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第67話 余計なことしないでくれ

 二日目の狩りが終わり、冒険者たちは例のごとく森の入り口広場へと戻ってきていた。


「それでは二日目の計測を始めたいと思います! まずは質部門からです。昨日の最高記録である三百五十三キロを超えているという方、どうぞ前へ」


 職員がそう告げると、冒険者たちは苦笑した。


「さすがにあれ以上は出ないだろ」

「だよな」


 だがそんな中、一組のパーティが堂々と前に進み出た。

 どよめきが上がる。


「ランスロットのパーティだ!」

「な、何だあれ!? めちゃくちゃデカいぞ!?」


 彼らが運んでいたのは、明らかに昨日のジェネラルオークを凌駕している巨大な個体だった。


「まさか、キングオークじゃねぇのか?」

「マジかよ。俺、初めて見たぞ」

「あんなのどうやって倒すんだよ……?」


 冒険者たちが息を呑む中、重量の計測が行われる。


「き、記録は……五、五百九十二キロ……」

「「「おっ、おおおおおおおおおおっ!」」」


 計測結果が読み上げられると、広場に大歓声が轟いた。


「すげぇ! あれがSランク冒険者のパーティか!」

「悔しいけど俺らとは次元が違うぜ」

「ランスロット様……あたしもパーティに入れてもらおうかしら……」

「ばか、メンバーを見てみろよ。お前の顔じゃ無理だって」


 浴びせられる称賛をランスロットは心地よさそうに聞いていた。


「はっはっは、まぁ僕たちにかかればこれくらい簡単なことさ」


 爽やかに笑う彼だが、実はキングオークとの戦闘の際に決して小さくないダメージを受けていた。

 仲間の回復魔法によって怪我は治っているが、体力的にはかなり疲労している。

 それでも見栄を張って平気を装っているのである。


「どうやらあのガキ、あれを超える獲物はないようだな」

「やっぱ昨日のがおかしかったんだろ」


 一方、リオンが前に出て来ないのを見て、冒険者たちはひそひそとそんな言葉を交わす。


(うん、これでよし、と)


 双子が「うー」と不満そうにする中、リオンは上手くいったぞとほくそ笑んでいた。


「それでは質部門はこれで締め切らせていただきます。続いて数部門となります。こちらは昨日の記録との合計となります。……えー、ではまず、昨日、五十八体だったリオン氏の本日の結果を計測いたしましょうか」


 呼ばれたのでリオンは前に出ていった。

 すると周囲から驚きの声が上がる。


 アイテムボックスが使えなかったので、狩ったばかりのオークを荷車に積んで運んでいく。

 山のように積み上げられたオークの死体を見て、冒険者たちは唖然とする。


「これ、マジでちゃんと狩ってきたのか……?」

「さすがに昨日よりは少ないみたいだが……インチキじゃなかったんだな」


 職員たちが手分けして数えると、ちょうど三十体だった。


「さ、昨日の記録と合わせ、八十八体となります」


 職員が記録を発表し、今日最大のどよめきが起こる。


「ということで、質部門の優勝者はランスロットさんのパーティに、そして数部門の優勝者はリオンさんのパーティということになります」

「パーティっていうか、一人だよな? 子供連れてるけど」

「そもそも彼も子供なんだが……」


 そのとき一人の女冒険者が声を上げた。


「ちょ、ちょっと待って!」


 何か異議でもあるのだろうかと、他の冒険者たちが一斉に注目する。

 しかし彼女が何かを言う前に、ランスロットが鼻を鳴らした。


「はっ、やはり僕が思った通りインチキだったというわけか」

「え? ど、どういうことでしょうか、ランスロットさん?」


 職員が驚いて問うと、ランスロットは先ほどの女冒険者を指さし、


「実は彼女に依頼して、少年をこっそり付けてもらっていたのさ。彼女はとても優秀な斥候だと聞いたから、もし何かしらの不正を働いていたら後で教えてもらえるようにね」


 彼の言葉に、皆の懐疑の視線がリオンへと集まってきた。

 だが先ほどの女冒険者が慌てたように首を左右に振る。


「ち、違うわっ! そうじゃなくて! 彼は何も不正なんてしていないから! あたしは確かにランスロット氏に依頼され、彼の後をつけていたわ。だからこそ、はっきりと断言できる。このオークは間違いなく()()が狩ったものよ」

「何だって……? それは本当なのかい?」

「え、ええ、間違いないわ」


 ランスロットに詰め寄られて、女冒険者は一瞬たじろぐも、はっきりと断言した。


「えっと、言いたいのはそれだけじゃないわ。彼らが狩ってきたオークをよく見て。そう、この青いオークよ」


 今度はオークやハイオークに交じっていた青い色のオークへと皆の注目が集まる。

 そこで何人かが初めて気づいたようだ。


「これはまさか……エンペラーオーク?」

「そ、そうだ。キングオークがさらに進化すると、身体が小さくなって肌が青く染まるんだ。いや、俺も聞いた話でしかないが……」


 そう。

 実は双子が倒したのはただの変異種ではなく、オークの最上位種だったのである。


「嘘だろ……? じゃあ、あいつはエンペラーオークを倒したってのかよ……?」

「てことは、質部門でも優勝……?」

「け、けどよ、大きさじゃキングオークの方が勝ってるんだろ?」

「いや、質っていうからには、大きさより質だろ。どう考えてもエンペラーオークの方が上に決まってる」


 ざわめきが一向に収まらず、職員たちは協議に入っている。

 渦中にあるリオンは、その原因となった女冒険者を見やり、


(余計なことしないでくれ……)


 心の中で非難するのだった。


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