表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第二章 平民ライフ稼働編
32/149

31.彼女と彼は探られる。

side リディア

 わたしは、今、ちょっと悩んでいる。


 魔道具店がオープンして。

 お弁当屋さんも出店許可が下りて。

 わたしとラディの平民ライフは、なかなか順調だと思う。


 でも、それは、ほとんどがお母様の商会頼りで。

 わたしたちだけの力では到底できなかったことだ。

 両親にも伯父様にも、そして、商会やギルドにも感謝しかない。


 それなのに、わたしは毎回余計なことばかり言っている気がする。

 そして、みんなの仕事を増やしまくっている。

 これは、本当に申し訳ないと思っているのだ。


 特に、缶詰なんか、気づきが遅いというか、詰めが甘いというか。

 伯父様に相当尽力してもらった。


 ということで。

 わたしは今、伯父様にどう御礼を返そうか悩んでいる。


 他のみなにも感謝しているから、いつも差し入れをしているけれど。

 今回の伯父様のご尽力はそれだけじゃ足りないと思うのよね。


「ねぇ、ラディ。伯父様への御礼って何がいいかしら?」

「んー。何でも喜んでくれると思うけど、侯爵ひとりだけへの御礼だと遠慮するんじゃないかな?」


 あー、なるほど。

 それはあるかもしれない。


「みんなで食事会をするのはどう?侯爵はリディの料理をすごく気に入っているし、みんなと一緒なら感謝も受け取りやすいかもしれない」

「そっか。そうね。いいかも。海鮮パーティーとかしたら喜んでくれるかしら」


 みんなにたらこを紹介してから、生の魚に興味を持つ人が増えた。

 この辺では生魚は食べないから、まだ、恐る恐るって感じだけど。


 ラディも最初は抵抗があったみたいで、食べることはなかったし。

 でも、炙ったり、味を付けたりしたら食べてくれるようになって。

 最近になって、やっと、お刺身を食べるようになったところだ。


 伯父様も実は気になってるっぽいから、生のお魚を使いつつ、他にも、この辺では食べてなさそうな調理法のお魚料理を出してみたらどうかしら?


「いいんじゃないかな?俺も漸くお刺身のよさがわかってきたよ。手巻き寿司とか、みんなでやれば楽しそうだよね。海苔の宣伝にもなるし」


 あら、すてき。

 それはいい考えだわ。さすがラディね。


 じゃあ、早速、両親にも相談しようと思って、手紙を書いて。

 魔法転送で送ったら、入れ違いに手紙が届いて驚いた。

 まさか、今送った手紙への返事ってことはないから、仕事のことかしら。


 なんて、軽い気持ちで手紙を開いたら、もっと驚いた。


「ラディ、わたしたち、探られてるみたい」

「は?」


 ラディの反応も尤もだ。

 でも、手紙には、たいした情報は書かれていない。


 デュアル侯爵領内で見慣れない人が情報を探っている。

 その人が探しているのが、多分、わたしとラディだと思われる。

 ということだけだ。


「それって、魔道具や缶詰のことを聞きつけた人が、アイデア元のリディを探してるってことかな?」

「え、でも、わたしがアイデアを出してることは伏せられてるはずよね?」

「その辺の情報管理は徹底してるけど、でも、万が一ってこともあるし。他に思い付かないんだよね。探られる理由としては一番可能性が高いと思う」


 まあ、確かに。

 わたしとラディ個人を狙ってくる理由としては、そこが妥当よね。

 基本的に、わたしたちはただの平民で目立つことはしていないはずだから。

 デュアル侯爵領内で探ってることからして、狙われるとしたら、商会関連しか思いつかない。


 せっかく、御礼の海鮮パーティーのことを思い付いて、ちょっと楽しくなってきたところだったのに。そんな気分が台無しだわ。


「とりあえず護衛強化するから。リディ、絶対にひとりで出かけちゃだめだよ」


 すごく真剣な顔をしたラディにそう言われて。

 それからは、それはもう要人警護くらいの勢いで、ラディに護衛をされることになった。


 と言ってもね?

