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第47話 僅か数日で作り上げたそうだ

 翌日、リオンは謎のエルフの墓であるという塔へとやってきていた。


「「たかい」」

『おっきいのー』


 周囲の大木を遥かに凌駕するその頂上を見上げ、双子とスーラが感嘆の声を漏らす。


「伝説によれば、これほどの塔をメルテラ様は僅か数日で作り上げたそうだ」


 そう誇らしげに言うのはフィーリアである。


 エルフの英雄の墓となれば、神聖な場所とされているはずだ。

 だから難しいかと思っていたのだが、「あの塔に入りたい」というリオンのエルフ公王への要望は、意外にもあっさりと認められたのだった。


 ただしフィーリアの同行が条件だ。

 リオンのことを疑うわけではないが、さすがに墓所に単独で入らせるわけにはいかないのだろう。


 ただそれは理由のごく一部だった。


「内部はダンジョンと化しているんだ。墓を護るゴーレムが徘徊し、あちこちに厄介な罠も仕掛けられている。非常に危険な場所だ。だが私は定期的に騎士団を率いてここの調査を行っており、低層のことは知り尽くしている」


 そもそも普段から立ち入りが禁じられているのは、その危険性からである。

 過去には外部の調査団が入ったこともあり、決して不可侵な領域というわけではなかった。

 ゆえにリオンの願いもすぐに了解されたのだろう。


「もっとも、私の知る範囲は低層までだ。上に行くほど難度が上がっていく。過去、幾度となく挑戦してきたが、我々は最高で十階層までしか到達できていない」


 見たところこの高さであれば五十階層近くはあるだろう。


(とりあえず中に入れば何か分かるかもしれない)


 フィーリアの話を片耳で聞き流しながら、リオンはそんな風に考えていた。


 メルテラという謎のエルフの正体。

 この塔が彼女の作った墓だというのなら、それを突き止めるヒントが得られる可能性があった。

 だから褒賞の話が出たとき、この塔に入らしてほしいと願い出たのである。


「だが本当にこんなことでいいのか?」

「うん。勇者様と旅にした仲間のことに興味があるんだ」

「まぁ貴殿らなら危険ということもないだろうが」


 もちろん本当のことを話すわけにはいかない。

 勇者に憧れる無邪気な少年のフリをしていた。

 素で目を輝かせているアルクとイリスが、その説得力を増してくれている。


 塔の足元へと向かう。

 入り口は重厚な門扉で守られており、その両脇に巨大で厳つい巨人像が威圧的に佇んでいる。


 近くに騎士団の詰め所が置かれ、エルフたちが警備に当たっているようだ。


「? 何か様子がおかしい」


 フィーリアが眉根を寄せて呟く。

 何やら警備のエルフたちが焦っているようだった。


「何かあったのか? これから内部に入ることはあらかじめ伝わっていると思うのだが」

「ふ、フィーリア様っ……それが……」


 フィーリアが問うと、警備隊長らしいエルフが状況を説明した。


「実は今朝になって、詰め所で保管していた塔の鍵が無くなっておりまして……」

「なんだと?」

「さらに塔の入り口が開いており……恐らくは何者かが中に侵入したのかと……」


 入り口には常に警備の衛兵がおり、交代で勤務しているそうだ。

 もちろん昨晩も夜勤の衛兵たちが警備をしていたのだが、眠らされていたのだという。


「誰にも見つからずに鍵を盗む手際といい、随分なやり手だな。侵入者に心当たりはあるか?」

「いえ、特に思い当たる節は……」

「まぁそのような相手が事前に怪しまれるような行動などしているはずもない、か」


 フィーリアは嘆息した。


「ここは神聖な墓というだけでなく、危険なダンジョンと化しているというのに……。とにかく、了解した。これより私は彼らとともに塔内に入る。万一、遭遇した際は対処しよう。お前たちは普段以上に厳重に警備をしていてくれ。ここ以外に出口はない。脱出しようとすれば、必ずここを通らざるを得ないはずだ」


 それからリオンの方を向いて、


「……リオン殿、すまないな。少々注意しなければならないことが増えてしまったようだ」

「それはいいんだけど……その侵入者、何が目的なんだろう?」

「恐らくメルテラ様が遺した希少なアイテムがあると考えたのだろう。決して珍しいことではないんだ。お宝を求めてやってくる冒険者や盗賊は」


 だが実際には塔内には命を落としかねない幾多の危険が待つだけで、現状、お宝の類は一切見つかっていない。

 とはいえ、それはあくまでも低層までの話。

 より高層まで行けば何か発見できるかもしれなかった。


 そうしてリオンたちは塔の中へと入った。


 







 フィーリアたちが中に入った後、エルフの騎士たちは扉を閉めた。

 盗まれた鍵の代わりに予備を持ってきているが、もちろん今は鍵をかけないでおく。


 ゴゴゴゴゴゴ……


「な、なんだ、この音は?」

「お、おい、あれを見ろっ!」


 そのとき起こった異変に、警備のエルフたちが慌て出す。

 今までずっと扉の左右に佇むだけだった二体の巨人像が、いきなり動き出したのだ。


「動いている!?」

「どういうことだっ?」


 やがて二体の像は扉の前まで移動してくると、並んで塔側を向く。

 そして手を掲げた。

 すると謎の光が扉を包み込む。


「これはまさか……結界!?」

「巨人像が結界魔法を使ったというのかっ?」


 信じがたい状況に驚愕するエルフたち。

 しかもその結界は侵入者を拒むためのものではなく、内部からの脱出を封じるものであった。




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