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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第三章 平民ライフ出張編
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67.彼女はお仲間の境遇を聞く。

side リディア

 まさか、そんなことが起こり得るなんて。


 シェリー様が転生者だということがわかって。

 でも、そのことを他の人には話していないようだったから。

 わたしもラディも言動に気を付けようと思った矢先。


 わたしが失態を犯してみんなに話すことになってしまって。

 すごく申し訳ない気持ちでいっぱいだったのだけど。


 シェリー様は、いつかは話そうと思っていたようで。

 むしろ、話す機会を作ってくれてありがとう、と感謝してくれて。


 シェリー様もラルフクト様も何だかすっきりしたお顔になったから。

 ―――シェリー様は隠しごとをしていることに気が引けていて。

 ラルフクト様は、違和感に気づきながらも聞けなかったようだ。


 ホッと一安心。なんて思っていたのに。


 わたしとラディがこの国に来た経緯を話したら。

 シェリー様が、とんでもないことを言い始めた。


 わたしが悪役令嬢?

 しかも、乙女ゲームと同じことがこの世界で起こってる?


 そんなこと、起こり得るんだろうか。


 さっきのラルフクト様の気持ちが、ものすごくわかるわ。

 到底信じられないようなことが実際に起きているなんて。

 わたしの前世の話をしたときのラディもこんな気持ちだったのかしら。


「私が前世のことを思い出したのは七歳の時だったの。自分がプレイしていた乙女ゲームの登場人物になってるんだもの。本当に驚いたわ」

「ってことは、七歳までまったく気づかず?」

「七歳の時に頭を打ったのよ。それで思い出したのか、本当のシェリーはその時に亡くなって、私がそこに入り込んだのかはわからないけれど。とりあえず、前世で私が死んだのは確かね」


