炎と始まりの剣
重い木の扉を押し開けると、中には屈強な斧を持った男や杖を持ったローブの女性など、5人程度が酒盛りをしていた。
俺はそれを横目に、カウンターにいる受付嬢のような女性に声をかけた。
「はい、どうされましたか?」
「あ、えっと、仕事がなくて…ギルドなら身分証明もいらないと聞いたので。」
「なるほど…ではギルドのご利用は初めてですね?ギルドカード、作りましょうか!」
どうやらクエストを受けるにはギルドカード…免許証のようなものが必要らしい。
俺は渡された紙に名前と職業を記入して受付嬢に渡し、カードを作っている間建物内で待っているように言われた。
酒を飲んでいる男が俺の存在に気付き、酒を置いて俺に近づいてきた。
「よぉ兄ちゃん、ギルドに来るのは初めてか?」
酒臭い男が俺に話しかけてきた。かなり大柄で、顔には傷がある。
「あ、はい…」
「そうかそうか、じゃあ装備も持ってねぇだろ、おっさんが買ってやるよ!」
大柄の男はそう言い、俺と肩を組んでカンターに直行した。
「え、え、ちょっと、いいんですか!?」
「なんだよ、同じギルドにいるやつは全員仲間なんだよ!遠慮すんな!」
男は大きく笑い、カウンターにいる受付嬢を呼んだ。
「兄ちゃん、職業はなんだ?」
「あ、剣士にしました」
「剣士か、じゃあそうだな…プリムスソード、そいつにしよう」
男がそう言うと受付嬢は壁に掛けられていた剣を下ろし、俺に渡してきた。
銀色に光る刀身、男であれば誰しも一度はあこがれるであろう輝き。
俺は召喚後初めて、ちょっとだけテンションが上がっていた。
「はい、プリズムソード、3000スペーラになります!」
「ほれ、ぴったり3000だ。どうだ兄ちゃん、持ってみた感想は?」
男が会計を済ませ、俺に剣を持った感想を聞いてきた。
「思ったより軽いというか…持ちやすいですね。ありがとうございます。」
「そうかそうか!じゃ、クエスト頑張れよ!」
男は満足そうに笑い、さっきまで酒を飲んでいた席に戻っていく。
「あ、あの!お礼は…!」
「あぁ?いいよ、そいつは俺からのプレゼントだ、受け取れ!」
男はそう言うと、席に座って酒を飲み始める。
俺は自分の左手に握られた剣を眺め、人の善意に心を温めていた。
「あ、紺野さん、カードできましたよ!こちらです、ご確認ください。」
受付嬢がそう言って俺に茶色いカードを渡してくる。
名前の欄にはしっかり俺『紺野梨翔』の名前、そして職業の欄には『剣士』と記載されていた。
「はい、大丈夫です」
「紺野さんは未経験ですので、階級は一番下のブロンズからです。活躍すれば階級は上がっていきますので、最上階級を目指して頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます。これからはリト、って呼んでください。」
苗字は嫌いだ。だから俺は、友人には名前の『リト』で呼ばせてきた。それはこの世界でも変わらない。
「わかりました、リトさん。せっかくですし、なにかクエスト受けていきますか?」
「お、受けれるやつあるならお願いします!」
今日すぐに受けられれば、今晩の寝床はとりあえず大丈夫だろう。
受付嬢は辞書のように分厚い冊子をパラパラとめくり、俺に見せてきた。
「こちらなんかどうです?少し凶暴な魔獣ですが、リトさんでもがんばれば倒せると思います!」
『ノチェリーウルフの討伐』
<クエスト目標>古代林に生息するノチェリーウルフを3体討伐する。
<報酬>15000スペーラ
「結構報酬高いんですかね?これって」
「そうでもないですね。もっと危険なクエストだと報酬も高いです。命を懸けて戦うお仕事ですからね!」
やはり強い相手を倒せばその分裕福に生活できるのであろう。
しかしこのクエストですらさっきの剣を5本も買えてしまうとは。これは実力をつければ大金持ちも夢ではないかもしれない。
「じゃあ受けてみます。古代林まではどうやって?」
「ギルドが送迎の馬車を出します。ここから大体1時間くらいですかね。」
そう言い受付嬢が窓の外を指差す。その指の先では、馬が筋肉質な男を乗せた馬車を引っ張っていた。
「さぁ、これ以上遅くなるとクエスト中に日没になってしまいます!こちらのチケットを馬車の前にいる職員に渡せば出発できますので、いってらっしゃいませ!あ、討伐した証拠に魔獣の角をはぎ取って持ってきてくださいね!」
「了解です。ありがとうございます!」
受付嬢からチケットを受け取り、建物の外にいる馬の前でチケットを見せる。
俺が馬車に乗り込むと、男は鞭で馬を打ち、馬はそれを合図に動き始める。
馬車から見える景色を走り抜け、俺を乗せた馬車は初めてのクエストのフィールドへ向かって行った。
第三話です!次回ちょっとだけ戦闘があります!
次回もよろしくお願いします!!
よければブクマ、感想などもよろしくお願いします!!