


「え?あ、どうしたの?」

「えっと、あのね?」

「ん?」

「レオン様から、またお手紙が届いて」

「あ″?」


 思わず、低い声が出たけど、許してほしい。


「あ、えっとね、あの、お仕事のお話なのよ?」

「仕事?」

「そうなの。お塩の件で相談があるんですって」


 そう来たか。

 デュアル侯爵領の特産である塩については、食品店舗で扱っていることもあって、かなりお世話になっている。


 その件で、と言われたら、さすがに断れないな。


「それで、一度、会合を設けたいってお手紙に書いてあるの」

「………。それは、行くしかないか。でも、俺も行くよ?」

「勿論よ。サティアス邸まで来てくれるみたいだから、一緒に来てね?」


 そう言われて、当然間髪入れずに頷いたけれど。


 でも、今更、塩の相談ってなんだろうね?

 リディ発案のハーブやスパイスを混ぜた塩や、香りづけをした塩がかなり評判が高くて、種類を増やしていることは聞いてる。

 ただ、その開発は、専門部隊がいるはずなんだけどね?


 リディも相談内容までは思いつかないようで。

 俺たちは、何を相談されるのか見当もつかなかったんだけど。


 会合に行かなくては話は始まらないからね。

 まずは、日程調整をした。もちろん、俺が。


 そして、レオン様との会合当日―――。


 開口一番に。


「先日は申し訳なかった!あれは、自分でも戯れが過ぎたと反省している。もうあんなことはしないから、どうか、これからもよき付き合いをお願いしたい」


 次期侯爵に頭を下げてそう言われてしまったら。

 俺たちも許さないわけにはいかないから。


 頭を上げてもらって、もうリディを誑かさないように釘を刺しておいた。

 それに、ぶんぶんと首を振られて。

 あまりにも必死だったから。

 俺も、ちょっとだけ、態度を改めようと思ったけど、それは内緒だ。


「それと、忙しいのに呼び出して申し訳ない。来てくれてありがとう」

「いえ、あの、お塩の件だということなんですが」

「そうなんだ。実は、領内でしょっぱい石、と言うか、岩が見つかってね」

「まあ!岩塩が見つかったんですか?」


 レオン様の話に、リディが目をきらきらさせて前のめりになったから。

 それをこっちに引き戻して、リディに詳しい話を聞いたら。


 岩塩というのは。

 海水の水分が蒸発して、塩が凝縮して結晶化したものだということだった。


「さすが、リディア嬢。本当に博識なんだね」

「え?いえ、そうでもないと思いますけれど」

「リディア、それ、人前で言わないほうがいいよ」


 同席していたデュアル侯爵がリディに突っ込んでたけど、俺もそう思う。

 リディが博識じゃなかったから、一体、誰が博識なんだ。


「ということは、その岩も、食べられるということだよね?」

「はい。お塩には変わりありませんから。長い時間をかけて凝縮されたお塩なので、海水から作る塩よりも旨味があるんですよ」

「へぇ。そうなんだ」

「ある程度砕いたものを販売して、ご自宅では、胡椒のようにミルで更に砕いてお料理の仕上げに使うと、味のアクセントにもなっていいと思います」


 ほう。なるほど、なるほど。


 ミルっていうのも、便利なんだよね。

 最初から細かく砕いてある胡椒もいいけれど。

 やっぱり、食べる直前に砕いたほうが香りも風味も増すと思う。


 塩でもそれと同じようにするというわけか。

 塩だから香りはないかもだけど。

 何となく、パンチの効いた味になりそうだ。


「なるほどね。それはいいことを聞いたな。父上、早速ですが商品化しても?」

「そうだね。リディアがここまで断言するんだからね。商品化するしかないね」

「え、そんなにわたしの意見って重要です?」

「「重要だよ」」


 思わず、俺も侯爵とハモっちゃったよね。


「そう言われると、提案し辛いんですけど。もしかしたら、ハーブやスパイスを混ぜた塩は、海水塩よりも岩塩のほうが合うかもしれません」

「そうなのかい?」

「実際に作ってみないと何とも言えないんですけど。もし、余力があれば、一度試していただけませんか?」

「ああ、もちろんだ。ぜひ、やってみよう」


 そうして、岩塩とやらの販売が決まって。


 岩塩には、実はいろいろな種類があるだとか。

 ―――採れる場所の地層によって、含まれるものが違うらしい。

 それぞれ色も味も違う、という話を聞いたり。


 岩塩周辺は、関係者以外の立ち入りを禁止することになって。

 警備についても話し合ったんだけど。


 ここで、同席していた義母上から、リディに質問が入った。


「ねえ、リディアちゃん。岩塩のことじゃないんだけどね、最近、お塩もボトル入りのものが売られているでしょう?あれ、便利なんだけど、お塩が固まって出なくなっちゃうのよね。どうにかならないかしら?」


 ああ、これ、よく相談されるんだよね。


「それ、湿気てるだけだから、乾燥させればいいのよ。生のお米を入れておけば水分を吸収してくれるわ。あ、お米は炒っておいたほうが効果的よ」

「あら、そうなの?もう、知ってるなら、もっと早く教えてくれればいいのに」


 いや、そう言われてもね?

 聞かれなければ答えようもないっていうか。


「珪藻土とかがあればいいんだけど」


 おっと。

 また、リディが前世知識を持ち出した。

 まあ、ここにいるのは侯爵たちだけだから何とかなるかな?


「ケイソウド?」

「あ、水分を吸収してくれる土があるらしいのよ。本で読んだことがあるの」

「へえ。本当に、リディア嬢は何でも知っているんだな。そういうことなら、領内にそんな土がないか探してみよう」

「あ、いえ、その、何かのついでとかで」

「うん、岩塩のこともあるし、最終的にはそうなるだろうけど。気にしていれば見つかりやすいだろうから」


 確かに、レオン様が言うことには一理ある。

 知らなければ見過ごしちゃうからね。


「今日は、色々なことを教えてもらえて、本当に助かったよ。ありがとう」

「お役に立てたならよかったです。岩塩の発売、楽しみにしていますね?」

「それは、なかなかのプレッシャーだな。頑張っていい塩を作ってみるよ」


 そうして、塩の相談はお開きとなった。

 想定よりも有意義な話ができたからよかったよね。


 それに、レオン様の態度が改まっていて、少し安心したかな。

 完全に警戒を解くことはできないし。

 絶対に、リディとふたりにはしないけどね。


 そんなことを思いながら、サティアス邸を辞そうと思ったんだけど。


「ああ、ごめん。実は、別件もあるんだ」


 デュアル侯爵からそう言われて。

 話を聞いた俺たちは。


 ここにきて、新たな任務を引き受けることになった。


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