 詳しく聞けば聞くほど信じられないことばかりだ。

 でも、実際にシェリー様はここにいて。

 わたしと同じように、前世の、異世界の記憶を持っている。


 わたしはその記憶だけで、シェリー様の話を信じられるけど。

 ラルフクト様たちはそうはいかないわよね。

 今も、唖然としたままだ。


 今更だけど、わたしの話を信じてくれたラディって、本当にすごいわ。

 よく信じてくれたわよね。あの時よりも感謝が募る。

 あとで御礼を言おう。うん、今更だけど、再度御礼を言おう。


「死んだときのことを覚えているのか?」

「覚えてるわよ。知らない人にいきなり刺されて死んだの」

「通り魔にあったんですか!?そんな……」

「あー、もう。みんなそんな顔しないで。確かに前世ではそんな最期だったけど、今はこうして、ここでみんなといるわけで。第二の人生って感じよ?」


 シェリー様は、あっけらかんとそう言うけど。

 きっとやり残したこととかあったんだろうな。

 この世界では十分に楽しんで寿命を全うしてほしいわ。


「わたしは、前世の自分のことはまったく覚えてないんです」

「そうなの?」

「生活環境とかは覚えてるんですけど、人に関することはさっぱりです」

「そんなこともあるのね」

「ただ、生まれたときから記憶持ってますよ」

「うわー、それはそれでキツイわね」

「はい。この世界での生活はめちゃくちゃ不便で辛かったです」

「それで、魔道具とかを作っちゃったのね?」


 そう言われると笑ってやり過ごすしかない。

 でも、ラディはもちろん。

 ラルフクト様たちも我が家の魔道具を見たばかりだから。

 納得顔で頷いていた。


 なんて和み始めたけれど、今はそんな話じゃないわよね。


「あ、すみません。話、逸らしちゃいました」

「あ、そうね。そうそう。七歳で乙女ゲームの登場人物だって気づいて、」

「すまん。その『オトメげーむ』というのは何なのだ?」


 ああ、そうか。

 この世界の人が乙女ゲームなんて知るわけがない。


 でも、正直に言えば、わたしも詳しくは知らない。

 ということをシェリー様に話したら。


「そっかー。うーん、どういえばわかるかな……」


 シェリー様は、すごく悩みながらも。

 物語の主人公に自分を当てはめて疑似恋愛をする遊びだということを説明して。


 シェリー様がプレイしたのは。

 平民の少女が、光魔法―治癒魔法―に目覚めて貴族が通う魔法学園に転入して。

 王子様やその側近たちと恋愛していくという物語だったと教えてくれた。


「え、何人もの男性と恋愛するんですか?」

「攻略対象は何人もいるのよ。タイプが違ういろんな男と疑似恋愛できるの」

「攻略対象って……」

「なんだそれは……」


 ラディやラルフクト様たちは呆れているけれど。


 なるほど。

 やりたいとは思わないけど、そういうゲームが人気なのはわかる気がする。


「シェリー様はそのゲームの中の悪役なんですか?」

「そうよ。王子の婚約者だったから。王子と恋愛したいなら、邪魔でしょ?」

「確かに」

「でも、私の立場からすれば、平民の少女こそ邪魔者だから虐めるのよ。そして、少女は悪役令嬢からの虐めに耐えて王子と愛を育むの」


 ああ!そういうことか!

 それで、悪役なわけね。


「最後には、王子と少女の愛が成就して悪役令嬢は断罪されるのよ。内容次第では処刑っていう未来もあるけど、私は国外追放だったわね」


 これは、確かにどこかで聞いたことがある話ね。

 思わず、ラディと顔を見合わせた。


「ああ、それで、さっきの質問だったんですね。確かにリディと似てます。リディは冤罪でしたけど」

「わたしも王子の婚約者で、卒業パーティーで王子の不貞相手の男爵令嬢を虐めたって言われて、婚約破棄と国外追放を言い渡されたんです」

「そうそう!そういう流れなのよ!だから、リディアも私と同じかと思って」

「ってことは、わたしが出てる乙女ゲームもあるんですか?」

「え?……あ、そう言われると、リディアっていう悪役令嬢は知らないわね」


 ってことは。

 たまたま、わたしは乙女ゲームと同じような経験をしただけってことかしら。

 そんなこともあるのね。


「というか、その乙女ゲーム、無理がありませんか?」

「無理?」

「どんな虐めだったのかはわからないんですが、国外追放もそうですけれど、虐めで処刑っていうのはどうかと思うんです。それに、そもそも王子にそんな権限ないですよね?わたしの元婚約者は残念な王子だったんで、そういうこと言っちゃう人でしたけど、ちゃんと教育受けてる王子だったら、さすがにそんなことしないかと」


 わたしがそう言ったら、ラディたちも頷いてくれたんだけど。


「それが罷り通るのが乙女ゲームなのよ。私、断罪された翌日に身一つで馬車に乗せられて、国境の森に捨てられたわよ?」

「「「「「は?」」」」」


 そんなことあり得るの?

 この世界で乙女ゲームが展開されているっていうことよりも。

 そんなことが罷り通るほうが信じられない。

 え、シェリー様の祖国、大丈夫?


「本当に、処罰として国外追放になったんですか?審議もなく?」

「そうよ?リディアは違うの?」

「わたしは自ら国を出たんです。王子の代わりに仕事してたのに、浮気された挙句に冤罪突き付けられて。あまりにもくだらない茶番を見せさせられたんで、王子やあの国に付き合うのが馬鹿らしくなって、勢いで出てきちゃいました。ラディを巻き込んじゃったのは申し訳なかったけど」

「いや、俺は全く後悔してないし、あの時は、あれが最善だったと思うよ」


 本当に大人げなくて浅はかだったとは思ってるのよ。


 でも、シェリー様たちは、なんか納得してくれてる。

 いいのか?それで。


「にしても、まさか、シェリーがあの森に置き去りにされてたなんて……」


 どうやら。ある日、森で大きな攻撃魔法がぶっ放されて。

 ラルフクト様がその調査に行って。

 そこで、魔獣を倒したシェリー様を見つけて保護をして。

 なんやかんやの末に結婚されたらしい。


 ただ、シェリー様は経緯をざっくりとしか説明してなかったようで。

 ここまで詳しいことはラルフクト様は知らなかったとのこと。


「あの森って魔獣がいる森で有名でしょ?実質処刑だったんじゃないかしら」

「え、学生の虐めで?何をしたらそんなことに……」

「というか、虐めてたのか?」


 あ、そうよね。

 七歳でその未来がわかってたんだから、回避とかしなかったのかしら。


「もちろん虐めてないわよ。乙女ゲームの結末知ってたんだもの。そうならないように気を付けてたんだけど、やってもいないのに、やったことになってたのよね。びっくりするわよねー」


