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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第三章 平民ライフ出張編
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57.彼女は熱烈に歓迎される。

side リディア

 思わぬ歓迎を受けて戸惑っているけれど、許してほしい。


 漸く、出張前の仕事が片付いて。

 シェロに転移してもらって、レンダルのグラント家までやって来た。

 ―――今回は、出国も入国もちゃんと手続きをしてきた。


 前回の反省なのか、今回は、鍛錬場じゃなくて玄関前に到着してくれて。

 御礼に好物の肉料理をたんまり渡して、ガルシアに発つシェロと別れて。


 転移で音もなく現れたわたしたちには、誰も気づいていないというのに。

 ラディがノックもせずにお邸に入っていって。


「ただいまー」


 このままずかずか入っていっていいのか、ちょっと心配だったけれど。

 ラディの声が聞こえたのか、執事さんが慌ててこちらに向かってきて。

 ご家族がいる談話室に案内してくれた。


 そして大変熱烈な歓迎をしてもらった。

 特に、お義母様とフィン君に。


 ふたりにぎゅっと抱きしめられたら、ラディに引き離されて。

 お義母様が文句を言うのと同時に、聞き慣れない声が聞こえてきて。


「っ!本物……っ!本物のリディア様……っ!」


 声がしたほうを向いたら、見覚えのないお顔の女性が。

 両手を口に当てて、目をキラキラさせて、わたしを見つめている。


 え、これはどういうことだろうか。

 わたしは、どう反応するのが正しいのかわからずに困惑していたんだけど。


 ラディはびっくりしているようだった。


「シア義姉さん、帰ってたんだ」


 お姉さん?

 グラント家は三兄弟だと思ってたんだけど、お姉さんもいたの?


「ああ、つい先日、やっと帰ってきたんだ。お前たちが来るから呼んでおいたんだよ。リディア、こいつは俺の婚約者のレティシアだ」

「まあ!そうでしたのね!初めまして、リディアです」

「リディア様に話しかけてもらった……っ!」


 まさかのお義兄様の婚約者。

 まあ、でも、お義兄様は嫡男だし、二十歳だし。

 いてもおかしくはない。というか、いて当然だ。


 ただ、さっきから気になっているんだけど。

 若干、様子がおかしいと思うのだけど、大丈夫だろうか。


「とりあえず、落ち着け。そして、挨拶しろ」

「はっ!すみません!あの、私、レティシア・パウエルと言います!お会いできて、物凄く感激しています!ありがとうございます!」


 かなりの勢いで挨拶されて。

 突っ込みたいところはあるけれど、一番気になるところは。


「パウエル家と言いますと……」

「はっ!そうでした!以前、うちの愚弟がリディア様に大変なご無礼を働いて、大変申し訳ありませんでした!本当に何てお詫びをすればいいのか……」


 ああ、やっぱりあのパウエル伯爵家。

 レティシア様は、卒業パーティーでわたしに切りかかってきた脳筋のお姉さんなのか。そんな方がお義兄様の婚約者なんてびっくりだ。


 わたしってば、王子妃教育で派閥や各領地の特産とかは覚えたけど、婚約状況については後回しにしていたんだったわ。


 実は、お義兄様はもっと早くわたしに婚約者のことを話そうと思っていたらしいのだけど、脳筋のこともあって話し辛かったうえに、肝心の本人がレンダルにいなかったから、ずっと紹介できなかったそうだ。


「いえ、そんな。レティシア様は何も悪くありませんから。謝罪などおやめください。それに、結局、あんなことになってしまって……」

「愚弟の処遇は当然の結果です。むしろ軽いくらいです。話を聞いたときは、あいつを切り刻んでやろうと思ったんですけど、できなくて残念です!」


 なかなかに物騒な話になってるけれど。

 レティシア様、結構好戦的なのかしら?