 我が家の結界、かなり鉄壁だから。

 畑くらいはひとりでもいいんじゃないかな、って思うんだけど。

 裏の倉庫だって、表からは見えないんだし、ひとりでいいと思うんだけど。

 ラディは、ほんの少しでも家から出るだけでついてくる。


 この状態、ラディの負担になっていないかしら?

 そう言っても、ラディは、ひとりにするほうが精神的負担が大きいとか、誘拐されたらどうするんだ――さすがにそれはないと思うけど――、とか言って、ずっと一緒にいてくれるから、お言葉に甘えているんだけど。


 わたしたち、最近、結構いい雰囲気だったと思うのよ。

 アンヌ様にも揶揄われてしまったくらいだし。

 ラディとの距離が近くなって、これは仮夫婦の仮が取れる日も近いかしら?

 なんて思ってたところだったのよ。


 そんな時に、一緒にいる時間が増えたから。

 ちょっと浮かれても許してほしい。

 ラディは真剣に護衛してくれてるのに、こんなんじゃだめだと思うんだけど。

 でも、たまにこっそり、距離を詰めてそばにいても許してね?


 そんな不埒なことを思いながらも、今日もラディと一緒に畑に出て。

 畑仕事なんてものをしていたら、ラディがピクっとした。


 どうしたのかしら?


「門の前に誰かいる。っていうか、これ……」


 ん?ラディの気配探索が誰かを察知したってことかしら?

 でも、なんだか、ラディの様子がおかしい。


 ラディは、俺が見てくるからリディは家に居てって言ったけど、ラディの様子も気になるから、わたしもラディから離れないようにして後に付いていったら。


「兄上!」


 は?あにうえ?………お兄様?

 え?ラディのお兄様ってこと?


「おお!弟よ!久しぶりだな!」


 本当にラディのお兄様みたいだ。

 細身のラディと違って、お兄様はがっちりタイプ。


 ラディが、兄上の魔力を感じてびっくりした、って言っていて。

 なるほど、それでちょっと様子がおかしかったのね。


 結界越しに話すのも何なので。

 中に入ってもらって。馬を厩に繋いで。


 邸の中に案内した。


「おお。ここがグリーンフィールの公爵家か。さすがいい家だな」

「いや、ここはリディの家だし、義父上も義母上もいないけどね」


 そして、我が家はもう公爵家じゃないんだけど。

 それはわざわざ言わなくていいかしらね?


「あの、はじめまして。リディアです。ずっとご挨拶もできていなくて、申し訳ありませんでした」

「いや、それはこちらの台詞だ。俺はラディンベルの兄で、アンディベルと言う。いつも弟が世話になっているな」


 雰囲気から言って、すごく気さくな人のようだ。

 よかった。話しやすそうな人で。


「狭い家ですが、こちらへどうぞ。あ、でも、長旅の後でしたら、先に、湯あみのほうがいいのかしら」

「え、いいのか?」


 あ、ものすごく嬉しそう。

 ラディはいつも穏やかでそんなに表情に変化はないんだけど、お兄様――あ、わたしからしたらお義兄様ね。ふふ――は、ずいぶんと表情が変わる人だ。


 まずはリビングに、と思ったけど、ふと思いついて湯あみを勧めてよかった。

 ラディに浴室に案内してもらって。

 その間に、おもてなしの準備をしましょう。

 お風呂上りなら、冷たいもののほうがいいかしら?

