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追放令嬢は隣国で幸せになります。  作者: あくび。
第二章 平民ライフ稼働編
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26.彼と彼女は立ち会う。

side ラディンベル

 まさか、俺が商会の顧問になるだなんて思ってもいなかった。


 半年前、母国レンダル王国の第一王子が暴走して、当時王子の婚約者だったリディを国外追放したときに、俺はリディに付いて国を出ることに決めた。


 ――騎士を目指していた身だから護衛として付いていくつもりが、結婚して旦那の座におさまることになったけど、一緒にいるうちにリディに惚れた俺としては、今となっては当時の俺を褒めたいくらいだ。


 母国を出て向かった先は、隣国グリーンフィール王国。

 この国にはリディの家があると聞いていたけれど、それがとんでもない家で。

 とにかく便利な生活魔道具であふれた家だった。

 初めて見たときは、本当に度肝を抜かれたよね。


 レンダルでは貴族だった俺たちが、今、使用人がいなくても大した苦労もなく、むしろ以前よりも快適に生活できているのは、その魔道具のおかげだ。

 魔道具がなければかなりの重労働だと思っていた炊事も洗濯も掃除も、風呂―湯あみ―だって、難なくできている。本当にすごい。


 人を選ばず、誰もが便利に暮らせる生活魔道具だから。

 この魔道具で商売を考えていると聞いたときからやるべきだと思ってたし。

 何でも協力しようと思ってた。それは、今でも変わらない。


 俺が協力できることと言えば、調査仕事だ。

 実家がレンダル王家の影を担っているから、諜報活動の教育を受けて育った俺としては調査なんて日常茶飯事で。レンダルの第一王子の学友でもあったから、王子の執務のためにもよく調査をしてきた。


