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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第二章 平民ライフ稼働編
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35.彼女と彼は再会する。

side リディア

 レンダルでの滞在は一週間を予定している。


 そのうちの二日くらいは休んでいいと言われているけれど。

 後は、王子からの命令を断るために参内したり、仕事をする予定なので、実は、大してゆっくりした日程ではない。


 滞在中はラディのご実家――グラント家――にお世話になる予定だ。

 ラディのご家族に会うなんてなかなか緊張する。


 という話ではなくて。

 シェロだったら、グリーンフィールの我が家からレンダルのグラント家まで一気に転移することができる。


 でも、今回は国を跨ぐため、出国や入国の手続きがあるのだ。

 グリーンフィールの出国手続きは陛下が免除してくれたけど。

 レンダルでは、普通に入国手続きをしなくてはならない。


 そんなわけで、まずは、国境まで転移してもらって。

 砦で入国手続きをして――この間、シェロには姿を消してもらった――。

 そして、そこから、グラント家まで転移してもらったら。


 着いたのは、グラント家の鍛錬場だった。

 え、なんで?


 シェロ曰く、広い空間があるところに転移した、とのことだったけど。

 確かに、いきなり家の中に着くよりはいいけど、玄関前とか庭とか、他にもっといい場所があると思うんだけど。


 偶然、お義兄様が鍛錬場に居たからよかったものの。

 じゃなかったら、ここにいた騎士の人に捕縛されてたかもしれないわ。

 だって、めちゃくちゃ怪しい人を見る目で見られたもの。


 お義兄様は、鍛錬中だったのにもかかわらず、笑顔で応対してくれた。

 豪快な笑顔は我が家に来たときと同じだ。


「おお、来てくれたか!わざわざ悪かった!」

「うん。ただいま」


 わたしは、ただいま、と言うわけにもいかないから、お辞儀をして。

 シェロを紹介したら、お義兄様が固まってしまった。

 こんなことばかりね。


 シェロはすぐにグリーンフィールに戻るって言ったんだけど。

 ラディがお茶くらいどうぞ、と誘ってくれたから。

 みんなで本邸の玄関まで向かっていたら、事件が起きた。


「あっ!いたぞ!捕まえろ!」


 玄関が見えたところでそんな声がして。

 護衛っぽい人たちが、わたしたちに向かってやってきたのだ。

 え?いきなり何?


 思わず、わたしもラディもシェロも応戦してしまって。

 わたしは風魔法で。ラディは素手で。シェロは威圧で。

 うっかり護衛っぽい人たちを倒してしまった。


「何をするんだ!」


 それはこちらの台詞ですけど?


 声がした方を向いてよく見たら、この人、多分、王子の側近の公爵子息だわ。

 確か、ランクルム公爵家のドミニク様だったかしら。


「あ、いや、いきなり襲われたら、防御や応戦するのは当然だと思うんだけど」

「そうですわ。そちらこそ、いきなり何ですの?」


 挨拶もせずに失礼だったとは思うけど、これくらい許してほしい。

 ほんと、何なの?


「お前たちを連れ戻しに来たに決まっているだろう!」


 は?思わず、ラディと顔を見合わせる。


 シェロは、公爵子息を剣呑な目で見ていた。

 今回、シェロはグラント家以外には正体をばらさないようにすると決めているから、目立たないようにじっとしてくれているのだ。だから、目だけ。


「ドミニク殿。殿下との約束は明日だったはずだが」

「そんなに待っていられるわけがないだろう!どれだけ仕事が溜まっていると思っているんだ!」


 お義兄様が間に入ってくれたけど。

 それ、自業自得じゃない?自分たちが仕事しなかっただけでしょ?

 っていうか、わたしたち、今から仕事させられるの?うそでしょ?


「いや、しかし……」

「公爵家に逆らうと言うのか?」


 ここでそれを出すのか!

