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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第三章 平民ライフ出張編
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69.彼女と彼が報告した結果。

side リディア

 シェリー様たちの滞在も、気づけば明日が最終日。


 ラルフクト様が仰っていた通り。

 ここしばらく辺境が落ち着いていたからこそ、何とか、国を出てこれたものの。

 とは言え、そうは長く空けられない、ということで今回の滞在は五日間なのだ。


 移動を考えれば、実質、三日くらいしかゆっくりできないし。

 おまけに、毎日、午前中は我が家の雑用を手伝ってくれたり。

 ラディの鍛錬に付き合ったりしていて。

 ―――シェリー様は、剣は苦手で、戦闘はもっぱら攻撃魔法とのことで。

 我が家の精霊相手に手合わせをしている。それはそれでいい訓練らしい。


 せっかく来ていただいているのに。

 大したおもてなしもできてなくて申し訳ないって思ってたんだけど。


 シェリー様曰く、今回は本当に、お刺身を食べにきただけのようで。

 ランドルでのお買い物や焼き肉屋さんはもちろん。

 マリンダの海や港にも行けたから。

 想定以上に楽しい、と言ってもらえて、一安心だ。


 ―――実は、シェリー様たちはドラングルの海にも行ったことがないらしくて。

 実際、海や港では、大はしゃぎだった。


「全部楽しいけど、一番楽しんでるのは、リディアのお料理よ」


 そう言われたら、わたしも張り切ってお料理しちゃうわよね。


 初日にお刺身やお寿司をお出しして。

 二日目は、パスタランチに焼き肉だったから。


 その後は、シェリー様のリクエストを叶えるべく。

 肉じゃがに魚の煮つけ、炊き込みご飯の和食ランチを作ってみたり。 

 蟹あんかけやエビマヨ、海鮮炒めや炒飯等の中華料理を振舞ったり。

 カレーやハンバーグ、オムライスなんかをお好みでお出ししたら。


 ラルフクト様たちのお口にもあったようで。

 みなさん、ばくばく食べてくれて嬉しかったわ。


 だから、今回の最後の晩餐はものすごく悩んだんだけど。

 思い付いた料理をラディに伝えたら。

 ラディも大好物だから、機嫌よく準備を手伝ってくれた。


「え!まさかのすき焼きにしゃぶしゃぶ!この世界で食べれるだなんて!リディア、愛しているわ!」

「うふふ。お好きなようでよかったです」


 すき焼きは、各々に小鍋を用意して。

 真ん中にしゃぶしゃぶ用のお鍋を置いたんだけど。

 みんなでひとつの鍋を突くっていうのは抵抗ないかしら。


「野宿が基本の騎士たちよ?いつものことだわ」


 わたしの不安をよそに、シェリー様がそう言ってくれて。

 他の三人にも食べ方を伝えて。


「はーーー。最高ね。すき焼きだわ。しゃぶしゃぶだわ。夢のようだわ」


 シェリー様が蕩けた表情をして食べ始めたら。

 ラルフクト様たちも、負けじと食べ始めた。


「シェリーが見ただけであそこまで喜んだから、どんな料理かと思えば。これも、本当に旨いな。ここは魚も旨いが、肉も旨い」

「何を食べても美味しいですね。やっぱり移住しましょう」


 お料理に喜んでもらえるのはうれしいけれど。

 カッツェさん、話をそこに戻すのはやめてください。


「え、でも、こちらでいただいたお料理は、これからも食べられますよね?」

「ん?そうなのか?」

「奥様なら再現できますよね?」

「無理よ?」


 シェリー様、即答ですね。


「前世の記憶があれば作れるんじゃないんですか?」

「私が?できないに決まってるじゃない。あのね、記憶があったって、作れるとは限らないのよ。何事にも向き不向きがあるの。私、前世でも料理できなかったもの。それに、多分、私に刃物持たせたら大惨事になるわよ?」