「いえ、きっと今は大変な思いをされていますから。わたしは無事でしたし、本当にお気になさらないでください」

「シア義姉さん、リディが引いてる。ほんと落ち着いて。……リディ、ごめんね。この人、剣を持つと寡黙なんだけどね、普段はどうも直情的で」


 ああ、そういう人なのか。

 それだけでは説明できないこともあるけど、うん、まあ、一応納得した。


 でも、伯爵家のご令嬢がそういうタイプだと色々と大変だと思う。

 まあ、それはご家族の前だけで、社交はきちんとしているかもしれないけれど。


「レティシア様は騎士でいらっしゃるんですね」

「はい!リディア様の護衛になりたくて騎士を目指しました!」


 はい?


「そうだったのか?」

「小さい頃、お茶会でリディア様をお見掛けして。お人形さんみたいでかわいくて。未来の王妃様って聞いて、護衛になってお守りしたいと思ったんです!」


 なんてことだ。

 わたしのことを物凄く美化しているのが気になるけれど。

 まさか、そんなことを考えてくれた人がいたなんて思ってもいなかった。


「まあ!それは……。あの、王妃になれなくて、すみません……」

「いえ!リディア様はこれっぽっちも悪くないです。むしろ、あの王子にはもったいないと思っていました!……とはいえ、まさか、ラディンに掻っ攫われるとは思っていなかったけど」


 そう言って、ラディをキッと睨んだけれど。

 レティシア様、それは、ちょっと違います。


「掻っ攫ったのは、わたしのほうなんですが」

「…………リディ。ちょっと黙ろうか」


 あら?何か間違えたかしら?


 そう思って、ラディを見て、グラント家の面々を見たら。

 何を言っているんだ、という目で見られていた。


 ………やっぱり間違えたらしい。話を変えてごまかそう。


「あの、帰ってきた、というのは?」

「ああ、こいつ、強くなりたいって言ってドラングルに留学してたんだ。まさか、リディアの護衛になろうとしていたとは知らなかったが」


 あら、アンヌ様が嫁がれた国だわ。


 レンダルの南の隣国、ドラングル王国は魔獣の出没率が高い国で。

 その討伐の為に、騎士の育成に力を入れている。

 そんな国だから、強くなりたくてドラングルに留学する人は意外と多いらしい。


「ドラングルで騎士育成の学校に通っていて、お休みの日は冒険者をしてました。鍛錬も厳しくて大変は大変でしたけど、リディア様はきっと美人さんになってるだろうなって想像したら頑張れました。だから、卒業できたのも、Aランク冒険者になれたのも、リディア様のおかげです!しかも、帰ってきたら本物のリディア様に会えるとか!物凄いご褒美です!」


