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孤独な学習者の夢想

作者: 藤原森滋

 俺は、いま歴史の勉強中である。俺の歴史の勉強をするときの習慣は、教科書を開くときにその広辞苑並みの分厚さに溜息して、文庫本は分冊化されているのになんで教科書は分冊化しないのか、文科省はケチだなあ、その方が内容に深みが出せるし、持ち運びできるのになあと思うことである。もはやそれは、前戯としての効能を果たしていると言っても、過言ではないだろう。しかし、以前そのことを級友に話すと文科省がケチなもんか!立派な仕事をしているのに、なぜそんなことを言う?と言ってきたひょろ長い学級委員と、いや、その前にキンドル的な教育専用の安価なモバイル・デヴァイスを開発したら、君の悩みは消えとんじゃうぜい!とかなんとか言ってきたバックトゥーザフューチャーに出てきそうなコンピュータオタク的変人がいたので、俺はそれ以来学校では女子としか喋らないようにして、しかもその内容を近くの公園を飛んでいるシラコバトの話に限定してしゃべっている。最近のエピソードを例示すれば、鳩は鳥類のなかで唯一人間みたいにゴクゴクと水面に口をつけながら飲むんだぜというのがある。なぜか女子には人気だが、もしかしたら、女子の話のネタにされて笑われているだけなのかもしれない。

 歴史の勉強をするときは、ハイ歴史の教科書182ページを開いて下さ〜いという美人な女教師の声を想起すると、課題が早く進み、なおかつ理解が深まるので重宝している。個人的には、森鴎外の小説に出てくる坂井れい子という蠱惑的な瞳を持った30歳ほどの未亡人で最も効果的に学習を行える。怜悧だが優しく肉体的魅惑を持ったフランス的年上女性という性的嗜癖を露呈させることになったが、しかたあるまい。

 心の指令のままに、テキストの182ページを開いてみると、金剛流能楽の小面のお歯黒さまとバッチーんアイコンタクトしてしまい、戸惑いを隠せず、教科書を閉じてしまう。

 今日の学習は外見としては完結した。っまあこれで終わりにしよう。



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