「「「………………………」」」


 ああ、前世のシェリー様は料理音痴だったのか。

 それならば、確かに再現は難しいかもしれない。


 尚且つ。聞けば、シェリー様は、剣が苦手というよりも。

 むしろ、剣を持たせたら味方すら危険に陥らせるらしい。


 それを思い出したのか、ラルフクト様たちは顔を青くしていた。


 まあ、包丁も剣も刃物だものね。

 そういう話なら、ぜひとも、刃物を持たせるのはやめてほしい。


 そうして、なかなかに残念な空気になってしまったんだけど。

 ここでラディが助け舟を出してくれて。


「あの、全部じゃないんですけど、リディのレシピは売られてますよ?」


 それを聞いたラルフクト様たちは一気に元気になり。

 食欲も取り戻して、これでもか、というくらい食べてくれた。

 よかった、グラント家からお肉をたくさん貰っておいて。


 そして、翌日。滞在最終日。


 最後にもう一度、みんなでバスケをして。

 お刺身や焼き魚、南蛮漬けの魚尽くしランチでお腹を満たして。

 売られている全ての異世界レシピを買い上げて。


 シェリー様たちは帰国された。


 何度も何度も感謝されて、恐縮してしまったけれど。

 我が家での時間を楽しんでもらえたようで何よりだ。


「リディ、お疲れ様。今回は、本当に驚きの連続だったね」

「ラディもお疲れ様。でも、そうね。本当に驚いたわ。まさか、お仲間に会うだなんて思ってもいなかったもの」


 シェリー様が転生者だったことには、本当にびっくりしたけれど。

 いい出会いだったと思う。


 お手紙のやりとりもしてもらえることになったから。

 これからも、いいお付き合いができるとうれしいわ。


「それなんだけどね、義父上と義母上には話しておいたほうがいいと思うんだ」

「そうよね。乙女ゲームのこともあるし、まずは、お父様とお母様に話したほうがいいわよね」


 そうして、わたしたちは、シェリー様たちを見送った後。

 両親に手紙を書いて、近々相談したいことがあることを伝えたんだけど。


 ―――――それから、数日後。


 何がどうしてこうなったのか。


 今、わたしたちは。

 第二回餃子パーティーの真っ最中である。


「本当に、君たちは、毎回すごい話を持ってくるね。しかも、いつも大きな利益を齎してくれてありがたいよ」


 そう言ったのは、クリス王太子殿下だ。

 今回は、アラン殿下までいらっしゃる。


「本当にすごいです。加工肉は売り切れ必至ということですし、焼き肉屋も焼き鳥屋も、かなり繁盛していると聞きました」

「スモーク商品は酒のツマミに最高だしね。ハーブが混ざった塩や缶詰の新商品は、王宮の料理人にも好評だよ」

「肉の部位販売も庶民が喜んでいるそうですよ。薄切り肉やミンチなんかは安く提供されていますからね、以前よりも肉を食べる機会が増えたようです」

「粉末スープも、簡単にスープが作れて便利ですよね」


 殿下方や側近の方たちが口々に褒めてくれているけれど。

 その話は、わたしたちも両親から聞いている。

 受け入れられたうえに、好評で、本当によかったと思う。


「君たちのおかげで、我が国の食文化が向上して父上も喜んでいる。だから、ここ最近の君たちの功績に対して褒美を考えていたところだったんだが、その褒美を与える前に、まさか、ドラングルとの貿易や技術提携の話まで持ってきてくれるとは思ってなかったよ」


 あ、やっと、本題に入りましたね。

 褒美は辞退したいところだけれど。

 それよりも、雑談で餃子パーティーが終わるんじゃないかと心配してました。


 こうなったのも。

 そもそもは、シェリー様たちの件を報告したところから始まったのよね。


 当初の予定通り。

 わたしとラディは、まず、わたしの前世の記憶のことを知っている両親だけに話を通したんだけど。


 シェリー様のことや、乙女ゲームのことを話したときは。

 さすがの両親も固まってしまって。

 再起動に時間がかかって大変だったけど。


 魅了魔法のことも含めて、今回の報告やシェリー様たちのご要望を伝えたら。

 話の持っていき方や話す内容を吟味してくれて。

 その上で、必要事項だけをルイス伯父様に伝えてくれたのよね。


 そして、話を聞いた伯父様が陛下に進言してくれて。

 殿下方まで話が下りたことはわかる。


 わかるけれど。

 いくら、今後の対応を教えてくれるからって。

 餃子パーティーにする必要はなかったと思う。


 これは、多分、また、食べたかっただけなんだろうな。

 それと、アラン殿下にも食べさせたかったんだろうな。

 この仲良し兄弟め!