 突っ込みどころが多すぎる。

 そして、この熱量をどう受け止めればいいのかわからない。

 更には、ここまでしてもらって王妃になれない現実に申し訳なさしかない。


「レティシア。そろそろ本当に落ち着きなさい。リディアが困っているわ」

「はっ!すみません!」

「レティシアがそんなにリディアに心酔しているとは知らなかった。アンディに嫁げばリディアと家族になれるぞ。よかったな」

「リディア様と家族……っ!アンディ、私、絶対に結婚するから!」

「お前は結婚の基準もリディアなのか……」


 それは、どうかと思うけど。

 わたし、この国にいないし。でも。


「でしたら、お義姉様とお呼びしてもいいですか?」

「お、お、義姉、様……!なんて素敵な響き……!」

「それと、わたしのことも、様付けはおやめくださいね?」

「それは無理です!リディア様は、リディア様なので!!」


 あ、またおかしなテンションにさせてしまったようだ。


「あー、もう、シア義姉さんは収拾つかないね。兄上、何とかして」

「できるか!こんなの、どうしろっていうんだ」

「婚約者でしょ?がんばって」


 それは、わたしからもお願いします。


「ああ、そうだ。頼まれてた物、持ってきたよ」


 そして、さらっと話を変えるラディ。さすがだ。

 ここは、わたしも便乗するに限る。


「みなさんが気に入っていたお菓子や飲み物もお持ちしました」


 そう言って、頼まれていた文具や下着と。

 ポテチや炭酸水、珈琲といった、レンダルにない飲食物をお出ししたら。


 みなが歓喜に包まれた。

 うふふ。


 本当は、缶詰やレトルト食品もお持ちしたかったんだけど。

 今のところ、他国への持ち出しは規制されていて、あえなく断念。

 戦回避や技術流出の懸念もあるだろうけど、とにかく品薄なのだ。

 ありがたいことに売り出した途端に爆発的な人気商品になったのよね。


 それでも、お義姉様からしたら見たことがないものばかりだろうから。

 目をぱちくりさせてるお義姉様にお義兄様がそれぞれの商品の説明をしている。


 そんなふたりが隣り合っている姿は、すごく自然で。

 さっきからのやり取りを見ていても。

 言いたいことを言い合える、いい関係なんだと思う。


「それと、父上と兄上にはこれを。リディが作ってくれたんだ」


 ラディがおふたりに差し出したのはスケジュール帳。

 グリーンフィールとレンダルは休日や行事が少し違うから、レンダル用のスケジュール帳を作っておいたのよね。


「わざわざ作ってくれたのか?ありがとうな」

「これは便利だな。リディア、ありがとう」


 何かとお忙しいだろうから。

 スケジュール管理に使ってもらえたらうれしい。


「お義母様にはこちらを。お色や柄を選んでいただこうと思って、ふたつ持ってきていてよかったです。お義姉様とお好きなほうをお持ちくださいね」


 そうして渡したのは扇子。

 上品な造りにはしてあるけど、実は鉄扇だ。


 前回拉致されたときに、お義母様に武器の必要性を説かれたから。

 持っていた鉄扇を見せたら興味を持ったようだったのよね。


「まあ!私が気になってたのを覚えてくれてたのね!ありがとう」

「結界を展開できる精霊石も埋め込んでありますので、場合に応じてお使いください。もちろん、使うような事態に陥らないのが一番なのですが」

「わ、私もいただいていいのでしょうか?」

「ええ、ぜひ。三人でお揃いです」

「お揃い……っ!」


 また変なスイッチを入れてしまったけれど。

 いくら騎士だとは言え、武器はいくつあってもいいと思う。


「フィン君にはこれよ。バスケ、続けてくれているかしら?」


 前回来たときは、フィン君はバスケに夢中になっていたから。

 バスケットシューズを持ってきた。

 もちろん、成長期だからサイズ違いもいくつか用意している。


 バッシュを渡したら、フィン君は満面の笑みになって。

 後でバスケをする約束をしたのだけど、実は、もうひとつ渡すものがある。


「フィンにはこれも。計算が苦手だって言ってただろう?リディが計算のコツを纏めてくれたんだ。俺も教えて貰って計算が早くなったから、覚えるといいよ」

「今回は、前よりも長く居れるから、一緒にお勉強しましょうね」

「義姉上が教えてくれるんですか?」

「わたしでよかったら」

「本当ですか!?うれしいです!僕、がんばります!」


 うん。フィン君は素直でかわいいわ。


 今回はこれらのお土産のほかにカレンダーや野宿セットも持ってきている。

 新たな商品に驚かれながらも、みなさん喜んでくれて、こちらもうれしい。


 その後は今回滞在させてもらうお部屋に案内してもらって。

 ―――多分ラディの部屋にいることが多いと思うけど一応用意してもらった。


 水道工事のためにグラント家に来ている商会のメンバーの処にも顔を出して。

 ―――順調に進んでいるようで何よりだ。


 お義姉様も一緒に、歓迎の夕食をいただいた。

 今宵のディナーはビーフシチューで。

 置いていったレシピよりもおいしいと言ったら料理長さんが照れていたけれど。


 何よりも、その味に感動したお義姉様のテンションがマックスになったようだ。


「リディア様!一生付いていきます!」

「却下」


 お義姉様の宣言を、ラディがすぐさま一刀両断していた。


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