表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第二章 平民ライフ稼働編
28/149

27.彼女と彼は計画を進める。

side リディア

 先日、リアン商会の魔道具店がオープンした。


 初日からすごい人でかなりびっくりしてしまったけれど。

 いや、だって、貴族ってそんなに買い物に出るイメージないから。

 わざわざ店舗に来る人ってそんなに多くないと思っていたのよね。


 聞けば、執事とか、使用人や平民も多かったみたいだけど、他の店舗の評判もあって、結構注目されていたみたいだ。


 でも、これって、王都だからだと思うのよね。

 ――そうなのだ、初っ端から王都に出店したのだ。


 わたしとしては、まずはデュアル侯爵領から始めればいいと思ってたのだけど。

 ルイス伯父様が、絶対に売れるから王都に出す!と言って聞かなくて。

 アラフォーの伯父様捕まえて、子供の癇癪みたいに言うのも何だけど。

 でも、そう言いたいくらいに主張していた。


 おかげで、ラディが王都まで調査に行くことになって。

 いくら転移陣があると言っても行動範囲が広がるわけだから、出店前の準備期間、ラディはとんでもなく忙しくしていた。


 ………働きすぎ阻止のために、わたしも王都に付いていきましたが何か?

 決して、王都で買い物に耽っていたわけではない。

 ちゃんと王都のデュアル侯爵邸で仕事をしていた。本当だ。


 そんなことがありながらの王都での出店。

 結果的には大成功。悔しいけど、伯父様の言う通り。

 どの店舗も、連日、お客さんが絶えないらしい。


 それは喜ばしいのだけど。

 今回、実感したのは、伯父様の権力と人脈だ。


 普通に考えて、王都にそんなに空き店舗があるなんて思えない。

 調査に出たラディも、すぐに出店するのは難しいかも、と言っていたし。


 それなのに、伯父様はあっさりと数店舗分の物件情報を持ってきたのだ。

 どんな手を使ったのかは聞いてないけど、これ、王家の力も使ってると思う。

 というのも、今回販売に踏み切った商品は全て陛下に献上しているから。

 ――もちろん、わたしは同行しなかった。


 その時に、陛下に何かしたんじゃないかしら。何かって相談だけど。

 その結果、物件情報をもらえたんじゃないかしら。


 陛下と伯父様は年も近いし、それなりに親しいみたいだから、弱みを握っててもおかしくないけど、今回は正攻法で商品の有益性を訴えた結果だと思っている。

 新商品が出るときは必ず献上する、とかの条件はあったかもしれないけど。

 間違っても、わたしのことを話に出していないことを祈っている。

 伯父様、頼みますわよ?