「君たちの予想通り、アンヌは嫁いだときから動いていてね。水整備や魔道具なんかはドラングルの王太子殿下にも話をしていたようだよ」


 この話は、わたしたちもアンヌ様からの手紙で先日知ったばかりだけど。

 そうよね、アンヌ様が黙ってやり過ごすわけがないもの。


「だからって、すべてを一気にやるわけにもいかない。まずは、水整備事業から始めることになっていたそうだ。まだ詳細を詰めているところだから、臣下や民が知らないのも無理はないな」


 なるほど。


「そんな状況だから、水道は、辺境伯たちにも待ってもらうことになる」


 そうなるわよね。

 シェリー様たちもそろそろ話を聞いたかしら。


「そういうわけで、魔道具は後回しになっていたんだが、今回、話が出たからね、ルイスを筆頭にリアン商会も動いてくれることになった。魔道具以外の商会の商品を含め、一部は技術提携となるけど、貿易を始められそうだよ」


 聞けば、魔石仕様の魔道具の共同制作の話もあがっているという。

 まずは、商会で試作品を作るところから始めるらしいけれど。


「ただ、缶詰とレトルト食品はね、取り扱いに注意が必要だから、友好同盟なり、何らかの対策を取ってからの貿易となるけどね」


 そうよね。

 保存食を輸出したら攻め込まれた、なんてことになったら目も当てられない。


「貿易で言えば、米やジングの調味料は、我が国からも輸出する予定です」


 え?そうなの?


 どういうことかと思えば。

 グリーンフィールでの米や調味料の消費量がかなりあがったことで。

 今ではジングからの輸入分だけでは賄えない位の勢いなのだそうだ。


 そこで、グリーンフィールからは缶詰や鰹節の技術を提供して。

 ジングからは、米の栽培や麹を使った調味料の技術を提供してもらうことになったらしい。


 しかも、既に、北部の王家直轄領には田んぼが出来上がっているという。


 これには、わたしもラディも驚いたわよね。

 ジングとの技術提携の話は前にも聞いたけど、進化してるわ。


 しかも、輸出できるくらいに栽培しているなんて。

 グリーンフィール、凄すぎる。


「そして、問題の魅了魔法だけどね。リディアの前でこんな話をするのは申し訳ないけど、実は、近年、どの国でも王族や高位貴族の婚約破棄が横行しているんだ。我が国でも注意はしていたんだが、まさか、魅了魔法を使った国があったなんてね。私たちも警戒を強めることになったよ」


 え、それって、わたしやシェリー様だけじゃなかったってこと?

 なんてことだ。


「魅了魔法は古代魔法で、今では使える人はいないと言われていた魔法だ。しかも、魅了に限らず、精神作用のある魔法は基本的にどの国でも禁止されているのにね。よく使おうと思ったものだよ」


 精神作用のある魔法については、わたしも勉強した。

 だから、余計にシェリー様の話が信じ難かったのよね。


「リディアたちだから話すけど、我々王族は、精神作用のある魔法を防ぐ魔道具は常に身に着けている。でも、今回話を聞いて、魅了防御に特化した魔道具も身に着けることになったよ。精霊王も協力してくれたしね」


 ああ、ダズルなら、それくらい作れそうね。

 よかったわ、すぐに対応することができて。


「こんな感じだよ。今回の件は、大方対応できてるかな?」

「はい。色々とありがとうございました。今日も、わざわざすみません」

「いやいや。今日の一番の目的は餃子パーティーだからね」


 相談したすべてに対応していただいて、本当に感謝しているけれど。


 でも、正直、餃子パーティーに第二回があるなんて思ってなかったわよね。

 確かに、以前、第一回と口走ったのはわたしだけれども!


「次回は、父上も来たいと言っていました」


 陛下ってば、なんてことを。

 心の底から、やめてほしいと思う。


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