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第68話 いい加減にしなさい

「えー、協議の結果を発表させていただきます。数部門は先ほどと変わらず、八十八体のリオンさんのパーティが優勝。そして質部門ですが、リオンさんのパーティが狩ったオークをエンペラーオークと認定し、ランスロットさんのパーティのキングオークよりも上位だと判断し、リオンさんのパーティを優勝とさせていただきます。これにより、総合優勝もリオンさんのパーティとなります」

「「「おおおおっ!」」」


 冒険者たちが湧いた。


「マジか。本当にエンペラーオークだったのか」

「あの歳で総合優勝……しかもSランク冒険者のランスロットを破って……」

「ていうか、パーティどころかあの少年、一人じゃないか……?」

「むしろ子守りしながらとか……」


 畏怖の視線を向けられるリオン。


(……どうしてこうなった。ていうか、キングオークもエンペラーオークも似たようなものだろ? 普通に身体がデカい方が上でいいじゃないか)


 双子が「「かったー」」と嬉しそうにハイタッチを交わす中、リオンは溜息を吐く。


「おい、あんな凄いことやっておいて、まったく喜んでねぇぞ」

「あれくらい朝飯前ってことか?」

「大物だぜ……」


 リオンの薄い反応に、勘違いする冒険者たちだった。


「ていうか、Sランクって意外と大したことないんだな」

「子供に負けるくらいだもんな」

「まぁ俺らも負けたけどな……」


 さらにそんな声があちこちで囁かれる。

 それを耳にしてか、ランスロットが声を荒らげ叫んだ。


「納得がいかない! 僕はSランク冒険者だぞ!? 子供に負けるなんてあり得ない!」


 周りが息を呑む中、リオンの目の前まで歩いてくる。

 そして指を突きつけて、


「今ここで僕と勝負したまえ。君が本当にエンペラーオークを倒したというのなら、その力を見せてもらいたい」


 うへぇ、めんどくさ……とリオンは内心で思った。


「Sランク冒険者であるこの僕が、君の実力を見極めてやろうというんだ」

(え? この人がSランク冒険者だったの?)


 リオンは驚いた。

 今まで周囲の冒険者たちが何度も口にしていたのだが、複数の声が重なっていることもあって聞こえていなかったのである。


 これは困ったことになったぞと、リオンは頭を悩ませた。


 もし戦って勝ったとしたら、あまりにも有名になってしまう。

 だが敗北した場合はイカサマをしたと認定されかねない。


「「やる」」


 そんな主人の苦悩も知らず、双子は自分たちが戦うつもりなのか、好戦的に構えている。


『ぬっころすー?』

(やらない、やらない)


 さらにリオンを追い込むように、パーティメンバーである三人の美女たちが険しい顔でランスロットの横に並んだ。


 きっと彼女たちも自分たちの敗北に納得がいかず、糾弾してくるつもりだろう。

 リオンが辟易していると、


「「「いい加減にしなさい、このバカ」」」

「ぶげっ!?」


 彼女たちが一斉にランスロットを殴った。


「「「……え?」」」


 てっきりランスロットの味方に付くとばかり思っていたリオン、さらには職員や冒険者たちが、予想外の展開に目を丸くする。


 そんな周囲の反応を他所に、彼女たちはランスロットを取り囲んで口々に罵った。


「なにムキになってんのよ、大人げない」

「とっとと負けを認めなさいよ」

「あと昨日からずっと無駄にカッコつけてるけど、正直気持ち悪いだけだから」

「ガーン!」


 ランスロットはショックを受けたように涙目で頭を抱えた。


 それから彼女たちはリオンの方に向き直ると、謝ってくる。


「ごめんなさいね、うちのバカが喚いて」

「こいつ中身はまだ子供なのよ。多分あなたの方がよっぽどしっかりしてるわ」

「間違いなくあなたの勝ちよ」

「う、うん……」


 リオンは曖昧に頷いた。

 冒険者たちが呟く。


「なんだ、三人ともランスロットの女だって噂は嘘だったのか……」

「みたいだな……」

「むしろ尻に曳かれてる感じ? そ、それはそれで羨ましいかも……ハァハァ……」


 そんな周囲の反応を耳にしてか、三人組は辛辣な言葉を口にする。


「だってこいつ、見てくれと実力はあるけど、中身がコレだからねぇ」

「いちいち気障でウザいし」

「Sランク冒険者じゃなければパーティ解消してるでしょ」


 ランスロットは拳を握りしめて立ち上がった。


「くっ……だけど僕は諦めていない! いつかきっと君たちのハートを射止め、ハーレムを築いてみせる!」


 三人組は一斉にランスロットへ蹴りを見舞った。


「ぎゃう!?」

「だからキモイって。いっぺん死んでみたら?」

「ハーレム作りたいならパーティの外でどうぞ」

「あんたの中身を知らない女ならいけるんじゃないの?」


 先ほどから殴られ蹴られで、ランスロットはボロボロだ。


「やっぱ羨ましい……ハァハァ……」


 一部にその様子を羨望の眼差しで見ている特殊な性癖持ちの冒険者もいたが、大多数はSランク冒険者の真実を知って、「まぁさすがに二物も三物も無条件で与えられるわけねーよな」という顔をしていた。


 ひと悶着あったが、結局、質、量、総合とすべてにおいてリオンが優勝となった。

 シルエが声をかけてくる。


「さすがね、リオン君」

「……うん」

「どうしたの? 全然喜んでないけど」

「そんなことないけど……」

「あ、そうそう。まだ正式決定じゃないけど、たぶん今日のことでBランクに昇格できると思うわ。さらに上手くいけば一気にAランク、ってこともあり得そうよ」

「さいですか」

「?」


 諦めたように頷くリオンに、シルエは首を傾げるのだった。



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