 でも、そうして得た情報と人脈を使って、物件を獲得したと思うのよね。

 伯父様、恐るべし。味方でよかった。


 ――――そんなことを考えていたら、ラディが帰宅した。


 売れ行きを見て販売戦略を変えるらしくて、最近は結構頻繁にリアン商会の拠点に行っているのだ。本当にすっかり顧問だわ。

 我が家と拠点を繋ぐ転移陣を置く許可も出たから、移動に時間はかからないけれど、このところは本当に忙しくしていたと思う。


 とりあえず、お茶を出して休んでもらおう。


「本当に忙しいわね?」

「うーん。ここ最近はそうだったけど、今日で一段落したよ?」

「本当?よかった」


 これ以上働くんだったら、強制的に休ませるところだったわ。


「うん。冷蔵庫の目途が立ったからね」


 魔道具店の一番人気は冷蔵庫。

 製造が追いつかなくて、数か月先まで予約でいっぱいだという話だ。

 それを、購入できる台数を制限したり、一台もない家を優先的にするとか、いろんな策で捌いていたけれど。目途がついたならよかった。


「そっか。よかったわね。……じゃあ、明日からは休めそう?」

「うん。数日は休みもらったよ」


 よし。よくやった。

 うっかり満面の笑みをしてしまったら、ちゃんと休むよ、って言われた。

 ラディには、結構考えていることがばれている気がする。


 それからは、人気商品の話とかになって。


 魔道具は、冷蔵庫のほかにもコンロや照明も人気で。

 照明については、卓上とか、バリエーションを増やすべくわたしも考えてる。


 お菓子は、レンダルのときと同じ感じね。

 この世界のお菓子は甘すぎるから、甘さを調整して見栄えをよくしたら、結構食いついてくれる。今は日持ちする商品を考えているところだ。


 雑貨店は満遍なく売れてるようで何より。

 今回、紙をお披露目したからか、中でもノートへの注目が高いみたい。


 お洋服は肌触りを気に入ってもらえてる。こだわってよかったわ。

 あ、でも、爆発的に人気なのは下着ね。

 そういえば、ラディもそうだけど、伯父様も下着信者になったわ。


 ただ、デニムパンツ―ジーンズ―が思いのほか目立ってなくて残念だ。

 やっぱり色落ちが気になるのかしら?


「俺は、ジーンズ、好きだよ?」

「うん。よく似合ってると思う」


 ……ラディが気に入ってくれてるなら、いいか。


 ちなみに、リアン商会の商品は、王都でしか手に入らないわけではなくて。

 デュアル侯爵領と王家直轄領のギルドでも販売している。

 ギルドに全振りしてるから、商会ではオーダーが入った商品を卸す程度だ。

 王都ほどの勢いはないし、こちらに手がかからないのはよかったと思う。


 ――――そして、翌日。


 わたしも仕事を休んで、魔道具店オープンのお祝いをすることにして。

 ふたりで、異世界料理を肴にまったりとしていた。

 ラディの好物をたくさん用意して、昼からお酒も飲んで――この世界では十五歳が成人でお酒も飲める――、休日を満喫していたのだけど。


 だがしかし。

 ラディはやっぱりワーカホリックなのよね。

 ちゃんと休むって言ったのに。


「リディ、お弁当屋さんのほうはどうするの?」


 えー、もう始めるの?

 いや、やるわよ?全然やるわよ?そのつもりだけど。

 もう少し休んでからでもよくない?


「もう少し落ち着いたらにしようと思ってたんだけど」

「リディはまだ忙しい?俺は、これからは、拠点に行くのは週一くらいでも大丈夫そうだよ。魔法転送で資料を送れば、家でも仕事できるし」


 あら?

 もうそこまで片付いてるの?


「そうなの?わたしも、今はもうそんなに忙しくないけれど」

「俺もね、何でもひとりでやるのは無理だから、少しずつ仕事を分け始めたんだ。オープンしたばかりで販売動向とかの調査も忙しかったけど、みんなに仕事を教えてたから余計に忙しかったんだよ」

「そうだったの。そうね、そうじゃなきゃ、ラディが倒れちゃうもの」

「うん。リディの方も仕事を分けられればいいんだけどね。前世知識はそうもいかないし」


 そうね。この知識はわたしにしかないものね。

 でも、実際のところは、図案描いて機能や素材を書き加えるだけだから、そんなに大変な作業じゃない。改良点はみんなも意見くれるしね。


 そんなことより、ラディの仕事が分担できてよかったわ。


「わたしのほうは大丈夫よ?しばらく新商品も出せないだろうし」

「そりゃね、今、新商品出たら、製造も販売もパンクしちゃうよ」


 そうね。だから、わたしは、今、忙しいというよりも結構暇よ?


「リディが忙しくなくてよかった。時間があるなら、少しずつ始めよう?お弁当屋さん、やりたかったんだよね?」

「それはそうだけど、ラディがもっと休んでからでいいのに」


 そう言ったのに、ラディは、大丈夫大丈夫、とか言って、商会の仕事が忙しくなる前に調査していたお弁当屋さん関連の資料を持ってきた。


 あ、もうやるのね?

