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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第三章 平民ライフ出張編
51/149

49.彼女と彼は導入する。

side リディア

 グリーンフィールに来て二年目に入った。


 わたしはちょっとないくらい幸せである。

 だって、ラディとちゃんと夫婦になれたのだから。


 どうしたら仮夫婦の仮が取れるのかを悩んでいただけのわたしと違って。

 ラディは行動に移してくれた。


 まさか、わたしがプロポーズした一年後に、今度はラディからプロポーズしてくれるだなんて思ってもいなかったけれど。

 しかも、結婚指輪まで用意してくれていたから、本当に驚いたわよね。


 ただ、わたしは物凄く嬉しくて、舞い上がってしまったから。

 正直にいえば、なんて返事をしたのかもあまり覚えていない。

 紅潮した気分のまま、ラディにぴったりくっついて話をして。

 キスをして、我に返ったのは覚えてる。


 思わず、ラディを突き飛ばすように離れて畑に出てしまった。

 あれは、雰囲気をぶち壊してしまったから、反省している。


 それともうひとつ。

 婚約指輪の換金話もするんじゃなかったと、後悔している。


 いや、あれ、ネタのつもりだったし。

 笑って終わる話だと思ってたら、ラディは本当に用意しようとしてくるし。

 わたし、この世界の人の純度の高さを失念してたわ。

 特にラディはふつうにピュアだから、素直に納得しちゃって本当に困った。


 温室を作ることでごまかしたつもりだけど、実は本当に用意しようとしているのはわかってる。それをどう阻止しようかが目下の悩みだ。

 でも、きっと、こっそり用意されちゃって阻止できないんだろうけど。


 そんなこともあったけれど、とにかくわたしたちは仮夫婦を脱出した。

 そして、それからのわたしたちはバカップルぶりを発揮している。らしい。


 わたしたちに変化があったことも、お揃いの指輪をしていることも。

 お母様にはすぐにばれて。

 娘夫婦はラブラブなのがいい、と言っていただけあって、最初はキラキラした目で見られたけれど、最近では生温い目に変わった気がする。


 でも、負けない。


「リディ?どうしたの?」


 あ、そうだった。

 今は、温室――レンダルの土の栽培検証用よ――の手入れ中だったわ。

 いろんなことを思い出してたら手が止まっていたようだ。


 結局、婚約指輪代わりの温室はわたしが言い張ってふたりで購入した。

 だって、意外とかかるのよ?温室の費用って。


 ルイス伯父様が陛下に費用を負担してもらう――多分レンダルに請求する――、って言ってくれたんだけど、温室はあれば便利だし、今回のことが終わっても我が家で使うつもりだから、それは辞退したのよね。

 だから、余計にラディひとりに払わせるわけにはいかなかったのだ。


 レンダルの為の栽培検証に当たって、わざわざ温室を作ったのには訳がある。

 レンダルはここに比べるとかなり北にあるから気候が違う。

 となれば、ここでただ土を変えて栽培したって同じ効果が出る訳がないから。

 レンダルでも同じ条件が出せるような温室を作ることにしたのよね。


 わたし、レンダルのためにすごい考えたのよ?


