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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第三章 平民ライフ出張編
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72.彼と彼女の出張は続く。

side ラディンベル

 リディを止めるなんて、できなかったよね。


 辺境伯領で魔獣が出たって聞いたときから。

 援護に行くって言い出すんじゃないか、とは思っていた。


 俺だって、できれば討伐の助けにはなりたいと思ったし。

 ましてや、兄上やシア義姉さんも戦っているんだから。

 援護に行きたい気持ちがなかったわけじゃない。


 でも、リディを危険な目に遭わせるほうがよっぽど嫌だったから。


 リディの前では魔獣の話は避けていたし。

 可能ならば、俺ひとりで援護に行こうと思ってたんだけど。


 リディも見て見ぬふりができるタイプではないんだよね。


 おまけに、リディが主張したように。

 リディが使える魔法は、確かに今回の討伐の助けになる。


 その気になったリディを止めるのは容易ではなくて。

 リディの意思は固いし、自分の有効性を理詰めで説明されたら。

 反対できる人なんていないと思う。


 その筆頭が俺だ。


 ということで、俺とリディも討伐隊に加わることになって。

 ―――当然ながら、リディをひとりでなんか行かせない。


 討伐隊が集まっている詰め所に来たわけだけど。

 リディが使える特殊魔法について説明したら、場が沈黙に化した。


 うん。気持ちはわかる。

 俺だって、初めて聞いたときは言葉を失った。

 そもそも、無効化魔法や反射魔法は、知ってる人すら少ないのだ。


 シェリー様なんて、聞いたこともない言葉でリディに話しかけてたし。

 おまけに、その後も俺たちには意味の解らないことまで口走っていた。


 シェリー様は、恐らく。

 驚いたり、感情が高ぶると、前世のことを口にしてしまうんだろうな。

 この事は、あとでラルフクト様にも話しておこう。


 でも、今は、話を進めるほうが先だよね。


「リディは、魔道具も持ってきているんです」

「魔道具?」

「今回、シェリー様たちとお会いできると思って、お土産を用意してたんですよ。結界が張れる魔道具と、無効化魔法や反射魔法を展開できる魔道具なんですけど、お役に立ちませんか?」


