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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第二章 平民ライフ稼働編
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46.彼と彼女への来客は続く。

side ラディンベル

 リディは無駄な抵抗をやめたほうがいいと思う。


 どうやらこの半年間で前世知識を使いすぎたと反省しているらしく。

 しばらくは知識を封印するみたいなことを言い始めたんだよね。


 確かに、急激な変化はいいことばかりじゃないと思う。

 リディが懸念している争いなんかは生まれてもおかしくないし。

 便利を知ってしまったからこそ生まれる不平不満もある。

 格差も開くだろうし、便利の普及に問題があることはわかるんだ。


 でも、多分だけど、リディが本当に気にしているのってそこじゃなくて。

 みんなの仕事が増えることに罪悪感があるんじゃないかな。


 リディはいつも申し訳なさそうにしているけど。

 俺はリディが思うほど大変だと思ってもなければ嫌々やっているわけでもない。

 多分、これは侯爵や義両親だってそうだと思う。


 だから、そんなこと気にしないでほしいんだけどね。

 気にしちゃうのかリディだけど。


 それに、リディの提案って、どれも『みんなにいいこと』なんだよね。

 自分が儲けたいとか、楽したいとか、それが全くないとは言わないけど、そういうことじゃなくて、みんなが今より幸せになるための提案なんだ。


 それって凄いことなのにね。

 もっと自信持ってほしいな。


 というか、そもそも。

 リディって結構無意識に口にしてるからね。

 前世の記憶が結構強いんだろうけど、当たり前のように口走ることが多いから。


 それを今更、自重します、なんて言われてもね。

 それはきっと無駄な抵抗だと思うよ?


 この前だって。

 王太子殿下がいらした時にも、新商品になり得るものを口走ったから。

 練り製品とか鰹節とか。


 あの後、殿下がデュアル侯爵に話を通したみたいだよ?


 食品加工事業はいくつかの町で実施予定なんだけど。

 それぞれの港の漁獲量や採れる魚の質に応じて作るものを決めているらしいんだよね。


 マリンダは海苔と鯖がメインって聞いたし。

 ―――リディが鯖缶にテンションを上げててかわいかったな。

 鮪や鱈なんかは他の漁港のほうがよく採れるらしくて、そういう産地に合ったものを作ることになっていると聞いている。


 粗方、それぞれの町で実施する内容が決まってきて。

 今は工場の建設に入ったところだったと思う。


 あ、そういえば。

 海老の使用量が増えたから、養殖を検討してほしいとかも言ってたな。

 ―――結局、こうやって口走るんだよ、リディって。


 そんなこともあったから、工場建設に加えて。

 その養殖っていうのを検討していたところに、また新商品と来たから。

 若干騒ぎにはなったけども、練り製品は鱈を使えるし、鰹の産地もあるしね。

 採れる魚や人的な余力を加味しながらまた振り分けるって話になったみたい。


 リディもそろそろ聞いたかな?

 それで、また仕事を増やしてしまった、って落ち込むんだろうけど。

 そこはもう開き直って、町や港が盛り上がることを喜ぼうね?


 ちょっと食品加工事業の話をしただけでもこうなんだ。

 きっと、また、何か思い付いちゃうと思う。


 前世知識と言えば、マルコさんから相談された特注弁当も。

 ―――ちゃんとあるんだね、異世界にも。仕出し弁当って言うらしい。


 幕の内弁当と言っていたけれど。

 おかずとごはんがひとつにまとまったお弁当があるという話で。

 和食メインのものと洋食メインのものをリディが絵に描いてくれた。


 それもすごくおいしそうで普通に売ってもいいんじゃないかと思ったくらいだ。

 今はそこまで人手がなくて出来ないのが残念だよね。

 ―――でも、侯爵に話をしたらすぐにメニューになると思う。


 もしくは、いっそ、カレーとかを鍋で持ってく?