 温室もふたつのエリアに区切って、温かいエリアと寒いエリアに分けて。

 寒いエリアはレンダルの気候に合わせたりして。


 そして、温かいところではハーブやスパイスを。

 寒いところでは、綿や大蒜を栽培している。


 うちの畑でも同じものを育ててるから、何とかなるかと思いきや。

 やっぱり、精霊に頼らないとなると、頻繁に手入れしなくてはならなくて結構苦労している。


 精霊たちは、自分たちが手を出せなくてうずうずしているけれど。

 さすがにこれは任せられない。


 というわけで、温室の手入れ中だったのに。

 手が止まってラディに心配されてしまった。


「ごめん、ちょっと、ぼーっとしちゃってたわ」

「疲れちゃった?ちょっと休もうか」

「ううん、平気よ。ここ片付けたら、サティアスの邸に行かなくちゃだもの。やれるところまでやっておきたいわ」

「うーん、それはそうだけど。無理はしないでね?」

「わかってるわ。ありがとう」


 うん。ラディが過保護だ。

 わたしが丈夫なことは知っているはずなのに、ちゃんと夫婦になってから何かとわたしの心配をする。まあ、前から過保護だったけれど、拍車がかかった。


「それにしても、今日は何だろうね?」

「そうよね。わざわざ集まって話すことなんてあったかしら」


 グラント家の業務用冷蔵庫は、カスタマイズ内容が決まって製造に入った。

 ――湿度管理が面倒みたいで、時間がかかるらしい。


 水道設備はほぼ丸投げしてるから詳しくは知らないけれど。

 商会の技術者が、そろそろ調査に行く予定だと聞いている。


 ――実は、水環境整備はグリーンフィールの国家事業だってこともあって、水道設備を勝手に売るのはどうなの論争が勃発して、陛下への報告に至っている。

 今回はラディの家だし、国を挙げてのものではないから許可は出たけど、レンダルが本格的に乗り出したらグリーンフィールも口を出すらしい。


 ちなみに、業務用冷蔵庫も一応報告をしたら、同じものをグリーンフィールでも売るように言われたようだ。

 まあ、それはね、普通に売る予定だから大丈夫だ。


「やっぱり、この栽培状況かな?」

「それなら、できればもう少し様子を見てからがいいわよね」


 わたしが変に拘って温室を作ったから、整備に時間がかかったのよね。

 だから、栽培を始めたばかりで、まだ報告できることがないのだ。


「そうだね。現段階では、すごく手がかかるってことしか言えないよね」


 はい。本当にすみません。

 でも、これくらいしないとレンダルじゃ育たないと思うの。


 ―――――そうして、温室の手入れを終わらせて。


 着替えて、我が家とサティアス家を結ぶ転移陣で移動したら。

 そこには両親と伯父様が既にスタンバっていた。


「わざわざ来てもらってすまないな」

「ううん。今日はお休みだし、それはいいんだけど、何かあったの?」

「何かあったというかね、今日は、ふたりに相談があるんだよ」


 あら、何かしら。


「リディアちゃん。そろそろ、お弁当屋さんをシフト制にしない?」

「ランドルのお弁当屋さんを?」

「ああ。販売時間の延長や販売数増加の要望も多いだろう?」


 それは、確かに。

 ありがたいことにオープン以来毎日完売で、そういった要望は多い。

 そして、ハンバーガーの常時販売の要望も。


「それとね、幕の内弁当は売るべきだと思うんだよね」


 なぜ、伯父様がそれを知っているのだ。

 ラディを見たら首を振られたから、これはマルコさんか!


 以前、マルコさんから依頼があった特注のお弁当。

 幕の内弁当の和食案と洋食案、そしてカレー案を出して。

 最後までカレーと悩んで、結局、洋食幕の内になったんだったわ。

 持ち帰る人がいるって聞いて、カレーは却下したのよね。


「ああ、告げ口とかじゃないよ。僕も出てたんだ、あのギルドの会合」

「そうだったの?」

「うん。リアン商会は何かとギルドにお世話になってるからね」


 なるほど。

 もしかしたら、会合で商会のことも話しているのかもしれない。


「あれはいいよね。いろんなおかずが食べられて。みんな喜んで食べてたよ」

「それを聞いて安心したわ。冷たい食事はやっぱり味気ないもの」

「冷たいって言ってもあのおかずなら問題ないよ」


 白米は温かいものを用意したしね。

 スープもあったし、おかずだけなら冷たくても大丈夫だったのね。

 よかった。


「だからね、売るべきだと思うんだ。それに、あの会合に出たランドルのギルド職員もいるしね。期待していると思うよ?」


 なんてことだ。

 その可能性は全く考えてなかった。


「あれ、結構な手間よ?」

「うん。デュアルでは販売してるから知ってる。そういうわけでね、そろそろランドルも販売増やしてシフト制にしようよ」


 もう、デュアルの店舗では幕の内売ってるのか!早いな!

