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第92話 よくやったと言いたいとこだけど

「み、湖の上を走っているっ!?」

「何だあの少年はっ?」


 船の上から驚く声が聞こえてくるが、リオンにとって水の上を走ることなど造作でもない。


「ストーンバレット」


 そして水中にいるサハギンの群れ目がけ、石の弾丸を放つ。


「ギャッ!?」

「ギャギャッ!」

「ギョエェッ!?」


 頭部を的確に石で打ち抜かれ、次々と絶命していくサハギンたち。

 慌てて水中へ逃走しようとした個体もいたが、その後頭部に石が直撃した。


 たとえ水中にいようと、リオンの放つ石は構わずサハギンを貫いていく。

 深度十メートルくらいまでなら位置を特定するのは簡単で、船の近くに集まっていたサハギンたちはあっという間に壊滅。


 気づけば辺りにはサハギンの死体が大量に浮かび、湖面が見えないほどになっていた。


「後は船の上の連中だけか」


 リオンは甲板の上に着地した。

 サハギンロードを含むサハギンの群れに苦戦していた戦士たちも、湖からの新手が途切れたお陰か、どうにか持ち直している。


「ギャギャギャッ!」


 仲間たちの恨みか、サハギンロードはそれまで戦っていた人間たちを放置し、血走った目でリオンに躍りかかってきた。


 ズシャッ!


「ギャ……ッ?」


 しかし突然、足を止める。

 というのも、襲いかかろうとしていた対象が消えてしまったからだ。


「後ろだよ」

「ッ!?」


 背後から声が聞こえて、サハギンロードは慌てて振り返る。


「ギャッ!」


 驚きながらも、すぐさま再び襲いかかろうとしたそのとき。


「残念。もう終わってる」

「~~~~ッ!?」


 サハギンロードの身体の中心に、真っ直ぐの線が走る。

 次の瞬間、左右真っ二つに分かれた。


 先ほどリオンが後ろに回ったときにはもう、サハギンロードの身体は斬られていたのである。


「「「ギャギャァァァッ!?」」」


 自分たちの王がいとも容易く殺されて、まだ甲板に残っていたサハギンたちが悲鳴を上げる。

 慌てて湖へ逃げようとしたが、しかし人間の戦士たちがそれを見逃すはずもなかった。


「逃がすな! 全滅させろ!」

「子供に負けてはいられねぇぞ!」


 あとは彼らに任せておけばいいだろう。

 そう判断して、リオンは湖の方へと目を向けた。


「シャァァァァツ!」

「くくくっ、無駄じゃ! お主ごときがわらわを捕えられると思うな!」

「~~~~っ!」


 そこではシーサーペントの攻撃を、小型船を器用に動かして意気揚々と回避していくメルテラ、そして船に必死にしがみ付いているモーナの姿があった。


「次はわらわから行くぞ! ロックフォール!」

「ッ!?」

「おえええ……」


 石塊を放って反撃するメルテラの背後で、モーナが聖女とは思えない声を出している。

 よく見ると顔色が真っ青だ。

 メルテラが同乗者のことなどお構いなしに船を激しく操作しているため、船酔いしてしまったらしい。


「……こっちに連れてきてあげればよかったな」


 ギギギギギ……。


「っと、かなり傾いてきたな」


 水蛇の攻撃を何度も食らい、大型船はボロボロだった。

 船内には水が入り込み、すでに甲板まで水浸しである。

 このままでは岸まで持たないだろう。


「スーラ、分裂して穴を塞いでくれないか?」

『おやすいごよーなのー』


 スーラの身体から幾つもの肉片(?)が零れ落ちたかと思うと、それぞれが意思を持って動き出す。

 そして船に開いた穴のところに行くと、身体をびよーんと伸ばして、それを塞いでいった。


「す、スライム……?」

「まさか、穴を塞いでくれているのか……?」


 すべての穴を封じ終えて、船の沈没が止まった。


「よし、船内の水を排出する! 手伝ってくれ!」

「「「おう!」」」


 甲板にいたサハギンを掃除し終えた彼らは、休む間もなく動き出した。

 そうこうしている内に、メルテラがシーサーペントを倒し、大型船へと近づいてくる。


「どうじゃ! わらわ一人であやつを倒してやったぞ!」

「うん、よくやったと言いたいとこだけど……後ろを見てみ」

「む?」

「げろげろげろ……」


 聖女モーナが湖に向かって盛大に嘔吐していた。


「えっと……大丈夫、聖女のお姉ちゃん?」

「……大丈夫ではない……うえっぷ……」


 可哀想なので、リオンは回復魔法をかけてあげた。

 彼女も使えるはずだが、恐らくこの様子では自分にかけるのも難しいだろう。


「な、治った……?」


 口の端についた吐瀉物を拭いながら、モーナは目を丸くする。


「聖女様! ご無事ですかっ!?」

「あ、ああ……どうにかな……」


 駆け寄ってきた仲間たちに支えられ、モーナは大型船へと移ってくる。

 メルテラも小型船から飛び乗ってきた。


 それからどうにか持ち直した大型船で、港へと帰還することに。


「それにしても助かった。お前たちが加勢してくれなければ、今頃、我々は湖の藻屑となっていただろう」


 聖女モーナがリオンに礼を言ってきた。

 酔いが収まったお陰か、顔色はだいぶ良くなっている。


「そうじゃろう! 特にあの水蛇を討伐してみせたわらわの働きが素晴らしかったじゃろう!」

「そ、そうだな……感謝する……」


 ドヤ顔を見せるメルテラだったが、モーナの頬は引き攣っていた。

 酷い目に遭ったこともあり、素直には感謝できなかったらしい。

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