第2話
第2話になります!
時の流れが早いですが、そこはお許しを……。
それでは、第2話もお楽しみください!
……先に、結論から言おう。
やっぱり私は、あの、【甘くて優しい王子様】の世界に転生していた。
女主人公、エレストレス=セレスティアとして。
しかも、赤ちゃん。生まれたばかりの頃のエレストレスだ。
(原作では、生まれたてのころのことなんて書いてなかったなぁ……)
流石は貴族、赤ん坊だとはいえ、あまりにも至れり尽くせりで、とてーも毎日が楽なのである。
(これからどうしよう……)
正直、生きているうちに1番好きだった世界に飛ばされたのだから、戻りたいとか言う願望はない。戻れるかどうかも微妙だし……。
(12歳になると、王宮から招待状をもらうんだったよね。)
原作は、彼女が12歳の少女時代から始まっていた。だから、
(それまでは無難に過ごす、しかないかぁ。)
どうせ、王宮には呼ばれるのだ。そうなったら、レイスフィールドに会うこともできそうだし、無理に危険を冒す必要はない。
(よし、目標は12歳。がんばれ、私!)
そうして……
12年の歳月が流れた。
父、母と共に食事をとっていたとき、とうとうその日がやってきたことを知った。
「エレストレスよ。」
「はい、なんでしょうお父様?」
「アルセムティ王から、お前への招待状が届いた。」
きたーーっ!この日をずっと待ってたの!!
っと、言うのは心の中にとどめておいて、
「招待状?どうして王様からそんなものが?」
あくまで平静を装ってこたえ、てるつもりだけどちょっとにやにやしちゃう。
「何か大切なお話があるようだ。決して、ご無礼のないようにな。」
お父さまは、言ってることは少し厳しかったり怖かったりするんだけど、その目にはいつも私への愛情が溢れていた。
だから私は、もちろんお母さまも、お父さまも大好きなのだ。
「もちろんですわ。セレスティア家の名を汚さぬよう、努めてまいります。」
「アルセムティ王のお目にかかります、エレストレス=セレスティアです。本日は、お招きいただき光栄です。」
ドレスの裾を少し持ち上げて礼をする。この日のために12年間、作法はきっちりと仕込んできてあるのだ。
「はっはっ。礼儀のよい娘だ。そう固くならんでもよい。今日は、よくきてくれた。」
そう私に向かっていったのは、この国の王であり、私をこの王宮に呼んだアルセムティ王だ。
立派な装飾が施された広間の奥に、あきらかに王が座るのに相応しい感じの玉座、そして、その両サイドにはもう少し小振りの椅子が2つと、そこに座る王子が2人。
(あぁ……長い間恋い焦がれた、レイスフィールド様……。想像の何倍もカッコいい……)
小説の描写通り、細く光る銀の髪に深い青の瞳。その表情からは冷たい雰囲気が感じとられる。
(でも本当はすっごく優しいって、しってるんだから!)
「今日呼んだのは、他でもない。」
王の言葉で現実に引き戻される。
「お主には、皇太子妃候補になってもらうことにしたのだ。」
「候補、と言うのは、どう言うことでしょうか。」
何度も何度も読み込んだんだから。セリフだって完璧に言えるのよ。
「お主が皇太子妃になると決まったわけではない、と言うことだ。」
だ。とまで言うと、王の纏っていた厳格な雰囲気が和らいだ。
「だか、我々はそなたを皇太子妃に推しているのだ。なぁ、アルフレッドよ。」
「はい、父上。……お初にお目にかかります、エレストレス嬢。あなたのような美しい方が私の妻となっていただけるのならば、私はこの上なく幸運ですね。」
ニコッ、と微笑むその美しさに、クラクラしてしまう。
甘くて優しい、わかってても、かっこよすぎるーーっ。
「2年後、アルフレッドが18の歳になる時、婚約者を決めたいと思っている。それまで、皇太子妃となっても恥ずかしくないような生活を心がけてくれ。」
「わかりました、私、精一杯がんばりますっ!」
「はっはっ。よかろう。下がってよいぞ。」
「はい、失礼いたします。」
この部屋を出ると、次にレイスフィールドに会えるのは2年後の私の結婚式になる。
そう思ったら、部屋を出る前にもまた、チラッとレイスフィールドのことを見てしまうのだった。
こうして、エレストレス始めのイベントは、原作通りに進んで終わった。……表面上は。
実は、この時からすでに少しずつ歯車が狂い始めていたということを、私はまだ気づいていなかった。
いかがでしたか?
第3話は、5月9日の土曜日に更新する予定です!
星宮未羽の他の作品も是非ご覧ください!