 もう、ほんっとうに都合のいい人ね。

 わたしには散々、身分を笠に着たとか、ないこと言ってくれたくせに。


 とはいえ、グラント家は伯爵家で、わたしたちは平民だ。

 それだけでいえば、公爵家に楯突くのは、確かにまずい。

 でも、今回、わたしたちには後ろ盾がある。


「わたくしたちをこのまま王宮に連れて行く、ということですの?カイン陛下にもそのように伝えますが、よろしくて?」

「は?お前は何を言っているんだ。我が国の陛下はオスヴァルト様だぞ?陛下の名前も覚えてないとは随分と耄碌したもんだな」


 いや、さすがに、レンダルの陛下の名前は憶えてるわよ。

 って、そんな話じゃないわ。そんなことよりも。

 うそでしょ?この人、グリーンフィールの王様の名前知らないの?


 わたしもラディもこれには絶句するしかなくて。

 フリーズしていたら、その間に公爵子息に連行されていた。

 なんてことだ。


 そして、わたしたちは、今、公爵家の馬車に乗っている。


「ドミニク様。ご挨拶が遅れましたが、御機嫌よう。随分な歓迎ですわね」

「お久しぶりです。まさかこんな手荒な歓迎を受けるとは思いませんでしたよ」

「来るのが遅いのが悪い」


 はあ?予定通りですけど。

 約束は明日だし、遅刻した覚えはないわよ。


「それにしても、グラント伯爵も公爵家の私に嘘をつくなんて重罪だぞ」

「嘘?」

「お前たちはまだ着いていないと言われたんだ」

「わたくしたちは着いたばかりですけれど」

「お前まで嘘をつくのか。外で見張っていたんだ。入った形跡はなかったぞ」


 え、見張ってたの?

 もしかして、着いたらすぐに連れて行けるように?

 連れて行くというよりは、これはもう拉致だけど。


「いえ、本当に。私たちは着いたばかりです。どこで見張っていたのかはわかりませんが、見落としたのでは?」


 ラディってばいけしゃあしゃあと。

 見落とすも何も、転移で鍛錬場に着いたんだから、見えるはずがない。

 でも、まあ、本当に嘘なんてついていないし。

 こちらに非はないはずだ。


 というか、こんなことになったから。

 ちょっとラディとふたりで話したいのよね。

 結界張っていいかしら。


「ラディ、防音結界を張ったわ。ごめんなさい、わたし、あまりにもびっくりして固まってしまって、捕まってしまったわ」

「いや、俺も。さすがに、カイン陛下が誰かわからないなんて思わなかった」

「ほんとよね。こうなったら王宮に行くしかないけど、シェロが捕まらなかったことだけはよかったわ」

「そうだね。多分、シェンロン様は、あのまま帰ってこのことを向こうに伝えてくれていると思う」

「そうね。向こうの反応が怖いわ」

「それね。想像したくないよ……」


 本当に、両親やルイス伯父様、陛下の反応が怖い。

 きっとシェロは一気に転移して帰っただろうから。

 彼らが知るのも時間の問題だ。


 にしても、結界の中での会話は楽だわね。

 このまま着くまで話していようと思ったんだけど、公爵子息が結界をドンドンと叩いてうるさいので解除した。


「なんですの?」

「何をふたりでこそこそ話しているんだ!」

「暴れてもいないし、大人しくしているんだからいいじゃないですか」

「お前たち、生意気になったな。それに、何だ、その服は」


 ラディは、ジャケットにTシャツにジーンズ。

 わたしは、ロングワンピにロングカーディガンだけど。

 そんなにおかしいかしら?


 というか。


「着いたばかりなのに、王宮に行くような服を着ているわけがないでしょう?」

「そうですよ。実家に帰るのに、ちゃんとした服装なんかしませんよ」


 そんなことを話していたら王宮に着いたみたいだ。

 よかった。やっとくだらない会話から逃れられるわ。


 そう思いながら馬車を降りて、周りを見回してみる。

 久々のレンダルの王宮だ。

 かなり通ったし、懐かしいと思うと思いきや、そうでもない自分に驚く。

 それよりも金ぴかで成金趣味な内装のほうが気になる。目が散るのよね。

 この王宮、こんなに趣味が悪かったかしら?