 正直、この魔道具を届けることだけでも、俺たちが来た意味はあると思う。


 ―――この魔道具は、殿下方や魔術師団にも目を付けられていて。

 辺境伯領への転移の条件には、この魔道具の解説が含まれている。


「そんなものまで作ってくれたの……?まさに、某猫型ロボット……」


 シェリー様は唖然としているけれど。

 更には、また意味の解らないことを言っているけれど。


 俺としては、録音機――リディはボイスレコーダーと言っていたけど、俺たちには馴染みのない言葉だから、録音機と名付けられた――のほうが驚いたよね。

 だからって、ここでその話をしないほうがいいのはわかってる。


「相変わらず、リディアは規格外だな」

「リディア様!本当にすごいです!!」


 兄上たちは通常運転だね。


「そんな魔道具があって、リディアが魔獣に魔法を放ってくれるならば、戦法も変わるな。リディア、現場に出るのは怖くないか?」

「大丈夫です。ここには信頼できる人がたくさんいますから」


 そう言ったリディの目には、確かに決意が浮かんでいたから。

 ラルフクト様やシェリー様も受け入れてくれて。

 俺たちは、討伐計画を練り直した。


 今回の魔獣出現について、詳しいことを聞いてみたところ。


 今のところは、雑魚ばかりだけど数が多いとのことで。

 兄上たちの援護は願ってもないことだったようだ。


 ただ、その雑魚たちはどうも統制が取れているらしくて。

 親玉がいると睨んで、ここしばらくは魔獣の拠点を探っていて。

 昨日やっと拠点を探し当てたところだそうだ。


 騎士や冒険者には怪我人も出ているし、疲労も溜まってきているから。

 もう少し休んでから奇襲をかける予定だったみたいだけどね。


 リディが持ってきた魔道具やリディの魔法があるならば。

 できれば早々に決着を付けたいということで、決行は明日となった。


 その後は、具体的な戦法を取り決めて。

 集まっている騎士や冒険者にもそれを伝えて。

 その日は、十分に休んでおくことになって。


 そして、翌日の奇襲決行日―――。


「戦況が悪くなったらすぐに撤退する。無理はしないように」

「「「はい!」」」


 ラルフクト様が騎士たちにそう言って。


「リディも絶対に無理しちゃだめだよ。危ないと思ったらすぐに結界を張って」

「わかったわ。ラディも気を付けて」


 俺もリディに念を押して。


 俺たちは、魔獣の拠点に向かった。


 まずは、シェリー様が、魔獣の拠点に盛大な攻撃魔法を打ち込んで。

 穴倉だったから、それだけでもある程度は葬ることができたけれど。


 逃げ惑って出てきた雑魚たちは、騎士や冒険者に任せて。

 ―――前衛部隊には、自身に結界を纏える魔道具を渡してある。


 俺たちは、親玉がいると思われる穴倉の奥地へと急いだ。


 崩れてしまったところはシェリー様とリディが魔法で歩きやすくしてくれたし。

 途中で魔獣に阻まれることはあったけれど。

 それらは、先頭にいたラルフクト様をはじめ、兄上やシア義姉さんがあっけなく屠っていたから、俺はリディを守ることに注力して歩を進めて。


 最奥地までたどり着いたら。

 親玉らしい大きな魔獣とその部下みたいな魔獣が、これまで集めたらしいお宝らしきものを集めていたところだった。


 俺たちはすぐに臨戦態勢に入ったんだけど。

 魔獣もこぞって魔法を放ってきたから。


「リディア!」

「はい!」


 リディがすぐさま無効化魔法を放って。

 俺たちも、昨夜、急遽リディが作ってくれた相手の魔力を封じる魔道具を魔獣に投げつけた。


 当初は、反射魔法を放って、自滅してもらう方法も考えたんだけどね。

 魔獣から放たれる魔法に因っては反射すると周辺にも影響がでるから。

 無効化魔法で対抗することにしたんだよね。


 そうして、魔獣たちの魔法を封じてからは。

 簡単に言えば、ラルフクト様たちの圧勝で。


 シェリー様の攻撃魔法と兄上とシア義姉さんの援護のおかげで。

 魔獣にも隙ができて。

 そこに、すかさずラルフクト様が止めを刺して。


 見事な連係プレーで、サクッと親玉と部下の魔獣を屠ってしまった。


 俺は、リディを守りつつ。

 気配探索で他にも魔獣が隠れていないかを確認してたんだけど。

 ここにはもう居ないようだったから、それを報告して。


 ラルフクト様と兄上が、屠った魔獣を引き釣りながら穴倉を出たら。

 雑魚たちの討伐が終わった騎士たちが出迎えてくれた。


「こいつが親玉だ!無事、討伐が完了した!みんな、ありがとう!」

「「「おおおーーーーーー!!!」」」


 騎士や冒険者は抱き合って喜んで。


「リディア様!お怪我は!お怪我はありませんか?!私、心配で心配で!」


 穴倉を出るまで警戒を解くことなく周囲に目を配っていたシア義姉さんも。

 ラルフクト様の言葉を聞いた途端に、リディに駆け寄って。

 リディの無事を確認していた。


 それを見たシェリー様から。


「ねえ、あれ、本当に、冒険者のレティなの?」


 そう言われて俺も返事に困ったけど、これだけは確かだ。


「シア義姉さんは、リディの大ファンなんですよ」

「そう、なの……。まあ、わからなくもないけど、それにしても、別人すぎて驚くわ。私が知ってる冒険者のレティは、クールっていうか、冷静で口数も少なくて、無駄なことはしない人なのよ」


