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第43話 あいつらは任せた

 リオンの次の目的地・セドリアは自然豊かな都市だった。

 あるいは自然と一体となっていると言ってもいいかもしれない。


 森の中の大きな湖の畔に位置しており、住民の大半は弓と魔法に長けたエルフ族である。

 百年前は完全にエルフの独立都市だったのだが、現在はバダッカやリベルトの属するステア王国の一部になっているらしい。

 ただし独立性の強い自治領であり、今もエルフの王が領主として君臨している。


 今は他の都市との交易も盛んになっており、特に周辺の森からしか取ることができない希少な植物や木の実などが、セドリアの名産として商人たちに高値で取引されていた。


 リオンたちはセドリアのある森にまでやってきていた。

 百年前はなかった街道が真っ直ぐ森の中を走っており、せっかくなのでそれを利用させてもらうことに。

 街道には警備のためか、巡回するエルフの戦士たちの姿があった。


(百年前は排他的でほとんど人間との交流なんてなかったんだけどな。今じゃこんなにちゃんと整備された街道まで作られたのか)


 そんなことを考えながら街道を歩いていると、リオンはあることを察知した。


 街道から逸れて森の中へ三キロほど。

 そこに複数の気配が入り乱れるように存在していた。


 反応から察するに、人間と魔物が交じり合っている。

 魔物と交戦しているところなのかもしれない。

 二つある大きな魔力はいずれも魔物のもので、人間側が苦戦している印象だ。


「行ってみるか」

「「ん」」


 リオンは双子を伴って森の中へと入っていった。

 鬱蒼とした木々の間を疾走し、あっという間に目的地へと辿り着く。


 リオンの予想した通り、人間たちが魔物と戦っていた。

 エルフ族だ。

 数は二十人ほど。


 一方、相手は人面樹の魔物であるトレントが十五体。

 そしてそれを率いるエルダートレントが一体。


 エルダートレントは、トレントが数百年を生きて進化すると言われている魔物だ。

 高さ十メートルを軽く超える大木で、根も幹も異様に太く、その枝の一撃一撃は棍棒を振るうごとき威力があった。


 だがトレントは根を脚のように蠢かして移動することが可能だが、その速度は非常に遅い。

 十分な距離を置けば、枝の攻撃を回避することは簡単なことだった。


 しかしエルフたちの放つ火炎魔法や矢も、トレントが振り回す枝によって撃ち落されており、ほとんど幹にまで届いていない。

 結果、戦況はほぼ硬直状態と言えた。


 そんな中、唯一、トレントの幹へと確実に矢を当てている女のエルフがいた。

 彼女の放つ剛矢はあまりにも速く、そのためトレントの枝をすり抜けていくのだ。

 しかも矢は炎を纏っており、幹に突き刺さるやそこから燃え広がっていく。


「できる限り同時に放て! そうすれば防ぎ切ることができないはずだ!」


 他のエルフたちより高貴さを感じさせる彼女は、集団のリーダーなのか、力強い口調で周囲を叱咤している。

 それに応じて魔法や矢を放つタイミングを合わせ始めると、次第にトレントの幹に当たり始めた。


 このままいけば、エルフたちの勝利に終わるだろう。

 そう思われたときだった。


「オァァァァァッ!」

「「「っ!?」」」


 突如としてエルフたちに背後から襲い掛かったのは、フォレストドラゴンだった。

 どうやらトレントに集中するあまり、後方への注意が疎かになっていたらしい。


 フォレストドラゴンは背中に木や草を生やしたドラゴンだ。

 本来は草食で大人しいドラゴンなのだが、トレントを好物としている。

 そのためか、トレントを倒そうとしているエルフに対して憤激しているようだ。


 いきなり現れた新手に、エルフたちは陣形を崩されてしまう。

 何人かが逃げるように後退したが、その結果、トレントの攻撃網に侵入してしまった。


「ああっ!?」

「がっ!」


 トレントの枝攻撃を食らい、倒れるエルフたち。


「くっ、こんなときに……っ! 焦るな! フォレストドラゴンは私が引きつける! その間に立て直せ!」


 先ほどのリーダーエルフがそう声を張り上げると、トレントには背を向け、腰に差していた剣を抜いた。

 だがそのときだ。

 彼女が隙を見せる瞬間を狙っていたのか、エルダートレントが樹洞の中から何かを吐き出した。


 木の実だ。

 大きさは人の頭ほどもある。

 しかもドングリのように先端が尖り、猛スピードで回転している。


 それが矢に勝るとも劣らない速度で彼女に迫った。

 恐らくまともに喰らえば一溜りもないだろう。


「「「フィーリア様!?」」」


 エルフたちの悲鳴が重なり、彼女がそれに気づいたときには遅かった。

 振り返ったときには、もはや回避できない距離。


 ザンッ!


「っ!?」


 だがその木の実は激突寸前で、真っ二つに割れた。

 そして彼女の両脇を通り、後方のフォレストドラゴンの身体に突き刺さる。


「アァァァァッ!?」


 予想外の流れ弾を浴びて森のドラゴンが悲鳴を轟かせた。


「大丈夫?」

「こ、子供……?」


 木の実を斬ったのはリオンだった。

 目の前に突如として現れ、離れ業をやってのけた少年に、エルフのリーダーは我が目を疑う。


 そんな彼女を尻目に、リオンは双子に命じた。


「アルク、イリス。あいつらは任せた」

「「ん!」」


 直後、どこからともなく現れた獣人の幼児たちに、驚くエルフたち。

 しかもトレントの群れへと真っ直ぐ突っ込んでいったのだから、思わず悲鳴を上げた。


「「「危ない!」」」


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