「何をしている、早く入れ」


 え?ああ、もう着いたのか。

 ここは殿下の執務室かしら?本当に仕事させるつもりなのかしら。


 まあ、でも、ここまで来たら入るしかない。

 ラディと入室したら、オスヴァルト陛下と目が合って驚いた。

 あれ?ここは、陛下の執務室なの?何でここに?


 なんて考えている場合じゃないわ。礼を取らないと。


「おお!リディアではないか!よいよい、楽にしてくれ」

「陛下。ご機嫌麗しく。大変ご無沙汰しております」

「陛下。大変ご無沙汰しております」


 ラディとふたりで挨拶をして顔を上げたら、陛下がきょろきょろしていた。

 どうしたのかしら?


「アーロンはどこだ?」

「父でございますか?来ておりませんが」

「そうなのか?いつ来るのだ?」

「え、あの、恐れながら。父が来る予定はありません」

「なんだと?いや、確かにな、アーロンには働かせすぎたとは思っておった。けどな。いくら何でも、さすがに休みすぎだと思うのだ。そろそろ戻ってくるように言っておいてはくれんか」

「はい?」


 陛下は一体何を言っているのだろうか。

 休みすぎって何のこと?お父様は辞職したはずだし。

 お父様たちがグリーンフィールに来て半年以上経ってるわよ?


「あの、陛下。恐れながら、父は辞職したと聞いております。そして、先日、グリーンフィール王国民になりました。レンダルからは除籍されているはずですから、戻ってくることはないと思いますわ」

「なんだと?」

「そのような書類にサインも頂いたと聞いておりますが……」

「わしが?サインを?」

「はい」


 肯定したら、陛下が膝をついて項垂れてしまった。

 どうしようと思ってラディを見たら、ラディは遠い目をしている。


 お父様。やっぱり、陛下はまったく理解してなかったわ。

 無理やりペンと印璽を持たせた弊害がここに。


 陛下。大変恐縮なのですが、もうどうにもなりません……。

 現実に気づいて、お仕事がんばってくださいませ。


「おい、いつまで父上と話しているのだ。呼んだのは私だぞ」


 ああ、殿下、居たのですね。

 一番偉そうな机に座っているから、ここは殿下の執務室のようだ。


「殿下。お久しぶりでございますわ。お約束は明日だと聞いておりましたが?」

「殿下。お久しぶりです。私も、明日の予定だと聞いております」

「なに呑気なこと言ってるんですかぁ?こぉんなに仕事が溜まってるんですよぉ?見て分からないんですかぁ?」


 うわ、小動物娘まで居たのか。

 というか、この娘、こんな話し方をするのか。

 バカっぽいからやめたほうがいいと思う。


「っていうかぁ。いい加減に嫌がらせするのやめてもらえませんかぁ?わたし、あなたのおかげでドレスも買ってもらえないんですけどぉ」


 今度は一体何の話なのか。

 ここにはまともな人間はいないの?


「そうだぞ。お前はどこからでも嫌がらせをするんだな、呆れたぞ」

「何のお話か分かり兼ねます。わたくし、そのような事は一切しておりません」

「じゃぁ、なんでぇ、わたしはドレスを買ってもらえないんですかぁ」


 知るか。


「おふたりはご婚約されたのですか?」

「それはぁ、まだだけどぉ」

「では、予算はおりませんので、殿下の個人資産から買ってもらってください」

「は?」

「殿下の婚約者でしたら予算がありますが、でなければ国のお金は使えませんわ。これは、わたくしが嫌がらせをしてもしていなくても変わりません。まあ、嫌がらせなどしていませんが」

「えぇー。それっておかしくないですかぁ?わたし、ハイン様の恋人なのにぃ」


 全然おかしくない。

 あんたの頭の方がおかしい。


「私の個人資産から出せというのか?」

「婚約者でなければそうなりますわね」

「じゃあ、金を返せ」


 ……………………………………は?


 今日は訳の分からない人たちの相手ばかりしているけれど。

 この殿下の発言が一番意味がわからないかもしれない。


 わたし、あなたにお金を借りた覚えはありませんけど?


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