 まあ、あのおかずなら、サティアスの料理人なら作れるものね。


「デュアル領の店舗と同じことをしようとしたら、確かに、今の体制では無理ですね。俺たちもそこまでは時間をかけられませんし」

「そうよね。要望が多いのも事実だし、考えてないことはないんだけど」


 実際、ラディとも何度か話し合ってるんだけど。

 わたしの踏ん切りがつかないだけなのよね。

 これは、そろそろ潮時かしら。


「リディアちゃんたちがいるときだけ特別メニューを作ったらいいんじゃない?それなら、単なる従業員とは違うし、ランドルの店舗に特別感が出るわ」

「えー、それだとデュアルが可哀そうじゃないか」

「だって、お弁当屋さんはリディアちゃんの夢だったんだもの。それくらいさせてあげてちょうだいな。もしデュアルが文句言うなら、デュアルだってやればいいのよ、特別メニュー」


 ああ、なるほど。

 それはいいかもしれない。


 ずっと同じメニューだから、飽きるとは思ってたのよね。

 だからって、毎日違うもの作るのも大変だし、人手もないしで、固定メニューのまま来たけれど、そういうことならわたしもがんばれるかも。


「リディ、義母上の話なら、いいんじゃないかな?」

「ええ。それができるなら、わたしもうれしいかも」

「あら。やっぱりそうよね。うふふ、お母様がんばったわ」


 ええ本当に。お母様ナイスよ!

 そう思って、お母様に満面の笑みを送った。


「うーん。そんなことされたらランドルに通いたくなっちゃうけど。でも、それでシフト制を考えてくれるならそれがいいか。よかったよ、話がうまく進んで」

「そうだな。これで、リディアやラディン君が休みやすくなる」


 ん?伯父様にお父様。

 それは、一体どういうことだろうか。


「あの、俺たちの休みが何か?」

「うん。これまでもそうだけど、ふたりには突発的な仕事が結構あるでしょ?だから、休みを取りやすくしておいたほうがいいと思ってたんだよね」


 それには、思いっきり心当たりがあるけれど。

 ものすごーく心当たりがあるけれど。


「今までは何とかなってたと思うんだけど」


 そりゃグラント家が来たときはデュアル店舗にヘルプを出したけど。

 でも、一回だけよ?


「あー、うん。今まではね?」


 それは、これから何かあるってことだろうか。

 え、わたし、何かやらかしてたかな?


「実はな、今度、レンダルからランクルム公爵が視察に来るんだ」


 はい?


「先のレンダルの件で、向こうに工場や農地を確保する話になっているだろう?それで、ランクルム公爵が、息子の責もあるということで自領を提供してくれたそうだ。陛下たちはすべて王家直轄領でやるつもりだったらしいがね。公爵家でもちゃんと責任を果たしたいと名乗り出たようだよ」


 相変わらずランクルム公爵は誠実な人ね。

 全然儲けなんて出ない話なのに。

 それでも、こういう時には逃げずに受け止める人なのね。


「ランクルムは農地を提供してくれるから、畑や料理なんかを視察したいそうだよ。だから、リディアにも協力してもらいたくてね」


 なるほど。

 そういう話なら、断ることはできないわね。

 畑や温室があるのは我が家だし。

 そもそも、料理を知りたいならわたしが打ってつけだろう。


 それで、この話に乗じて。

 せっかくだからお弁当屋さんの体制も改良しちゃうってことね。

 これは、やられた。


 けれど。きっと、これからもこういう話が出てくるような気がするし。

 グラント家の事だってまた時間を取ることがあるかもしれないものね。


 そう思ってラディを見たら、頷いてくれた。

 さすが、話が早くて楽だわ。


「わかりました。お弁当屋さんにシフト制、導入します」


 第三章、始まりました。

 早速お読みいただき、ありがとうございます。


 不定期更新にはなりますが、よろしければ引き続きお付き合いくださいませ。

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