 まあでも、資料はもうあるし、ラフに話すだけなら疲れないわよね。


「リディは、外で働く平民向けって言ってたけど、ギルド職員や冒険者にもいいと思うんだよね」

「あ、そうね。彼らは外出も多いし、時間も不規則になりがちだから、いつでも食べられるお弁当はいいかもしれないわ」

「それにね、マリンダって漁とか魚の加工の仕事をしている人が多いでしょ?昼には家に帰ってるか、家庭内での仕事ばかりで、あまり外でごはん食べないんだ。だから、マリンダよりもランドルのギルド周辺での出店がいいと思う」


 なるほど。

 確かに、わたしたちが住むマリンダは港町だものね。

 そういえば、食堂は少ないかもしれない。

 それに、食べたくなったら、その場で捌いちゃいそうな人ばかりだし。

 そっか、マリンダにはお弁当屋さんはあまり需要がないのね。


 対して、隣町のランドルには、ギルドもあるし、商店も多い。

 ラディの言う通り、こちらのほうが狙い目だ。


 我が家はランドル寄りにあって、マリンダの港に行くのもランドルのギルドに行くのも、所要時間は変わらない。ならば、迷うこともないわね。


「そうね。さすがラディだわ。ランドルがいいわね」

「うん。よかった、調べておいて。ただ……俺が調査に出たときはまだギルド周辺にも空き店舗があったんだけどね。商会の品を扱ったりで、今は空いてるかがわからないんだよね」

「そっか…。でも、そこはミンスター卿にお願いしたら何とかならないかしら」


 ミンスター卿は、ランドルとマリンダを取りまとめている代官様だ。

 伯爵家の三男で、文官をしていたところ、王家直轄領の管理を任されたとか。


 この国に来てすぐに、ミンスター卿にはごあいさつに行っているし。

 国民登録が済んだときにも報告に行った。

 商会の話が出たときも、ルイス伯父様や両親を交えて話をしたけれど、穏やかで話のわかる感じの人だったと思う。


「そうだね。探してくれるかもしれない。でも、まずは、ミンスター卿とギルドに出店の許可をもらうほうが先かな?」

「あ、そうか。出店となると、ギルドの許可も必要ね」


 出店管理は商業ギルドがやっているから、確かに必要だ。

 ほんと、ラディは細かいことまで気づいてくれるわね。

 わたしが杜撰なだけだけど。


「今度、時間を取ってもらって交渉に行こう」

「交渉……。わたしにできるかしら」

「何言ってるの。リディなら問題ないでしょ?っていうか、お弁当サンプル持って行って食べてもらったら一発で許可出ると思うけど」


 ラディの自信が謎だ。どこから来るんだ、その自信。

 でも、食べてわかってもらえるなら、それくらいがんばれる。


 あ、そうだわ。

 もう、ラディと話してるとわたしもいろいろ案を出しちゃったりして、結局、仕事モードになっちゃうのよね。


「あのね。前にラディにはお弁当を食べてもらったけど、スープも販売したらどうかと思ってるんだけど」

「スープを?」

「うん。保温水筒を持ってきてくれた人にその場で注いであげるの。そうしたら、温かいまま持って帰れるわ」

「え、ちょっと待って。ホオンスイトウって何?」


 あ、これは、まだ販売していないんだったわ。

 新商品って言ったら怒られるかしら。


「……ごめんなさい。まだ試作品なんだけど」

「新商品とか言わないよね?」

「に、なればいいけど、ほら、最初はお弁当屋さんだけで扱う感じで!」

「……そう。まずは、どういう商品か教えて?」


 真顔になったラディは怖いけど、ここはがんばるしかない。

 試作品を持ってきて、ある程度の時間は温度を保てることを説明した。

 保温水筒を持参してもらえればスープ代だけにできるから、お弁当の価格も高くならないってことも伝えたけれど。


「なるほどね……。確かに、お弁当は冷たいから、温かいスープがあったらいいよね。しかも魔道具じゃないってことは水筒自体の価格も抑えられるし。いい考えだと思う。思うけど!そんなの、スープ用じゃなくたって欲しい人いるでしょ?お茶とか持ち歩けるんだから。売れるに決まってるじゃないか」


 ラディは一気にそう言ったまま、黙ってしまった。

 これは、保温水筒にかなり食いついていると思われる。

 そして、きっと高速回転で販売戦略を考えている。


「ラディ?あの、すぐじゃなくていいのよ?案として、考えてるだけで」

「わかってる。でも、そんなの、俺も売りたい」


 ラディのワーカホリックを嘆いていたけど、仕事モードに火をつけているのはわたしなのかもしれない。ごめんなさい。


 ただ、実は、もう一案件、商会にお願いしたいことがあるのよね。

 でも、マリンダにもいいことだと思うから、怒らないでね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