 という強引な案もあるけれど。

 実は俺はその案を気に入っているんだけど、後はマルコさんに相談だな。


 そんな感じで、次から次へと出てくる前世知識。

 リディはかなりの決意を持って自重するって言っているけれど。

 そうは言っても、今日だって何か披露しちゃうんじゃないかと俺は思っている。


 ―――――今日、何があるのかと言えば。


 俺の家族が我が家に来るんだよね。

 レンダルから。


 ほんの数ヶ前に俺たちが行ってきたばかりなのに、何で来るのかと思えば。

 リディが依頼していたレンダルの土――栽培検証用――を持ってきてくれるらしくて。いや、そんなの送ってくれればいいと思うんだけど。


 それと何やら相談があるみたいで。

 いや、それだって、手紙でいいと思うんだけど。


 でも、どうしても来たいというから。

 デュアル侯爵領のお弁当屋さんの従業員にヘルプを出して。

 今日から数日休みを取って家族を迎えることになったんだ。


 だけどね。


「ラディ。お掃除、ちゃんとできてるわよね?」

「うん、大丈夫。というか、あの家族だよ?いいよ、そんなに気を遣わなくて」

「そんなことじゃだめよ。ラディの家族よ?ちゃんとお迎えしなきゃ。お茶菓子は甘いものとしょっぱいものを用意したんだけど、お飲み物は、聞いてからのほうがいいかしら?それとも、すぐに紅茶出したほうがいい?」


 ちょっとリディが想像以上に緊張していてびっくりしている。

 普段、あんまり動じないのに。


「いや、ほんとにね?いつも通りでいいから」

「いつも通りってどうしていたかしら?」


 え、いやいや。ほんと、どうしたの?


 ちょっとこれは俺も予想外だったから。

 とりあえず座って落ち着いてもらって。

 飲み物は俺が聞く、とか、この後の段取りを決めて。


 それでも落ち着かないみたいだから、お酒でも飲ませちゃおうかな?

 と思ったところで、家族の気配を察知した。


「来たみたい。門まで行ってくるよ」

「わたしも行くわ」


 あー、うん。そうだね。

 これはもう一緒にいたほうがいいかもしれない。


「いらっしゃい」

「おお。わざわざ出迎えすまないな」


 いや、結界がね、張ってあるからね。

 迎えに来ないと、みんな入れないんだよ?


「長旅お疲れさまでした」

「リディア!相変わらず可愛いわ。元気そうでよかった」

「義姉上!お久しぶりです!また会えてうれしいです!」


 母上と弟は本当にリディが好きだね。


 放っておいたらそのまま門の前でいつまでも話していそうだったから。

 強制的に話を終わらせて邸に入ってもらって。

 それぞれの部屋に案内して、荷物を置いてきてもらって。


 まずは一通り、邸の設備を説明しようと思ったら。

 それだけで物凄く時間を取ってしまった。


「水がここから出るのか?」

「湯あみがすごく簡単なんだ。いつでも水と湯が出せるし、これなんか動かせるんだよ。シャワーって言うらしい」

「「「おおお!」」」


 まあ、説明してたのは、ほとんど兄上だったけどね。

 でも、いちいち感動してはコメントしていくからすごく時間がかかって。

 リディはそれをずっと側でニコニコ見ていて。

 それはかわいかったけど、俺はものすごく飽きてきた。


「そろそろ、お茶にしない?疲れたでしょ?」

「え、でも、まだ見てないところがあるでしょう?」

「後でまた案内するよ」


 ほんと、キリがないから。

 だから、また強制的に話を終わらせて、リビングに集まってもらって。

 お茶とか珈琲とかジュースを出して。

 ――ジュースは、リディが弟のためにわざわざオレンジを絞ってくれた。そこまでしなくていいのに。


 お菓子はもう面倒だから、数種類適当にテーブルにでん、と置いた。

 リディは、ええ?って顔をしてきたけど。

 どうせ、この人たちすぐ食べちゃうから。


「遠いところ、お疲れ様。迷ったりしなかった?」

「ああ。公共の転移陣というのはいいな。それで、かなり短縮できた」

「グリーンフィールは広いからね。転移陣がないと移動が大変なんだ」

「だろうなあ」


 俺が兄上とそんな話をしていたら。

 リディは父上から土を受け取っていた。

 手渡してるのは見本の土で、実際に使う大量の土は外に置いたままだけど。


「今回は、グリーンフィールがかなり温情をかけてくれたと聞く。いろいろと掛け合ってくれて感謝しているよ」

「いえ。わたしたちは大したことはしてないんですよ。それに、まだ始まっていませんし、結果的にどうなるかわからないのですが、成功するように今対策を考えてます。それでこの土もお願いしたんですが、わざわざすみませんでした」