 だから、魔道具販売の話が具体化し始めた時に調査を買って出た。


 そのうち、リディの母君―義母上―の商会が主導で動いてくれることになって。

 義母上の商会のみならず、義父上も義母上もこの国に来て。

 隣領のデュアル侯爵の協力も得られて。

 ギルドまで巻き込むことになって。


 どんどんと事態が大きくなっていることを感じて怯んだりしたけれど。

 俺はできることをやるしかないから、その時必要な情報を集めてきた。


 それが、次第に、集めた情報の分析という仕事を依頼されるようになって。

 人手も足りないし、俺も役に立てるなら、と思って、分析になっているかは少し自信がなかったけど、思うところを意見させてもらってきた。


 で、気づいたら、魔道具を売る商会の顧問になってた。

 いや、魔道具だけじゃなくて、ありとあらゆる画期的な商品を扱う商会だけど。


 こんな未来、想像もしてなかったよね。

 王子に振り回されて、忙しくて、仕事以外は惰性で生きていた俺が。

 今はものすごく大きな商会の顧問なんて立場にいるだなんて。


 でも、正直に言えば、少しだけ俺も役に立ってる気がしてうれしい。

 この国に来てからはずっとリディの恩恵を受けるばかりだったから。

 リディにもらったたくさんの恩をやっと返せるような気がしている。


 リディのためにも、商会のためにも、そして俺のためにも。

 顧問という仕事は大役だけど、できることを精一杯やって行こうと思う。


 それからは、気合も新たに商会の仕事に打ち込む毎日で。


 調査に出て、結果をまとめて、分析して、今後の戦略を提案して。

 義父上やデュアル侯爵からのアドバイスに感激したり。

 リディから働きすぎだと怒られたり、そっちもだからと言い返したり。

 ――お互いに牽制し合うのは今まで通りだ。

 時々、リディの仕事―商品開発―のほうにも顔を出したりして。


 仕事漬けだったけど、すごく充実した日々を過ごしてきた。


 そして、今日。

 遂に、魔道具店がオープンする。


「お母様、伯父様、今日は開店おめでとうございます」


 リディがそういうのに続いて、俺もお祝いの言葉を言ったら。


「何を言ってるの。もとはと言えば、あなたたちが言い始めたんでしょう?どう?念願の魔道具店は」

「そうだよ。お祝いを言われるのは僕たちじゃなくて君たちだよ。おめでとう。いいお店になったね」


 義母上とデュアル侯爵からそう言われて。

 俺たちが言い始めたことが実現しているこの時を、やっと実感した。

 正直なところ、さっきまでは、単純に、お店のオープンを喜んでいただけだったんだけど、今、じわじわと感動が来ている。


 いや、まあ、商会のお店であって、俺たちの店じゃないしね。

 俺たちがお祝いを言われるのはちょっと違うようにも思うけど、でも、感慨もひとしおだ。


 リディも、そう思っているのか、しみじみと店内を見まわしていた。


「ありがとう。想像以上に素敵なお店だわ」

「言い出しただけで、お任せしてばかりでした。本当に、想像以上のすごいお店でびっくりしています」


 どうにも、俺たちのお店を作ってもらったみたいな発言になってしまったけど。

 そこは突っ込まずに、義母上もデュアル侯爵も、うんうんと頷いてくれた。


「本当にすごいよね、このお店」

「リディアちゃんが拘ってたんだもの。がんばったわ」

「ありがとう、お母様。わたしが考えていた以上のお店よ」

「まあ、うれしいわ」


 いやね、本当にすごいんだよね、このお店。


 販売するのは、まずは、七つの魔道具。

 冷蔵庫・コンロ・オーブン・洗濯機・掃除機・ドライヤー・照明。

 どれも使ってみれば、すぐにどんなに便利かがわかる魔道具だ。


 それを取り揃えてるってだけでもすごいのに。

 何がすごいって、リディ発案のショールーム。


 これも前世知識みたいなんだけど。

 店内に、魔道具が設置された家の内部が再現されていて、そこで実際に魔道具を使ってみることができるんだよね。


 魔道具は、高額だから、ほとんどの顧客は貴族になると思う。

 となると、貴族宅に伺って商品を見せることになるから、実店舗は必要ないという意見もあったんだけど。


 リアン商会が魔道具を扱っていることをアピールするためにも。

 商品をよく知ってもらうためにも。

 実際に使う使用人たちにも見てもらったり、説明するためにも。


 実店舗もやっぱり必要だということになって。

 まあ、裕福な平民も買ってくれるだろうしね。


 でも、単に商品を並べるだけなら、貴族宅に伺うのと同じだから。

 実際に設置したところを見てもらおうとリディが言い出したのだ。


 そうしてできたのがショールーム。

 これ、すごくよくできていると思う。

 単体を見るよりも、設置されているところを見るほうが理解が早いし。

 言葉だけの説明よりもよっぽどわかりやすい。

 何よりも、購入意欲が湧く。


 俺は、今日初めてショールームを見たんだけど、これは想像以上に売れるかも。

 俺が作った販売戦略をちょっと作り替えないといけないかもしれない。


 しかも、今回売る魔道具は浴室周りのものなんてドライヤーくらいなのに。

 ちゃっかりバスルームや洗面室まで作ってあった。


 確かに、グリーンフィールでは水道が普及してきているし、お湯を作れる精霊石も安価だから、湯あみは簡単になってきているけれど。

 浴槽とシャワーの付いたバスルームまで設置している家はまだ少ないのだ。


 それをこんな風に見せられたら、欲しい人が出てくるに決まっている。

 魔道具だけじゃなくて、バスルームのリフォーム受注が入ることも想定しておかないと。


「ラディ、気になるところでもあった?」

「あ、ごめん。想像以上に売れそうだから、販売戦略を変えないと、と思って」

「え、もうそんなこと考えてたの?まだ売り始めてもいないのに」

「ふふふ。ラディン君は仕事熱心ねぇ」

「あはは。まあ、でも、気持ちはわかるよ。この店見たら売れるって思うよね」


 リディには呆れられて、義母上やデュアル侯爵には笑われてしまったけど。

 いや、本当に。これはすごいことになるかもしれない。


「それに、オープンを待つお客さんが外にたくさんいるしね」

「うわ、いつの間に?」

「リディアちゃん、気づいてなかったの?」


 そうなのだ。

 さっきから、店内を伺う人がどんどん増えてきているのだ。


 というのも、実は、この魔道具店は最後のオープン店舗。

 リアン商会では、このほかにもいくつかの店舗を既にオープンしている。


 最初にオープンしたのは、レンダルでもお店を出していた菓子店。

 色とりどりのフルーツが乗ったタルトやチーズケーキをはじめとした、甘さ控えめのケーキは開店してすぐに評判になった。

 カフェも併設していて、連日行列になるほどのお店だ。


 そして、次にオープンしたのは、雑貨店。

 ノートや万年筆、ボールペン、鉛筆、消しゴム、定規といった文具に。

 顔・髪・全身用の石鹸、食器、タオル、エプロンなどの生活雑貨に。

 取っ手の取り外し可能な鍋や、泡立て器などの便利な調理道具まで。


 とにかく画期的で使いやすい雑貨が取り揃えられている。

 貴族用と、少し品質を下げた平民用の二店舗があるけど、どちらも連日盛況だ。


 その他に、洋品店もオープンしている。

 衣類の販売はリディ念願だったこともあって、力を入れていた店舗だ。

 Tシャツや綿シャツ、各種パンツにスカート、ワンピースといったカジュアルな洋服の店舗と、スーツとかいう、かっちりした装いの店舗の二店舗があるけど、カジュアルな店舗が特に人気だと聞いている。


 カジュアルといっても品のあるデザインにしているし。

 肌触りがよくて着心地がいいから、人気なのも当然なんだけどね。

 あ、俺のおすすめの下着もこの洋品店で売られている。


 ――魔道具店の前に、こんなお店が既にオープンしているのだ。

 今度はどんなお店が開店するのか、気になるのもしょうがない。


 ということで、外は人だかりができている。

 今日は、魔道具店オープンの立ち合いという形で来たんだけど、これは、接客にも駆り出されそうだ。


 でも、それはリディにお任せして。

 俺は、離れたところから、人の流れを見たいと思う。

 人が集まるところや滞在時間からもいろいろわかる。


「え、ラディ。うそでしょ。接客しないの?」

「すっかり、情報管理部の顧問だね。頼もしいよ」


 そんな声が聞こえてきたけれど。

 リディ、ごめんね、これは譲れない。


 ……なんて思ってたけど、実際にオープンしたらそれどころじゃなかった。

 前評判もよかったんだろうけど、実際に見た人の評判が評判を呼んで。

 結局、俺も接客に駆り出された。


 絶対に売れると思ってがんばってきたけれど。

 言い始めたことが、目の前で形になっている。

 こんなお店ができて、お客さんもたくさん来てくれているこの光景は。

 これは想像以上のものだと、胸に来る。


 やっぱり、義母上やデュアル侯爵の言う通りかもしれない。

 リディと俺、魔道具店オープンおめでとう。


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