 え、何それ。酷い。


「身分を笠に着て罵ったとか、階段から突き落としたとか。何一つやらなかったけど、すっかり悪役に仕立てられていたわ」

「ああ、そういえば、リディも似たようなことしたって言われてましたね。でも、そう思ってるのは王子たちだけで、みんな冤罪だってわかってましたよ。影もついてたし、リディの冤罪はすぐに晴らされました」

「じゃあ、わたしは悪役じゃなかった?」

「うん。リディに憧れてる子だっていたしね。どっちかっていうと、王子たちのほうが悪役だったんじゃないかな?」


 わたしに憧れる理由はよくわからないけど。

 そうか。そうだったのか……。


 でも、シェリー様はそうじゃなかったってことよね。


「シェリーだって、実際にやっていないなら、リディアみたいに冤罪だってすぐ証明されたんじゃないか?」

「それがね、誰も彼もが私がやったって思ってたわ。親まで」

「え、どうして……」

「あー……。これ、もう、言ってもいいかな。私も、後になって知ったんだけどね、どうやら、魅了の魔法が使われていたみたい」

「「「「「は?」」」」」


 平民の少女が魅了の魔法を使って操ってたってこと?


「乙女ゲームではそんな描写はないのよ?ゲームでは、実際に、悪役令嬢は陰湿な虐めをしているし、まあ、現実的ではないけど、その虐めの罪で断罪されるの。でも、この世界では、私は虐めてなくて、魅了の魔法が使われて、みんなが惑わされていたのよ」


 詳しく聞けば。

 平民の少女は、実は、謀反を企んだ貴族が送り込んだ刺客だったらしい。

 それで、王子や側近に近づいて、邪魔だったシェリー様を追い払ったと。

 なんて酷い話なんだろう。


「乙女ゲームと国名も人名も起きたことも一緒だったけど、乙女ゲームは恋愛主体だから、そこまで詳しい背景とかはわからないのよね。だから、そんな裏があったなんて驚いたけど。まあ、結局、私も巻き込まれたってことかしら」

「シェリー様、生きててよかった……」


 思わず口に出してしまったわ。

 シェリー様、思いっ切り被害者だし。


 ラルフクト様たちも、本当によかった、と口々に言っていた。


「あ、でも、出来ればこのことは広めないでもらえると嬉しいわ。やっぱり醜聞だものね。あの国にいい思い出は少ないけど、一応、祖国だから」


 シェリー様にそう言われて、わたしたちも頷いたんだけど。

 ひとつだけお願いがある。


「わかりました。ただ、魅了魔法の危険性については、グリーンフィールとレンダルの信頼できる人たちと王家にお話させていただけないでしょうか。もちろん、シェリー様のお名前も、祖国の名前も出しませんし、決して、話を広めるようなことはしないように伝えますので」

「ああ、そうよね。どの国でも、特に王家は警戒しておくべきよね。むしろ、話しておいたほうがいいかもしれない」


 シェリー様はそう言ってくれて。

 ラルフクト様も賛成してくれて。

 ドラングル王家にも進言することにしたようだ。


 そうして、気づけば、かなり長い時間話し込んでしまったから。

 今日はこれでお開きとなった。


 それにしても、転生仲間がいたことにも驚いたけど。

 乙女ゲームと繋がってるなんて考えてもいなかった。


 とりあえず、転生にもいろいろあって。

 きっと、わたしが知らないこともまだまだたくさんあるのよね。


 何気に勉強になった一日だったわ。


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