 王子の件、もちろん俺たちからも報告はしたけれど。

 当事者家族として、陛下や王妃様からも一応は聞いているんだろうな。

 カイン陛下の温情、レンダルでもちゃんと理解してくれててよかった。


「これで農業がうまくいくようになるといいよね」

「その技術を買う金があればいいがな」


 そこね。でも、それは、何とかがんばってほしい。


「それで。今日はそのことだけで来たんじゃないんだよね?どうしたの?」

「ああ。実はな、この前、冷蔵庫をもらっただろう。あれを領地でも使いたいんだよ。肉やチーズの保存ができるならありがたいからな」


 ああ、なるほど。

 グラント領の牧畜業で使いたいのか。


「ってことは、結構な数が必要ってこと?」

「できればな」

「んー。それは、ちょっと今は厳しいかもしれない。少しずつ、出来次第配送って感じになっちゃうと思うよ」


 商会の魔道具販売は、落ち着いたと言ってもまだ予約分が残ってるのだ。

 冷蔵庫は特に。


 出来た分から順次出荷しているけど。

 店舗に並べる分だって確保が難しい中、大量の発注は厳しいと思う。


「人気だと聞いているし難しいのはわかっているが、できれば欲しい。少しずつでもいいから用意してくれないか?」


 そうかー。

 うーん。売れるのはいいことだしね。やぶさかではないけれど。

 これは義母上と製造部門に相談だな。


「商会にちょっと相談してみる。時間貰っていい?」

「ああ、それはもちろん」

「あの……。牧畜業で使われるのに、あの冷蔵庫で大丈夫なんでしょうか?」


 ん?リディ、どういうこと?


「今、製造している冷蔵庫は家庭用なんです。保存できる量も少ないですし、ひとつの箱に冷蔵部分と冷凍部分が付いているので、お仕事で使われるとなると使い勝手が悪いのではないかと思うのです」


 なるほど。


「業務用ならば、冷蔵専用と冷凍専用のものを大きな箱で作ったほうが使いやすいと思います。あと、中が見えるようにガラスケースにしたらどうでしょう?」


 ………これ、前世知識だよね?

 やっぱり出たね。

 業務用冷蔵庫っていうのがあるのかな?


「もし、そういうものがあればうれしいが。できるのか?」

「基本的な機能は同じで、見た目と容量を変えるだけなので大丈夫ですよ」

「リディ。それ、絵に描ける?」

「わかったわ。描いてみる。それとね、温度や湿度も調節できるといいわよね」

「ああ、それいいね。できるかな?」


 前世の話はここでできないけど。

 新しいものの話になると俺たちは仕事モードに入ってしまいがちで。

 思わず、いつものようにリディとふたりで話し始めてしまったら。


 家族がきょとんとしていた。

 あ、彼らのことを一瞬忘れていた。


「あ、ごめん。ちゃんと進めておくから」

「え、いや、ああ。というか、本当にいいのか?」

「費用は相談させてね」

「それはもちろん構わんが。お前たちが勝手に進めてもいいものなのか?」

「ああ、リディは商品開発の担当なんだ」


 そう言ったら、家族も納得の顔になって。

 希望する機能の話とかをして、冷蔵庫の話は終わったんだけど。


「っていうかさ、これも手紙でよくない?」

「今みたいな話はできないだろう。それに、今回来たのは、冷蔵庫のことだけじゃない。もうひとつ相談があるんだ」


 え?まだあるの?

 この前の兄上みたいに、無茶なこと言わないといいんだけど。


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