 うわー。そんなイメージだったら、別人以外の何物でもないね。

 確かに、シア義姉さんは剣を持てば寡黙だけど。

 そこまでクールに決めることなんてできないと思うんだけどね。

 ドラングル時代のシア義姉さん、相当、演じてたんだな。


 そんなことを考えていたら、すぐそばで魔獣の解体が始まったから。

 俺も手伝って。


 戦利品――魔獣の素材や魔核はいいお金になる――を持って、詰め所に戻って。

 簡単にだけど、祝杯をあげた。


 その際に、リディは、マジックルームにあった食材を惜しみなく使って。

 豚汁やおにぎり、唐揚げなんかを作ってあげていたから。

 みんなにもすごく喜ばれていた。


「リディア、今回は本当にありがとう」

「レティもアンディもラディンベルもよ。来てくれて、本当に助かったわ」


 ラルフクト様とシェリー様にも感謝されて。

 その後は、みんなで騒ぎまくって楽しかったな。


 そうして、翌日は、辺境伯邸に招待いただいて。


 まずは、貿易のことを報告したら。


「チッ!あの商会め!私がいたら、コテンパンに言い負かしてやったのに!」


 とシェリー様に言われて。

 今回の見本品も、気前よく、すべて買い取ってもらって。

 今後のことはアンヌ様に確認をとってもらうことにした。


「レティたちは、武器の新調に来たのよね?」

「はい。新事業を始めたら、間者とか盗賊とかが増えてきたんで、工場の警備を固めようと思って。そのためのいい武器がないか、探しに来たんです。この時期に来たら、リディア様にも会えそうだったんで!」


 シア義姉さん、ぶれないね。


 でも、そうか。

 工場も探られ始めたのか。それは気を付けないといけないよね。


「そうだったのか。ならば、いい鍛冶屋を紹介するぞ」

「それは、ありがたい」


 ラルフクト様と兄上もすっかり仲良くなったほうで何よりだ。


「儲かれば儲かるほど、そういうことは大変よね。リディアたちも、商談が決裂したあの商会に気を付けたほうがいいわよ。奴らも間者を放つかも」


 なるほど。確かに、それはあり得る。

 そう思って、リディとも顔を見合わせて頷いた。


 まあ、商会の警備と技術管理は万全だけどね。


 なんて、寛いではいたけれど。

 心配してくれているだろうアンヌ様やデュアル侯爵のためにも、俺たちは、早々に王宮に戻らなくてはならないから。


 兄上たちが乗ってきた馬に同乗させてもらって。

 ―――兄上の馬に兄上とシア義姉さん、シア義姉さんの馬に俺とリディが騎乗したから、シア義姉さんが悔しそうにしていた。


 急いで、王都に向かったら。


「リディア!無事でよかった!」


 アンヌ様が、泣きながら、リディに飛びついてきた。

 ああ、これは、想像以上に心配させてしまったかもしれない。


「本当に無事でよかったよ。大活躍だったようだね。話は聞いたよ」


 どうやら、ラルフクト様が殿下方に報告してくれていたようだ。


 その後は、アンヌ様と侯爵に、兄上とシア義姉さんを紹介して。

 アンヌ様が兄上たちにも討伐の御礼を言って。

 俺たちからも討伐の報告をしてから兄上たちと別れたんだけど。


 リディは、すぐに魔術師団に連れて行かれてしまった。


「リディアの魔道具に興味津々でね。効果の確認のために、自分たちも辺境伯領に行くとか言い始めて、殿下たちが止めるのに必死だったよ」


 そりゃ、リディの魔道具はすごいけど。

 ドラングルって他国の人を見下すって聞いてたのに。

 魔術師団に至っては、魔法技術が高ければそうとも限らないのかな?


「ああ、でも、討伐のこともあるから、無効化魔法と反射魔法の付与や結界の魔道具の解説は許可したんだけど、録音機についてはまだ秘匿しているんだ。なんでもかんでもって訳にはいかないからね。それは、殿下方にも了承してもらってるよ」


 なるほど。それは、そうだよね。


 そうして、俺と侯爵は。

 俺たちが討伐に行った後、侯爵が交渉してくれたことや、今後の輸出入の方法について話しながらリディを待っていたんだけど。


「解説はしたんだけど、無効化魔法と反射魔法を使える人が少ないうえに、使えても、魔道具造りには慣れてないらしいの。だから、また講義に来て欲しいって言われてしまって。それと、しばらくは、わたしが作った魔道具を輸出してほしいって言われちゃったんだけど、どうしよう?」


 これには、俺も侯爵も苦笑いをするしかない。

 リディは、また、新たな商売を持ってきたってことだね。


 どうやら、俺たちの出張は、これからも続きそうだ。


 このお話で第三章終了となります。

 最後の方は、お話の進みが駆け足になってしまってすみませんでした。


 ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございます。

 もしよろしければ、引き続き、第四章もお付き合いくださいませ。


 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


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