 甘いものはお好きかしら。


「はあああああ?なんだ、こりゃあ!」


 あら、驚き方もラディとは違うのね。

 ぜひ、グリーンフィールの水道を堪能してくださいませ。


「リディ、ごめんね。突然来るなんて、どうしたんだろう」

「ううん。仕事も落ち着いているし、わたしは構わないけれど。何かあったのかしらね?………ん?もしかして、探ってた人ってお義兄様?」

「あー、そういうことか!って、でも、なんで?」

「え、わたしに聞かれても」


 探ってたのがお義兄様ならば、見慣れない人だという情報とも合う。

 でも、その場合、気になることがある。


「っていうか、ラディ、この邸のこと、伝えてないの?」

「え?いや、そんなことは………………………あるかも」

「そうなの?」

「いや、隣国に家があるってことは伝えたんだけどね?」

「場所は?」

「……………ここのことは言ってないね」


 なんてことだ。


 手紙とかどうしてたんだろう?って思ったけど。

 ラディは筆不精みたいであまり送ってなかったし。

 レンダルからは書類しか送られてこなかったように思う。

 その書類も、お父様のところに届いたのよね。


 ああ、それで、デュアル侯爵領に行ったのか。

 って、だったらお父様に問い合わせてくれればよかったのに。

 というよりも、お父様も話しておいてくれればいいのに。


 なんて思ってたら、お義兄様がお風呂から出てきて。

 豪快に頭を拭きながら戻ってきた。

 ラディ、ちゃんとタオルも出してくれてたのね、よかった。


「いやいや、この家はすごいな!」

「さっぱりしていただけました?」

「ああ。ありがとう。湯あみがこんなに簡単にできるなんて思わなかった」

「兄上。もう少し気を遣ってくれない?ここは、うちみたいに男所帯じゃないんだから」


 え、お義母様、いらっしゃるわよね?

 騎士だと言ってたから、気にしないのかしら。

 わたしも気にならないけど。


「わたしは平気よ。それよりも、こちらへどうぞ」


 お義兄様にご用意したのはチーズケーキとアイスティー。

 わたしたちの分は、ポテトチップスとレモン炭酸水だ。


 炭酸水は、森に行ったときに見つけたのよね。

 気泡のある泉を見つけて、それが炭酸水だとわかったときは思わず声が出た。

 うれしくてラディに勧めたら、ラディも気に入ってくれて。

 今では定期的に汲みに行っている。


「おお。これは、公爵閣下からいただいたケーキと同じだな!すごく美味かったから、また食べたいと思ってたんだ」


 あら、それならお出ししてよかったわ。


 にしても、すごい勢いで食べている。

 よっぽど気に入っていたのね。


「やっぱり美味い。ありがとう。……お前たちが食べてるのは違うものなのだな。そっちのは何なのだ?」

「これは、じゃがいものお菓子です。よかったらどうぞ?」


 やっぱり気になるわよね。

 すみません、今日はわたしたち、甘いものの気分じゃなかったんです。


 ポテチも勧めたら、お義兄様はこっちもすごい勢いで食べ始めた。


「これはうまい!」

「兄上。食べすぎると体によくないんだって。それに、太るよ」

「……っ!……そうなのか?」

「ここに出している分くらいなら大丈夫ですよ」

「そうか!」


 なんか、反応が犬みたいな人だな。

 耳が垂れたり立ったりするのが見えるような気がする。


「ところで、兄上。デュアル侯爵領で俺たちのこと、探ってた?」

「悪かった。場所の確認と周辺のことを調べるために影を放ったんだが、侯爵領にお前たちが住んでいないことがわかって、探ることになった」

「俺もちゃんと場所を伝えてなくてごめん。でも、だったら、サティアス家に聞いてくれればよかったのに」

「いや、自分で見つけられないなんて影として情けないだろう。でも、探ってることを知られた時点でだめだな。迷惑をかけた」

「うん。まあ、警戒はしてたけど、俺も悪かったし」


 あー。そういうことなのか。

 影の矜持ってやつかしら。影も大変ね。


「俺たちを探ってた理由はわかった。じゃあ、事前の知らせもなく、突然来たのはどうして?」


 そうね。事前に知らせてくれたら、ここを探す手間は省けたのに。

 何があって、こんな突然の来訪になったのかしら。


「ああ。お前たちの連れ戻し命令が出ているんだ」


 ……………は?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